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2012年4月 8日 (日)

春爛漫、「真打ち」ソメイヨシノが満開になりました


 この週末は好天に恵まれ、しかも春の時期の「真打ち」ソメイヨシノが満開とあって大勢の人が花見を楽しみ、満開の桜に酔いしれていました。


 わが家から眺望した、この日の朝の小石川植物園の風景です。手前では、桃色のハナモモの花が満開になって咲いていますが、後方にも桜並木のうっすらと赤みを帯びた桜の花のじゅうたんがはっきりと見えたので、心が躍りました。


 実際、午前の早い時間から出かけて見たのですが、このように大勢の人通り。桜並木の満開に咲き誇ったソメイヨシノの壮観さにみんな口を揃えて「すごい」を連発していました。


 少し時間が経つと、桜の木の下の緑地は、家族連れやグループですっかり占有されていて、いかにも花見といった雰囲気です。ただし、小石川植物園では、アルコール持ち込みが禁止されていますので、酔っ払いは皆無です。


 現在、普通に桜といえばソメイヨシノ(染井吉野)のことを指しますが、桜並木にある大部分のサクラの木もソメイヨシノです。圧倒的なボリュームの優雅な桜色の花が木全体を覆い、春の青空の中に美しく広がっていく様は本当に素晴らしく、日本美の極致ともいえます。まさにソメイヨシノは桜の中で王者の風格を有しています。


 そもそも、ソメイヨシノ(染井吉野)のサクラの木は、江戸時代の染井村(現在の豊島区駒込付近)の植木屋さんが作り出したもので、これが全国に広まったと言われています。当初は、桜(ヤマザクラ)の名所であった奈良県の吉野山にちなんで吉野の名で売り出されたが、明治に入ってから染井吉野に変更されたそうです。また、ソメイヨシノの起源については、国立遺伝学研究所の竹中要博士により昭和に入って、オオシマザクラとエドヒガンとの雑種であることが確認されました。


 植物園内には、ソメイヨシノの大木があります。この大木は任期があってグループ写真の撮影スポットになっています。


 園内の古井戸の近くのソメイヨシノの木も相当な高木です。この左隣には、2月から3月に咲き出す早咲きのカンザクラの木があります。


 ソメイヨシノの品種の一つイズヨシノ(伊豆吉野)です。伊豆吉野は、前述のの竹中要博士によって染井吉野の起源を実証するためにオオシマザクラとエドヒガンの様々な交配を繰り返す過程で生まれた個体だそうです。花と新葉が同時に出始め、オオシマザクラに似ています。


 これもソメイヨシノの品種の一つのアマギヨシノ(天城吉野)です。やはりオオシマザクラとエドヒガンの交雑種で、竹中要博士が染井吉野(ソメイヨシノ)の起源を研究する過程で生まれたもの。


 植物園内の塀沿いに植えられているハナモモ(花桃)の木が満開になって、濃いピンク色の花を勢いよく咲かせています。塀沿いに散歩している人は立ち止まって見上げています。ハナモモの原産地は中国。花つきがよいため、主に花を観賞する目的で庭木などによく利用されます。


 ツツジの仲間のシャクナゲ(石楠花)の花も咲き出してきました。高山性のシャクナゲは、ツツジと異なり細長く堅めのしっかりとした葉が特徴です。また、常緑低木と言われるが、このシャクナゲは4~5mもの高さがあります。シャクナゲの花は大柄で、よく目立ちます。また、シャクナゲは葉にケイレン毒を含む有毒植物ですので要注意。


 園内のツツジ園の所で見かけない花が咲いていました。中国原産で常緑性のホンコンドウダン(香港満天星;ツツジ科)でした。確かに、花の形は普通のドウダンツツジに似ていますが、やや大きめで蝋細工のような花がとても印象的かつ魅力的です。中国では旧正月に咲くので、ニューイヤー・フラワーとして人気があるとのこと。


 本州の丘陵、山地に自生する落葉低木のヤマブキ(山吹;バラ科)。まさに絵の具のヤマブキイロと同じ鮮やかな黄色の花を枝垂れながら咲かせていました。八重咲きのヤエヤマブキ(八重山吹)もあります。イギリスでは 「イエロー・ローズ(黄色いバラ)」 と呼ばれる。


 この時期は、桜に目を奪われがちですが、野の花も見応えがあります。これはニリンソウ(二輪草;キンポウゲ科)の白い花です。この時期、園内で林地などでよく見かけます。ニリンソウは山麓の林の縁や林の中、土手などに生える多年草で、スプリング・エフェメラルの仲間です。ニリンソウの花はイチリンソウよりも少し小ぶりで、ひとつの茎に通常2輪の花が咲きます。葉が複雑に裂けた掌状となることから、鵝掌草(ガショウソウ)の別名があります。


 この何とも奇妙な形をした花を咲かせているのはサトイモ科の山野草のウラシマソウ(浦島草)です。草むらにひっそりと咲いていました。その名のとおり、開花した花をよく見てみると、まるで浦島太郎が釣り糸を垂らしているかのようです。ミズバショウザゼンソウも同じサトイモ科の仲間。


 日陰の草むらに群生するアヤメ科の常緑草本シャガ(著莪)の花がポツポツと咲き出していました。シャガの花は、花に黄と青の幻想的な模様が入っていて、つい魅入られ引き込まれそうな美しさがあります。中国原産で、かなり古くに渡来した帰化植物。シャガは三倍体で種子が発生しないため、日本に存在する全てのシャガは同一の遺伝子を持ち、またその分布の広がりは人為的に行われたと考えることができるとのこと。


 全国の山野の木陰に生える多年草のセントウソウ(仙洞草;セリ科)が、園内の随所で小さく細かな白い花を咲かせていました。ニンジンのような細かく裂けた葉が特徴的です。


 春の七草の一つになっているハコベ(繁縷;ナデシコ科)の花も路傍などに見かけるようになりました。白い5弁花のハコベの花は本当に小さく、写真を拡大して形がようやく分かります。


 春の野に普通に見られる野草のカラスノエンドウ(マメ科)です。赤紫色の小さな花が咲いています。花や葉の形が同じマメ科の萩に似ています。服用すると胃炎に効くといわれています。カラスとかイヌ、ヘビ、ヒメとかの接頭語が「小さい」という意味で植物によく用いられます。


 ムスカリの花(キジカクシ科)が群れて咲いていました。濃い青紫の小さな花がブドウの房を逆さにしたように並んで咲くので、ブトウムスカリやブドウヒヤシンスなどと呼ばれます。ムスカリは南西アジア、地中海沿岸地方原産の球根植物です。ベツレヘムの星という別称があるハナニラの花と並んで咲いているのも面白い取り合わせです。

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