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2010年10月13日 (水)

RWCPの成功がもたらした「コンピュータ将棋(あから2010)が女流王将に勝利」

 
 さる 10月11日、東京大学本郷キャンパスにおいて、コンピュータ将棋(あから2010)が清水市代女流王将と対局し、圧勝したという衝撃的なニュースが流れました。

 コンピュータ将棋(あから2010)と清水市代女流王将の対局
 あから2010は、情報処理学会の「トッププロ棋士に勝つ将棋プロジェクト」が開発した特製の、次のような圧倒的な能力を有するコンピュータシステムです。

あからというネーミングは、10の224乗を表わす阿伽羅(あから)が、将棋の局面数に近いことに由来。
ハードウエアは、東京大学クラスターマシンが使用され、Intel Xeon 2.80GHz(4コア) 109台、Intel Xeon 2.40GHz(4コア) 60台、合計169台(676コア)が搭載されている。
ソフトウェアは、国内トップ4プログラム(激指、GPS将棋、Bonanza、YSS)を動かし、その多数決合議法を採用。
 この結果は、極めて意義深いものがあります。かつてチェスの世界でスパコン「ディープ・ブルー」が世界チャンピオンを破ったと大騒ぎになったのが1997年でした。このとき、将棋は駒の動きが複雑だし、一度取った敵の駒が味方の駒として復活するとかで、ゲームとしての難易度は比較にならないほど大きいとして、コンピュータが将棋で勝つまでには長年の時間を要するだろうと、多くの人は自分を納得させるかのように論評していたものです。しかし、その後コンピュータの能力が飛躍的に向上し、たった10年余で女流プロの実力に追いついてしまったことになります。

 実は、私どもは1990年代の10年間、リアルワールド・コンピューティング・プロジェクト(RWCP)を推進し、コンピュータの能力を極限まで追求すべく実世界知能技術や並列分散コンピューティング技術の開発を進めてきました(→ RWCPメモリアル)。

RWCP当時のPCクラスタマシン 特に、並列分散コンピューティング技術は、PCなどのCPUを何百台も何千台も連結してあっという間にPCクラスタというスパコンを作り上げてしうという画期的なものでした。PCの能力が高まってきますので、個々のCPUを交換すればスパコンとしての能力は、PCの性能向上に比例して巨大化していきます。

 今回の東京大学クラスターマシンは、このようなRWCPの並列分散コンピューティング技術に由来するもので、RWCPの成功が衝撃的なニュースによって実証されたことになります。プロジェクト関係者にとっては感慨ひとしおといった所です。

 1999年の筆者のエッセイ「四六のガマ」 の中では、PCクラスタマシンと囲碁の名人が対決す筑波山麓に生息するという四六のガマるという近未来の場面を描写しています。囲碁のルールは将棋よりもはるかに難しい(盤面の広さ、劫の存在、実利と勢力との関係等々)ので、囲碁にコンピュータが追いつくのは何十年もかかるだろうと言われています。

 しかしながら、この状況は10年前のチェスと将棋の関係に酷似しています。私としては人間はコンピュータより優秀であり続けて欲しいと思うと同時に、今回のRWCPの成功が更なる飛躍につながって欲しいとの気持ちもあって、心の中では複雑な思いが錯綜しています。


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