将棋電王戦でコンピュータが勝利、プロ棋士を撃破
将棋の世界では、人間(プロ棋士)とコンピュータ(将棋ソフト)の激闘が続いていますが、先日コンピュータ軍団がトッププロ棋士チームを打ち破り、大変なことになってきました。
将棋ソフトは日進月歩の勢いで開発が進み、今やアマチュアの棋力を超え、プロ棋士並みの力量を持つようになってきています。ここ数年の両者の戦いを振り返ってみます。

2007年3月、前年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝した最強の将棋ソフトボナンザが、トッププロ渡辺明竜王に平手で挑戦しました。それまで将棋連盟はプロ棋士が将棋ソフトと対戦することを規制し ていたので、初めての公式対局とあって、多数の将棋ファンの注目を集めました。将棋は、終盤まで緊迫した局面が続きましたが、最後は一手違いで渡辺竜王が112手の熱戦を制しました。竜王の貫禄勝ちといったところでしょうか。

次は、コンピュータ将棋(あから2010)が清水市代女流王将に挑戦しました。対局途中、あから2010は人間であれば到底考えつかないような意表を突いた手を指して、その後清水を圧倒。結果はあから2010の勝利。コンピュータが大和撫子を凌駕した瞬間でもありました。

→ RWCPの成功がもたらした「コンピュータ将棋(あから2010)が女流王将に勝利」

(第1回将棋殿王戦)
清水女流のリベンジとばかり、今度は将棋連盟会長(当時)を務めていた米長邦雄永世棋聖(故人)が、強豪ソフトのボンクラーズと対戦。入念な作戦を練っていた米長は中盤まで善戦したものの、一瞬の隙を突かれて攻め込まれあえなく返り討ち。結果はボンクラーズの勝利。米長は、この対局を第1回将棋電王戦として、翌年の第2回は団体戦とすることを発表した。

→ コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に完勝
この流れを受けて、今年の第2回将棋電王戦の団体対抗戦が行われました。第2戦、第3戦の戦いは、それぞれ女流棋士、現役引退棋士との対局でしたので、いくら最強ソフトといえども、現役バリバリのプロ棋士であれば何とか撃退してくれるのではと誰しもが淡い期待を抱きながら、今回の第4戦を迎えることなったわけです。
本棋戦の内容は、5人の現役プロ棋士と5つの最強コンピュータ将棋ソフトが闘うというものです。プロ棋士チームは、新進気鋭の若手からA級在籍のトップ棋士たちです。これに対して、コンピュータチームは第22回世界コンピュータ選手権で勝利した上位5チームの将棋ソフトです。
今回の戦いを関係者は固唾を飲んで見守りました。果たして、その結果は?

(第2回将棋電王戦)
- 第1局 3月23日 ○ 阿部光瑠 四段 v.s. ● 習甦
- 第2局 3月30日 ● 佐藤慎一 四段 v.s. ○ ponanza
- 第3局 4月 6日 ● 船江恒平 五段 v.s. ○ ツツカナ
- 第4局 4月13日 △ 塚田泰明 九段 v.s. △ Puella α
- 第5局 4月20日 ● 三浦弘行 八段 v.s. ○ GPS将棋
最終第5局で、東京大学の研究者らが開発したソフト「GPS将棋」が三浦弘行八段(39)に勝ち、団体戦は将棋ソフト側の3勝1敗1分けとなり、人間がコンピュータに敗れてしまいました。コンピュータが人間の頭脳に一層近づいてきました。
特に最終局の三浦八段は名人挑戦権を争うA級棋士のトップクラスでしたので、予想に反しての完敗に将棋界には大きな衝撃が走りました。最終戦・第五局の終局後に東京・千駄ヶ谷の将棋会館にて全体記者会見が行われ、谷川浩司連盟会長は次のような厳しい所感を語っています。
- 『今回の結果は、プロ棋士にとって厳しい現実をつきつけられましたが、5名のプロ棋士はきっちりと準備・研究をして、全力を出し切ったと思います。今日の三浦八段の姿を見ると心が痛みますが、決して責任を感じることなく胸を張って欲しい。若いプロ棋士は(電王戦の経験を)プラスに繋げて欲しいと思います』
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