人の心を魅了して止まないサクラの花
サクラの花は古来、人の心を魅了して止みません。数多くの和歌や俳句にも詠まれてきました。
- 「いにしへの 奈良の都の 八重ざくら けふ九重に にほひむるかな」 伊勢大輔
- 「ねがわくは 花のしたにて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」 西行
- 「もろともに あはれと思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし」 大僧正行尊
- 「奈良七重七堂伽藍八重ざくら」 芭蕉

桜前線が人々の話題になるのは、春花の王者の風格を有するソメイヨシノ(染井吉野)が登場する3月下旬から4月初旬の頃です。淡く白くそして優雅なサクラの花が圧倒的なボリュームで木全体を覆うようになり、木の下から青空を見上げると、無数の花びらが天空に溢れんばかりに広がっていきます。その華麗さは日本の美の極致のようです。この時ばかりは、「日本に生まれた幸せ」を実感することが出来ます。

見事に満開になって隆盛を誇るサクラの花もわずか1週間ほどで散ってしまいます。また、この時期は年度の切り替わりで、旧知の人との別れや新しい人との出会いに遭遇します。こんなことが、平家物語の「諸行無常の響」とか「盛者必衰の理」といった言葉と私たちの心の中で共鳴してしてしまい、なおのこと桜(染井吉野)に惹かれるような気がします。
小石川植物園にも、いろんなサクラの花が生えていて、春先から初夏の頃まで花見を楽しむことができます。各地のサクラの花も加え、新たなコンテンツ 「サクラの風景」 として取りまとめ、アップしました。
この取りまとめの際に気になったのが、「サクラの範囲」です。調べてみると植物分類上のバラ科サクラ属サクラ亜属に属するものが、広義にサクラと言われるようですが、私たちが普通にサクラと呼んでいるのはサクラ亜属サクラ節のものです。ウィキペディアにサクラ属の分類が載っていましたので、以下に紹介します。
(バラ科サクラ属の分類)
サクラ亜属 * サクラ節 * ヤマザクラ群 - ヤマザクラ、オオヤマザクラ、 カスミザクラ、オオシマザクラ など * エドヒガン群 - エドヒガン など * マメザクラ群 - マメザクラ など * チョウジザクラ群 - チョウジザクラ など * カンヒザクラ群 - カンヒザクラ など * サトザクラグループ(雑種からなる群) 注)ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの交雑種。 また、カンザクラはカンヒザクラとヤマザクラもしくは オオシマザクラとの交雑種。 * ミザクラ節 * ミザクラ群 - セイヨウミザクラ など * ミヤマザクラ節 sect. Phyllomahaleb * ミヤマザクラ群 - ミヤマザクラ など * ロボペタルム節 sect. Lobopetalum * シナミザクラ群 - シナミザクラ など モモ亜属 * アーモンド * モモ スモモ亜属 * プルーン(ヨーロッパスモモ、セイヨウスモモ) * スモモ * スピノサスモモ * ウメ (ウメ亜属とする説も) * アンズ(アプリコット)(ウメ亜属とする説も) ニワウメ亜属 (古くはサクラ亜属に含められた) * ユスラウメ ウワミズザクラ亜属 * エゾノウワミズザクラ * ウワミズザクラ * イヌザクラ バクチノキ亜属 * セイヨウバクチノキ * リンボク * バクチノキ |
この分類によれば、モモとかウメなどは、同じバラ科サクラ属ですが亜属が異なっていて、少しだけサクラとは離れています。また、サクラと似たような花が咲くリンゴやナシはバラ科ナシ亜科のリンゴ属、ナシ属になりますので、少し近縁度が遠くなります。今回はいろいろと勉強になりました。
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