囲碁の世界でもコンピュータがプロ棋士に勝利!?
今年の1月、コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に完勝したというニュースが日本中を駆け巡りました。→ ブログ記事
米長邦雄というと、名人位を獲得したこともある超一流の将棋棋士です。現役を退いたとはいえ、米長の敗北は衝撃的でした。コンピュータの処理技術や知能(対局ソフト)の進展に驚きましたし、現役の「名人」や「竜王」まで負かすことになったりでもしたら、将棋の世界は天地がひっくり返ったように大変なことになるだろうと思います。
将棋と似たようなゲームが囲碁です。将棋では人がコンピュータに負けてしまいましたが、囲碁の世界ではコンピュータが人智を超えるのは遠い未来のことだろうと思っていました。
実際、別のブログ記事の中で、私は
『相手の王将を追い詰めるために直線的に進行する将棋と違って、囲碁のゲームでは、最終的に自分の陣地(地)を相手より1目でも多く確保するためにいろんな駆け引きが必要で、ジグザクとした複雑な進行をたどります。
具体的には、
1)盤の目の数が361(将棋は81)もあるので、局面の数が飛躍的に増え、より超高速なコンピュータの処理能力が必要となる。
2)相手の石をを取り返せない「劫」があったり、今は実利ゼロだが将来の地となりうる「厚み」の計算の仕方が難しかったり、さらには自分の石をわざと捨てる「捨て石」が有利な場面があったりと、コンピュータソフトの作り込みが極めて難しい。
等の点から、コンピュータが人間に追いつくには相当な年月を要するものと思われます。』
と書いたばかりです。ところが、今度はつい最近、コンピュータ囲碁ソフトのZenが 武宮正樹9段を負かしたことを知り、ここで更なる衝撃を受けてしまいました。
→ 対局結果の記事
→ 電気通信大学エンターテイメントと認知科学
シンポジウム特別イベント(2011.3.17)

最近の囲碁ソフトが急速に強さの秘訣は「モンテカルロ法」の採用にあるといわれる。一般的に、モンテカルロ法とは乱数を用いてシミュレーションや数値計算を行う方法を総称していますが、これを囲碁の世界に活用しています。簡単に言えば、次の着手選択するのに、コンピューターに終局までランダムに打たせ、すべての着手候補の中で一番勝率がいいものを選ぶという方法です。
定石や美しい形を覚えるのでもなく、単に次の手を最後まで読み尽くしてから選択するといったコンピュータならではのすさまじい力業です。このような「野暮ったい」方法でも強いのです。武宮9段との棋譜を見てみると、今まで習ってきた感覚とは全く違ったやり方ですが、結果を見ると正しかったということでしょうか。
囲碁ソフトは毎年1目ぐらいずつ強くなっているそうです。現在は4目ぐらいの差ですから、近い未来に平手でもプロ棋士に伍するようになるのでしょうか。Zenのソフトウェア(エンジン)が組み込まれているのは「天頂の囲碁」だそうです。私も早々に購入して、試してみようかとかと思います。
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