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2012年4月

2012年4月28日 (土)

人の心を魅了して止まないサクラの花


 サクラの花は古来、人の心を魅了して止みません。数多くの和歌や俳句にも詠まれてきました。
  • 「いにしへの 奈良の都の 八重ざくら けふ九重に にほひむるかな」 伊勢大輔
  • 「ねがわくは 花のしたにて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」 西行
  • 「もろともに あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし」 大僧正行尊
  • 「奈良七重七堂伽藍八重ざくら」 芭蕉
 年が明けてから、寒桜、寒緋桜、早春桜などが咲き始めますが、不思議なことにそれほど気分が盛り上がりません。沖縄の寒緋桜が1月末には満開になったというニュースが流れますが、木の下にグループで座り込んで桜花を楽しむ光景も見られません。むしろ、この頃は新春に香る紅白の梅林に人が集まります。

 桜前線が人々の話題になるのは、春花の王者の風格を有するソメイヨシノ(染井吉野)が登場する3月下旬から4月初旬の頃です。淡く白くそして優雅なサクラの花が圧倒的なボリュームで木全体を覆うようになり、木の下から青空を見上げると、無数の花びらが天空に溢れんばかりに広がっていきます。その華麗さは日本の美の極致のようです。この時ばかりは、「日本に生まれた幸せ」を実感することが出来ます。

 見事に満開になって隆盛を誇るサクラの花もわずか1週間ほどで散ってしまいます。また、この時期は年度の切り替わりで、旧知の人との別れや新しい人との出会いに遭遇します。こんなことが、平家物語の「諸行無常の響」とか「盛者必衰の理」といった言葉と私たちの心の中で共鳴してしてしまい、なおのこと桜(染井吉野)に惹かれるような気がします。

小石川植物園にも、いろんなサクラの花が生えていて、春先から初夏の頃まで花見を楽しむことができます。各地のサクラの花も加え、新たなコンテンツ 「サクラの風景」 として取りまとめ、アップしました。

この取りまとめの際に気になったのが、「サクラの範囲」です。調べてみると植物分類上のバラ科サクラ属サクラ亜属に属するものが、広義にサクラと言われるようですが、私たちが普通にサクラと呼んでいるのはサクラ亜属サクラ節のものです。ウィキペディアにサクラ属の分類が載っていましたので、以下に紹介します。

(バラ科サクラ属の分類)
サクラ亜属

* サクラ節
 * ヤマザクラ群 - ヤマザクラ、オオヤマザクラ、
           カスミザクラ、オオシマザクラ など
 * エドヒガン群 - エドヒガン など
 * マメザクラ群 - マメザクラ など
 * チョウジザクラ群 - チョウジザクラ など
 * カンヒザクラ群 - カンヒザクラ など
 * サトザクラグループ(雑種からなる群)


注)ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの交雑種。
 また、カンザクラはカンヒザクラとヤマザクラもしくは
 オオシマザクラとの交雑種。


* ミザクラ節
 * ミザクラ群 - セイヨウミザクラ など

* ミヤマザクラ節 sect. Phyllomahaleb
 * ミヤマザクラ群 - ミヤマザクラ など

* ロボペタルム節 sect. Lobopetalum
 * シナミザクラ群 - シナミザクラ など

モモ亜属
 * アーモンド
 * モモ

スモモ亜属
 * プルーン(ヨーロッパスモモ、セイヨウスモモ)
 * スモモ
 * スピノサスモモ
 * ウメ (ウメ亜属とする説も)
 * アンズ(アプリコット)(ウメ亜属とする説も)

ニワウメ亜属 (古くはサクラ亜属に含められた)
 * ユスラウメ

ウワミズザクラ亜属
 * エゾノウワミズザクラ
 * ウワミズザクラ
 * イヌザクラ

バクチノキ亜属
 * セイヨウバクチノキ
 * リンボク
 * バクチノキ

この分類によれば、モモとかウメなどは、同じバラ科サクラ属ですが亜属が異なっていて、少しだけサクラとは離れています。また、サクラと似たような花が咲くリンゴやナシはバラ科ナシ亜科のリンゴ属、ナシ属になりますので、少し近縁度が遠くなります。今回はいろいろと勉強になりました。



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2012年4月22日 (日)

春花斉放(続)、ニワザクラ、犬群雀、馬酔木、山吹草、イカリソウ……


 4月は、いつまでも春花斉放が続きます。小石川植物園では、ニワザクラやウワミズザクラなど、依然としてサクラの仲間の花が咲き続けています。また野の花では、山吹草が一面に咲き広がり、ムラサキケマンなどのスプリング・エフェメラルの仲間も見つかりました。


 園内の林地を散策し、何気なく奥の方を見やると、ツツジの高木に真っ赤に燃えるような花が咲いていました。


 サクラの仲間が依然として咲き続けています。これはニワザクラ(庭桜;バラ科サクラ属、中国に分布)の白い八重咲きの花です。古井戸の近くに植えられています。中国原産の落葉低木であまり高くなりません。



 ウワミズザクラ(上溝桜;バラ科サクラ属、北海道、本州に自生)。一見すると決してサクラには見えませんが、れっきとしたサクラの仲間です。ブラシのような白い花序をよく観察すると、小さな花が凝集しています。


 落葉高木のヒマラヤズミ(バラ科リンゴ属、中国南西部からインド北部、ヒマラヤに分布)が白い花で満開でした。ヒメリンゴともいわれ、秋に小さな果実を付けます。


 アメリカアサガラ(アメリカ麻殻;エゴノキ科アメリカアサガラ属)の枝先に釣り鐘状の小さな白い花が鈴なりに連なって咲いていました。北米原産で、日本には明治時代に渡来。花は同じエゴノキ科のエゴノキハクウンボクと似ています。


 アセビ(馬酔木;ツツジ科アセビ属)の白い花がきれいに咲いています。小さな花が鈴なり状に連なっています。馬が葉を食べて苦しむことからこの名が由来したといわれるように、呼吸中枢を麻痺させる毒性を有しているので、草食動物は食べないそうです。


 朝鮮半島が原産のイヌムレスズメ(犬群雀;マメ科ムレスズメ属)。中国原産のムレスズメと同じように、小さな黄色の花を咲かせ、まるで雀が群れているようなことからこの名が付いている。イヌムレスズメはムレスズメよりも花が小振り。


 中国原産の落葉小高木のモクレン(木蓮;モクレン科モクレン属)。大ぶりの花が紫色なのでシモクレン(紫木蓮)ともいう。観賞用の庭木として用いられることが多い。同じ仲間のハクモクレン(白木蓮)は白い花を咲かせます。


 オオバベニガシワ(大葉紅柏;トウダイグサ科オオベニガシワ属)の若葉が深紅色に染まっていて美しい。若葉の下をよく見ると小さな花序が確認できます。オオバベニガシワは雌雄同株ですが、これは雄花です。



 野の花も相変わらず賑やかです。本州、四国、九州に分布し、山野の樹林地に群生する多年草ヤマブキソウ(山吹草;ケシ科ヤマブキソウ属)が、園内のカタクリ自生地に大群落を形成しているのを見つけました。山吹色の花が点々とぎっしりと咲いていて壮観でした。


 何とも面白い名前のラショウモンカズラ(羅生門葛;シソ科ラショウモンカズラ属)です。山地の林内の湿った場所や渓流沿いに自生する多年草。 この花を、かつて渡辺綱が羅生門で切り落としたとされる鬼女の腕に見立てこの名が付いたとされています。 花の形は同じシソ科のタツナミソウによく似ています。


 イカリソウ(碇草;メギ科イカリソウゾク)です。イカリソウは、本州の東北地方以南の太平洋側、四国の半日陰の山野や林間に自生する多年草で、塊状の地下茎があります。強壮、強精の薬効があり、地上部の茎葉を刈り採り、天日で乾燥して生薬や薬酒に用いられます。名前は、花の形が碇に似ていることに由来します。


 スプリング・エフェメラルの仲間のムラサキケマン(紫華鬘;ケシ科キケマン属)の赤紫色の花が、林縁地に群生していました。全国の木陰地に生育する野の花ムラサキケマンの花期は4~6月で、キケマン属に特徴的な筒状の花を咲かせます。また、華鬘というのは仏殿の欄間などの装飾具のことです。

 サギゴケ(鷺苔;ゴマノハグサ科サギゴケ属)の花が咲いています。サギゴケは日本の本州、四国、九州の湿ったあぜ道などの日当たりの良い場所に生える多年草で、匍匐茎で広がっていきます。そして苔のように地面を葉がびっしりと覆ってしまいます。

    …> 季節のスケッチ (24年4月)

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2012年4月21日 (土)

囲碁の世界でもコンピュータがプロ棋士に勝利!?


 今年の1月、コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に完勝したというニュースが日本中を駆け巡りました。→ ブログ記事

 米長邦雄というと、名人位を獲得したこともある超一流の将棋棋士です。現役を退いたとはいえ、米長の敗北は衝撃的でした。コンピュータの処理技術や知能(対局ソフト)の進展に驚きましたし、現役の「名人」や「竜王」まで負かすことになったりでもしたら、将棋の世界は天地がひっくり返ったように大変なことになるだろうと思います。

 将棋と似たようなゲームが囲碁です。将棋では人がコンピュータに負けてしまいましたが、囲碁の世界ではコンピュータが人智を超えるのは遠い未来のことだろうと思っていました。

 実際、別のブログ記事の中で、私は

『相手の王将を追い詰めるために直線的に進行する将棋と違って、囲碁のゲームでは、最終的に自分の陣地(地)を相手より1目でも多く確保するためにいろんな駆け引きが必要で、ジグザクとした複雑な進行をたどります。

 具体的には、
1)盤の目の数が361(将棋は81)もあるので、局面の数が飛躍的に増え、より超高速なコンピュータの処理能力が必要となる。

2)相手の石をを取り返せない「劫」があったり、今は実利ゼロだが将来の地となりうる「厚み」の計算の仕方が難しかったり、さらには自分の石をわざと捨てる「捨て石」が有利な場面があったりと、コンピュータソフトの作り込みが極めて難しい。
等の点から、コンピュータが人間に追いつくには相当な年月を要するものと思われます。』


と書いたばかりです。ところが、今度はつい最近、コンピュータ囲碁ソフトのZenが 武宮正樹9段を負かしたことを知り、ここで更なる衝撃を受けてしまいました。

 → 対局結果の記事
 → 電気通信大学エンターテイメントと認知科学
  シンポジウム特別イベント(2011.3.17) 

 武宮正樹といえば「宇宙流」で知られ、今まで名人、本因坊、十段など数々のタイトルを獲得したいまだ現役の超一流囲碁棋士です。実際の対局は平手戦ではなく、4子局のハンディ戦だったのですが、並みのアマチュアがこのハンディでプロ棋士に勝つのは容易ではありません。従って、現在の囲碁ソフトは県代表クラスの実力があるのではないかと思われます。

 最近の囲碁ソフトが急速に強さの秘訣は「モンテカルロ法」の採用にあるといわれる。一般的に、モンテカルロ法とは乱数を用いてシミュレーションや数値計算を行う方法を総称していますが、これを囲碁の世界に活用しています。簡単に言えば、次の着手選択するのに、コンピューターに終局までランダムに打たせ、すべての着手候補の中で一番勝率がいいものを選ぶという方法です。

 定石や美しい形を覚えるのでもなく、単に次の手を最後まで読み尽くしてから選択するといったコンピュータならではのすさまじい力業です。このような「野暮ったい」方法でも強いのです。武宮9段との棋譜を見てみると、今まで習ってきた感覚とは全く違ったやり方ですが、結果を見ると正しかったということでしょうか。

 囲碁ソフトは毎年1目ぐらいずつ強くなっているそうです。現在は4目ぐらいの差ですから、近い未来に平手でもプロ棋士に伍するようになるのでしょうか。Zenのソフトウェア(エンジン)が組み込まれているのは「天頂の囲碁」だそうです。私も早々に購入して、試してみようかとかと思います。

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2012年4月15日 (日)

サクラの「宴の後」はツツジ、野の花などが春花斉放


 東京の桜(ソメイヨシノ)は、満開から1週間であっという間に散ってしまいました。途中、天気が荒れたこともありますが、つかの間の花の饗宴でした。ただ、このような儚さ故に私たちは桜の花に惹かれるのかも知れません。

 さて、ソメイヨシノは散ってしまいましたが、小石川植物園の園内では色とりどりのツツジやウンナンオウバイ、そして野の花も次々に咲き出して春花斉放の様相になってきました。さらには、イロハモミジの新緑も日に日に鮮やかになり、冬木立だった大樹もうっすらと緑衣をつけてきました。


 1週間前に満開だったソメイヨシノの桜並木の「宴の後」です。再び人出がまばらになり、逆に落ち着いたいい雰囲気に思えます。散った桜の花びらがうっすらと「積雪模様」のように地面に広がっています。


 ソメイヨシノが散ったといっても、まだ咲いているサクラもありました。これはサトザクラの品種で、ボタン(牡丹)の名が付いています。雰囲気的にはソメイヨシノに似ていますが、花と新葉が同時に付きます。


 やはりサトザクラの栽培品種であるチョウシュウヒザクラ(長州緋桜)もよく咲いていました。半八重咲きの大柄な花です。花の感じが、やはりサトザクラの安行寒緋に似ています。明治時代に荒川堤から全国に広まったとのことで、長州との関係は不明。


 桜に変わって主役になりつつあるのはツツジの仲間です。青空と鮮やかな赤紫色の花が美しく調和しているのは、タンナアカツツジ(耽羅赤躑躅)です。タンナアカツツジは韓国の済州島に分布し、山地に生えます。「耽羅」というのは済州島の古名です。そういえば韓国ドラマによくこのようなツツジの花が登場します。


 中国、台湾に分布するマルババイカツツジ(丸葉梅花躑躅)。真ん中部分の紫色の斑点模様が印象的です。わが国のバイカツツジと比べると大輪。


 前から咲き出していたシャクナゲ(石楠花;ツツジ科)の高木が満開を迎えました。大輪の紅い花が立ち並び、壮観です。これら以外にも多くのツツジ科の花が咲き競っています。


 ウンナンオウバイ(雲南黄梅;モクセイ科)の鮮やかな黄色の花が連綿と連なって盛んに咲き始めました。ウンナンオウバイは成長力が旺盛で、茎が根元から多数分枝し上部で枝垂れます。また、芳香で有名なジャスミンの仲間ですが、この花はほとんど香りはありません。


 中国原産で、中国北部~朝鮮半島にかけて分布する落葉樹ハナズオウ(花蘇芳;マメ科)の不思議な感じがする花です。ハナズオウは葉が全く付いていない状態で、細かな赤紫の花が連なって枝から直接吹き出るように一杯に付きます。


 梅や桜が終わっても、バラ科の木々が花を咲かせ続けています。バラ科でもナシの仲間(ナシ属)のヤマナシ(山梨)の清楚な感じの花が満開になっていました。ヤマナシは中部地方以南に自生する野生種で、果肉が硬く味も酸っぱいため、あまり食用には向かないとのこと。


 ハナズオウに隣接してオオリキュウバイ(大利休梅;バラ科ヤナギザクラ属)の木が生えていて、白い花を咲かせています。中国原産で日本には明治時代に渡来したリキュウバイの変種。茶人の千利休との関係は不明。例年はこのオオリキュウバイのハナズオウと満開の時期が一致して、オオリキュウバイの白を背景にしたハナズオウの赤紫色の花は美しく引き立つのですが、今年はあいにくとオオリキュウバイの満開時期が遅れています。


 小さくかわいらしい白い花はシジミバナ(蜆花;バラ科シモツケ属)です。一つ一つの花がシジミの身に似ているのでこの名がついたという。八重咲きの白い花が枝いっぱいに撓みながら群がって咲いています。


 山野でよく見かける多年草キジムシロ(雉筵;バラ科キジムシロ属)です。五弁の花が太陽の光を浴びて黄金色に輝いて群生していました。花後の葉が放射状に展開し、その株の姿がキジが休むムシロに例えられたことにこの名が由来。


 ヒメカジイチゴ(姫梶苺;バラ科キイチゴ属)の白い花です。ヒメカジイチゴはバラ科キイチゴ属の落葉低木で、梶苺(カジイチゴ)と苦苺(ニガイチゴ)の交雑種。葉の形がカジノキに似ていて、小振りなことからこの名が由来。同じキイチゴ属で野草のような木本クサイチゴも、あちこちの草むらで見かけます。


 木のすべてが有毒であるという「恐ろしげ」なシキミ(樒;シキミ科)の花が咲いていました。仏事に用いるため、寺院に多く栽培させます。なお、間違って死亡事故が多いため、シキミの実は植物としては唯一、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。


 この時期、花だけではなく新緑も日ごとに美しくなってきます。イロハモミジが新緑に覆われてきましたが、よく観察すると赤紫色の花序が垣間見えます。秋の紅葉も見事ですが、初夏の新緑も美しい。


 冬木立だった園内の大樹が新緑の緑衣をまとい始めました。これはユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)の大樹です。蓮やチューリップのような花を付けるので、蓮華木とかチューリップツリーとも呼ばれます。


 ユリノキの近隣にそびえるシナサワグルミ(クルミ科サワグルミ属)の大樹も新緑に覆われてきました。中国原産の落葉高木で街路樹や公園木などに多く用いられています。


 野の花もいろいろと咲いています。これは全国的に分布する草本植物のクサノオウ(瘡の王;ケシ科クサノオウ属)の黄色の花です。植物体を傷つけると多種にわたる有毒アルカロイド成分を含む黄色い乳液を流し、これが皮膚に触れると炎症を起こし、皮膚の弱い人は植物体そのものも触れるとかぶれる危険があります。また薬効もあり、皮膚病の一種である瘡(クサ)に効くといわれる。


 日当たりの良い林縁や草地に生えるやタツナミソウ(立浪草;シソ科タツナミソウ属)を初めて見つけました。青紫の花が同じ方向に並んだ花穂の姿が打ち寄せる波頭に似ていることから、この名が由来。広く紫の斑点がある下の唇弁が印象的です。


 正真正銘のイチリンソウ(一輪草;キンポウゲ科イチリンソウ属)を見つけました。イチリンソウはひとつの茎に花をひとつだけ咲かせ、ニリンソウと比べて大柄の花です。小柄なニリンソウも最初のころは花が一輪だけのこともあり、実際には区別がつきにくい。イチリンソウもニリンソウもスプリング・エフェメラルの仲間です。


 ユリ科バイモ属の多年草のバイモ(貝母)の花が草むらの中で、枝に釣り鐘状に並んで静かに咲いていました。花びらの内側が網目模様になっていることから、編笠百合の別名があります。また、鱗茎を見ると二枚の厚い貝状の鱗片が相対していることから、名が由来。


 各地の明るい林縁や草地に生える一年草セリバヒエンソウ(芹葉飛燕草;キンポウゲ科デルフィニウム属)の青紫色の花が、草むらのあちこちに咲いていました。花の姿が燕の飛ぶ姿を思わせることからこの名が由来。セリバヒエンソウは中国原産で、明治時代に渡来。


 全国的に日当たりの良い山野に生える多年草のウマノアシガタ(馬の蹄;キンポウゲ科キンポウゲ属)。ごく小さな黄色の花が咲いていました。名とは違い、馬の足形には似ていません。このウマノアシガタの八重咲きのものをキンポウゲ(金鳳花)と呼ぶ。これからも次々と野草が咲き出しますので、野の花観察も忙しくなります。

    …> 季節のスケッチ (24年4月)

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2012年4月14日 (土)

「季節のスケッチ」が毎月更新を続け十年経ちました


 早いもので2002年3月以来毎月更新してきた「季節のスケッチ」のHPサイトが、開設以来10年を経過しました。

 「季節のスケッチ」においては、当初から現在まで次のように心掛けて更新を続けてきました。

『私の格好の散策場所になっている小石川植物園は野趣に富み、いつ歩いてみても季節感あふれる植物たちに出会うことが出来ます。この季節のスケッチは、植物園の風景や植物の写真を中心として、さらには帰郷したときの郷里の風景や内外の旅行先の写真も加えて、毎月更新しています。』


 これは懐かしい最初の各月コンテンツ、平成14年3月号(2002年)です。日比谷公園や池袋サンシャインビル近辺の風景を中心にした極めて簡単なものでした。この後の各月コンテンツは、わが家のすぐ近くの小石川植物園の風景や植物の写真を中心にして、時折国内各地や海外の風景写真も加えています。
   全バックナンバー  各月内容紹介



 更新作業を10年間にわたり毎月続けるということは、正直大変なことで、挫けそうになったことが何度もありますが、今となって見ると、「継続は力なり」と言うように続けて良かったと思っています。特に、次のようにメリットが大きかったと感じています。

1)植物がぐっと身近に
 「季節のスケッチ」を始めた頃は、植物に関する知識は殆ど持ち合わせてなく、木々や花の名前も書物や歌詞の中に出てきたものを頭で覚えているだけといった感じでした。それが、毎月植物の写真を撮り、その説明文をHPにアップするとなると、樹木、花、雑草(野草)の事典などを次々と買い求めたりして、その植物の名前や性質などを必死になって調べなければなりません。そうこうしているうちに次第に名前も覚えます。名前を覚えると、その植物に対する親近感がぐっと増します。名前だけしか知らなかった野の花が目の前に現れると、その「新たな出会い」に感激してしまいます。


2)健康管理に役立つ
 HPの更新作業は毎月行います。このため、天気の良い週末は出来るだけ小石川植物園に出かけ、HPの素材を仕込むようにしています。じっくり時間をかけて植物の写真を撮りながら園内を周遊します。大体1~2時間の森林浴になります。途中、鎮守の森の主のようなクスノキの巨木の幹に掌を当て、木の精との会話を試みることもあります。この時期には新緑に安らぎを感じ、秋には紅葉・黄葉の美しさに感動します。この季節のスケッチの更新作業がなければ、休日は家でごろ寝しているのが関の山です。還暦を過ぎてた体の健康管理のために本当に役立っていると感謝しています。


3)継続は力なり
 各月のコンテンツの更新がかなり長く続きましたので、蓄積されたアーカイブがまさに「継続は力なり」になっています。すなわち、各月分以外にも、特定のテーマに沿ってアーカイブを横断的に整理し、次のような色々な特集コンテンツとして取りまとめるに至っています。

  四季の植物 野の花プラス  春の妖精たち
  梅 百 科 サクラの風景 ツツジの花々
  秋 の 七 草  都心の紅葉
  海 外 の 風 景  山形風景(全集)

先日も、新たに「ツバキの仲間」をアップしました。


 今後も、新たな出会いを求め、そして自分の健康維持のため、出来るだけ長く「季節のスケッチ」づくりを楽しんでいきたいと思います。

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2012年4月 8日 (日)

春爛漫、「真打ち」ソメイヨシノが満開になりました


 この週末は好天に恵まれ、しかも春の時期の「真打ち」ソメイヨシノが満開とあって大勢の人が花見を楽しみ、満開の桜に酔いしれていました。


 わが家から眺望した、この日の朝の小石川植物園の風景です。手前では、桃色のハナモモの花が満開になって咲いていますが、後方にも桜並木のうっすらと赤みを帯びた桜の花のじゅうたんがはっきりと見えたので、心が躍りました。


 実際、午前の早い時間から出かけて見たのですが、このように大勢の人通り。桜並木の満開に咲き誇ったソメイヨシノの壮観さにみんな口を揃えて「すごい」を連発していました。


 少し時間が経つと、桜の木の下の緑地は、家族連れやグループですっかり占有されていて、いかにも花見といった雰囲気です。ただし、小石川植物園では、アルコール持ち込みが禁止されていますので、酔っ払いは皆無です。


 現在、普通に桜といえばソメイヨシノ(染井吉野)のことを指しますが、桜並木にある大部分のサクラの木もソメイヨシノです。圧倒的なボリュームの優雅な桜色の花が木全体を覆い、春の青空の中に美しく広がっていく様は本当に素晴らしく、日本美の極致ともいえます。まさにソメイヨシノは桜の中で王者の風格を有しています。


 そもそも、ソメイヨシノ(染井吉野)のサクラの木は、江戸時代の染井村(現在の豊島区駒込付近)の植木屋さんが作り出したもので、これが全国に広まったと言われています。当初は、桜(ヤマザクラ)の名所であった奈良県の吉野山にちなんで吉野の名で売り出されたが、明治に入ってから染井吉野に変更されたそうです。また、ソメイヨシノの起源については、国立遺伝学研究所の竹中要博士により昭和に入って、オオシマザクラとエドヒガンとの雑種であることが確認されました。


 植物園内には、ソメイヨシノの大木があります。この大木は任期があってグループ写真の撮影スポットになっています。


 園内の古井戸の近くのソメイヨシノの木も相当な高木です。この左隣には、2月から3月に咲き出す早咲きのカンザクラの木があります。


 ソメイヨシノの品種の一つイズヨシノ(伊豆吉野)です。伊豆吉野は、前述のの竹中要博士によって染井吉野の起源を実証するためにオオシマザクラとエドヒガンの様々な交配を繰り返す過程で生まれた個体だそうです。花と新葉が同時に出始め、オオシマザクラに似ています。


 これもソメイヨシノの品種の一つのアマギヨシノ(天城吉野)です。やはりオオシマザクラとエドヒガンの交雑種で、竹中要博士が染井吉野(ソメイヨシノ)の起源を研究する過程で生まれたもの。


 植物園内の塀沿いに植えられているハナモモ(花桃)の木が満開になって、濃いピンク色の花を勢いよく咲かせています。塀沿いに散歩している人は立ち止まって見上げています。ハナモモの原産地は中国。花つきがよいため、主に花を観賞する目的で庭木などによく利用されます。


 ツツジの仲間のシャクナゲ(石楠花)の花も咲き出してきました。高山性のシャクナゲは、ツツジと異なり細長く堅めのしっかりとした葉が特徴です。また、常緑低木と言われるが、このシャクナゲは4~5mもの高さがあります。シャクナゲの花は大柄で、よく目立ちます。また、シャクナゲは葉にケイレン毒を含む有毒植物ですので要注意。


 園内のツツジ園の所で見かけない花が咲いていました。中国原産で常緑性のホンコンドウダン(香港満天星;ツツジ科)でした。確かに、花の形は普通のドウダンツツジに似ていますが、やや大きめで蝋細工のような花がとても印象的かつ魅力的です。中国では旧正月に咲くので、ニューイヤー・フラワーとして人気があるとのこと。


 本州の丘陵、山地に自生する落葉低木のヤマブキ(山吹;バラ科)。まさに絵の具のヤマブキイロと同じ鮮やかな黄色の花を枝垂れながら咲かせていました。八重咲きのヤエヤマブキ(八重山吹)もあります。イギリスでは 「イエロー・ローズ(黄色いバラ)」 と呼ばれる。


 この時期は、桜に目を奪われがちですが、野の花も見応えがあります。これはニリンソウ(二輪草;キンポウゲ科)の白い花です。この時期、園内で林地などでよく見かけます。ニリンソウは山麓の林の縁や林の中、土手などに生える多年草で、スプリング・エフェメラルの仲間です。ニリンソウの花はイチリンソウよりも少し小ぶりで、ひとつの茎に通常2輪の花が咲きます。葉が複雑に裂けた掌状となることから、鵝掌草(ガショウソウ)の別名があります。


 この何とも奇妙な形をした花を咲かせているのはサトイモ科の山野草のウラシマソウ(浦島草)です。草むらにひっそりと咲いていました。その名のとおり、開花した花をよく見てみると、まるで浦島太郎が釣り糸を垂らしているかのようです。ミズバショウザゼンソウも同じサトイモ科の仲間。


 日陰の草むらに群生するアヤメ科の常緑草本シャガ(著莪)の花がポツポツと咲き出していました。シャガの花は、花に黄と青の幻想的な模様が入っていて、つい魅入られ引き込まれそうな美しさがあります。中国原産で、かなり古くに渡来した帰化植物。シャガは三倍体で種子が発生しないため、日本に存在する全てのシャガは同一の遺伝子を持ち、またその分布の広がりは人為的に行われたと考えることができるとのこと。


 全国の山野の木陰に生える多年草のセントウソウ(仙洞草;セリ科)が、園内の随所で小さく細かな白い花を咲かせていました。ニンジンのような細かく裂けた葉が特徴的です。


 春の七草の一つになっているハコベ(繁縷;ナデシコ科)の花も路傍などに見かけるようになりました。白い5弁花のハコベの花は本当に小さく、写真を拡大して形がようやく分かります。


 春の野に普通に見られる野草のカラスノエンドウ(マメ科)です。赤紫色の小さな花が咲いています。花や葉の形が同じマメ科の萩に似ています。服用すると胃炎に効くといわれています。カラスとかイヌ、ヘビ、ヒメとかの接頭語が「小さい」という意味で植物によく用いられます。


 ムスカリの花(キジカクシ科)が群れて咲いていました。濃い青紫の小さな花がブドウの房を逆さにしたように並んで咲くので、ブトウムスカリやブドウヒヤシンスなどと呼ばれます。ムスカリは南西アジア、地中海沿岸地方原産の球根植物です。ベツレヘムの星という別称があるハナニラの花と並んで咲いているのも面白い取り合わせです。

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2012年4月 2日 (月)

4月初旬の風景(その2)、百花繚乱の美しい季節の到来


 4月に入ってすぐの週末の風景(その2)です。カタクリなどの野の花以外にも、早咲きのサクラやシナミズキ、キブシ、杏、ツツジなどの木々から一斉に花が咲き出してきて、今年ももっとも美しい季節が到来したことを実感します。


 日本庭園の旧東京医学校の建物の前には、四季折々の木々の花が咲き出します。この日は、チョウセンレンギョウの黄色の花が満開に咲いていました。


 ツツジ園では、ゲンカイツツジやハヤトミツバツツジの赤紫色の優雅な花を咲かせていました。左後方の黄色い花はシナミズキ、右後方は濃い桜色の早春桜です。イチョウやニレノキの巨木にはこれから新緑が吹き出します。


 サクラの王者ソメイヨシノの開花にはもう少し時間がかかりますが、いろんな早咲きのサクラが咲き出しています。これは伊豆大島などに多く生息するカンザキオオシマ(寒咲き大島)です。白く清楚な感じの花が咲いていました。カンザキオオシマは花と葉を同時に付けます。


 サクラの原種の一つのカンヒザクラ(寒緋桜)がちょうど満開になっていました。濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与えます。カンヒザクラは、。中国南部から台湾にかけて分布するが、日本では主に沖縄で自生し、沖縄でサクラといえばこのカンヒザクラのことを指す。



 サトザクラの一種で安行寒緋という品種です。何羽ものムクドリが盛んにサクラの花を啄んでいました。このサクラは、埼玉県川口市安行の地から広められたもので、寒緋桜(カンヒザクラ)と山桜(ヤマザクラ)、ないしは寒緋桜(カンヒザクラ)と早咲きの大島桜(オオシマザクラ)の雑種と考えられています。



 あざやかなピンク色の小さな花を一斉にに咲かせているのはソウシュンザクラ(早春桜)です。 ソウシュンザクラは、富士山や箱根などの山地に分布する富士桜(豆桜ともいう)の園芸種で一つ一つの花は小柄でかわいらしい。


 梅林の中に、八重の大柄な花を多く枝に付けているアンズ(杏)の木を見つけました。強い勢いを感じます。杏はバラ科の落葉高木で、アーモンドやウメ、スモモの近縁種です。初夏には果実を付けます。


 八丈島などの伊豆七島の山中に多く自生するハチジョウキブシ(八丈木五倍子;キブシ科)の黄緑色の小さな花が塊になって、垂れ連なって咲いています。まるでブドウの房のようです。


 マンサク科のシナミズキ(支那水木)があざやかに開花しました。春空に向かって黄色の花が飛び出ていくようです。シナミズキは中国原産で小さな花が集まった房状のものを木枝に次々に付けていきます。


最後は、近所の庭先に満開になって咲いていた真っ赤なボケ(木瓜)の花です。木瓜はバラ科の落葉高木で中国原産、平安時代に帰化したもの。日本に自生する落葉小低木のクサボケと同属です。

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2012年4月 1日 (日)

4月に入って、春の妖精カタクリの花が地表にでてきました


 4月に入ってすぐの週末、桜の花(ソメイヨシノ)はやっと開花宣言がでたばかりで、満開になるまではあと1週間くらいかかりそうです。

 その代わり、小石川植物園で春の妖精といわれているカタクリの花が、ひっそりとした林地に咲き出しているのを見つけました。



 春先に散策していると、草むらや林地から顔をのぞかせている野の花を見つけます。春の陽光の中で、精一杯に可憐な花を咲かせている様子が、まるで春の妖精たちが草むらで遊んでいるように思えてきます。
 
 典型的な春の妖精(スプリング・エフェメラル)の植物といわれるカタクリの花は、6枚の花びらが反り返っていて、まるで春の陽光の下で森の妖精たちが背中の羽根を羽ばたき、つかの間の春を楽しんでいるようです。

 そして、春先に花を咲かせた後、夏までの間に光合成を行って地下の栄養貯蔵器官や種子に栄養分を蓄えます。その後は春まで地中の地下茎や球根の姿で過ごすというライフサイクルを持ちます。


 カタクリの群生地のすぐ傍に、やはりスプリング・エフェメラルの仲間のユキワリイチゲ(キンポウゲ科)の山野草が小さな白い花を咲かせていました。植物園の中で柵で囲ってあって保護されていることもあって、 見事な群生地になっています。


 これはニチリンソウ(二輪草;キンポウゲ科)の野の花です。ニリンソウはひとつの茎に2輪の花が咲きます。根本をよく見ると小さな花の芽を付けています。イチリンソウと比べて小ぶりです。イチリンソウもニリンソウもスプリング・エフェメラルです。


 ハナニラ(花韮;ヒガンバナ科)の美しく清楚な白い花です。花の形はアマナに似ていて、セイヨウアマナとかベツレヘムの星とも呼ばれます。園内の各所に咲いていて、葉にかすかにネギやニラのような匂いがあります。 アルゼンチン原産で明治時代に園芸植物(観賞用)として渡来した帰化植物です。


 ハナダイコン(花大根;アブラナ科)の紫色の花が植物園の空き地に群生して咲き出してきました。 江戸時代に中国から持ち込まれたものが野生化し日本中に帰化しています。花の形がダイコンの花に似ていることからこの名が由来。一見するとスミレの花にも似ています。

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