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2013年5月

2013年5月 6日 (月)

風薫る万緑の季節(続) 根津美術館、つくば植物園


 大型連休期間 (GW) は、万緑に惹かれて東京近辺をあちこち回ってしました。神代植物公園や小石川植物園については、紹介済みですので、ここでは連休後半の根津美術館とつくば植物園の風景を紹介します。

(根津美術館)

 5月4日に都内青山にある根津美術館を訪れました。決して広くない庭園ですが、きれいに手入れされていて、満開になった数多くのカキツバタ(杜若;アヤメ科アヤメ属)の花が庭園を美しく彩っていました。根津美術館は、東武鉄道の社長などを務めた実業家・初代根津嘉一郎(1860~1940)が蒐集した日本・東洋の古美術品コレクションを保存・展示しています。美術館鑑賞のあとは、都会のオアシスとも言われる緑豊かな庭園を散策することができるようになっています。


(つくば植物園)

 茨城県つくば市のつくば植物園にも行ってきました。つくば植物園は国立科学博物館に属し、多様な植物を収集・保全し、絶滅危惧種を中心とした植物多様性保全研究を行っている機関です。園内では、多種多様な植物に直に接することができます。これは、ヤマフジ(山藤;マメ科フジ属)です。大木の木枝から沢山の豊かな花穂が垂れていました。


 ノハナショウブ(野花菖蒲;アヤメ科アヤメ属)の花が池の周りに群生していました。よく見ると紫色の花びらの基部に黄色のすじが入っています(カキツバタは白色から淡黄色のすじが入る)。これから6月にかけて寺社の池などでよく見かける、大柄で色とりどりの花を付けるハナショウブは、ノハナショウブの園芸種になります。


 日本各地の落葉広葉樹林に生育するエビネ(海老根;ラン科エビネ属)が生育していました。最近では採取」によって生息数が減少していてレッドデータに掲載されるようになった。地表近くにできる塊茎がエビのように曲がって連なっていることから、海老根の名前が由来。エビネのすぐ近くに、黄色い花のキエビネ(黄海老根)が咲いていました。  


 山間地の比較的湿潤な場所に生育するクリンソウ(九輪草;サクラソウ科サクラソウ属)の花が咲いていました。わが国に自生するサクラソウ科の植物のなかでは最も大きいもの。花が花茎を中心に円状につき、それが数段に重なる姿が仏閣の屋根にある「九輪」に似ていることが、この名前の由来です。花が大きく美しいため山野草として人気があります。


 北海道、樺太、シベリア、中国北東部などに分布する多年草エゾスカシユリ(蝦夷透百合;ユリ科ユリ属)の薄オレンジ色の美しい花。花弁の根元部分が細くなっており隙間があるのが「スカシ」の名の由来です。ニッコウキスゲやノカンゾウなどのユリ科ワスレ属の花々 ともよく似ています。


 最後にわが家の花壇から。クレマチス(キンポウゲ科センニチソウ属)を神代植物公園内で買い求めてきました。右隣りでは、ジャスミンの花が盛んに咲いていて、強い芳香を放っています。わが国では、大輪のクレマチスが鉢に仕立られ鑑賞に用いられます。クレマチスは人気のあるほとんどの種がつる性で、名前もギリシア語のクレマ(つる)に由来。


 このヒルザキツキミソウ(昼咲月見草;アカバナ科マツヨイグサ属)は昼間に開花するもので、やはり植物公園内で販売されていました。珍しかったのでつい買い求めてきました。普通のツキミソウは夕方に開花し、朝には花が萎みます。

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風薫る万緑の季節、小石川植物園は色鮮やかな初夏の花々


 4月末~5月初の大型連休の頃は風薫る万緑の季節です。北海道で季節外れの降雪があったというニュースには驚きましたが、東京近辺は暑くもなく寒くもなくといった比較的良い天気に恵まれ、絶好の行楽日和だったと思います。私は、この期間中に近くの小石川植物園に何回か足を運んできました。一面が万緑に覆われている園内ですが、所々に初夏の花々が咲いていて、しっとりと調和がとれた色彩の風景を楽しむことができました。


 小石川植物園のシンボル的な建造物になっている旧東京医学校の建物です。しばらく続いていた修復工事も終わったようで、日本庭園を眺望できる位置に建っています。オオムラサキのツツジが右前景にあって、いかにも初夏の佇まいです。


 植物園の丘上部にツツジ園があって、まだいろんな種類のツツジが鮮やかな彩りを見せています。後方の巨木は常緑樹のクスノキですが、ちょうど新葉への入れ替え時期にあたっていますので、木全体が若々しい感じです。まるで鎮守の森の主のような存在です。


 万緑の季節といわれるこの時期は、本当に樹木の緑が鮮やかです。この樹木はエンジュ(槐;マメ科エンジュ属)です。盛んに新葉が吹き出していますが、この後7月頃に白色の蝶形花を多数開き、蜂などの重要な蜜源になっています。


 イロハモミジ(カエデ科カエデ属)。もちろん秋の紅葉も素晴らしいのですが、緑一色の若葉も見事です。イロハモミジは福島県以西の本州、四国、九州、朝鮮に分布します。


 巨木のユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)を見上げると、大きめの緑葉がうっそうと生い茂っていて壮観です。ユリノキは、チューリップのような花をつけるのでチューリップツリーの別名もあります。秋の黄葉冬木立も見応えがあります。この他にも、園内で鮮やかな木々の緑を存分に満喫できました。


 高木のヒトツバタゴ(モクセイ科ヒトツバタゴ属)の樹上を見上げると、まるで白雪で覆われているかのように、白い花で覆われていました。周りを圧倒する景観で、これを見た昔の人が「何じゃこりゃ」と驚いたことから、ナンジャモンジャの別名が付いたと言われます。


 香りのいいバラの仲間の花も咲いていました。この薄ピンク色の大きめの花はサクラバラ(桜薔薇;バラ科バラ属)です。周りに甘い香りを放っています。これ以外にも、ノイバラナニワイバラサンショウバラ などの花々も咲いていました。


 タニウツギ(谷空木;スイカズラ科タニウツギ属)のピンク色の花が数多く密集して咲いていました。タニウツギは山野に自生する落葉低木で、特に谷間に多く生息します。


 ツツジの仲間もまだ咲いていました。これは石垣島や西表島に自生するというセイシカ(聖紫花;ツツジ属セイシカ亜属)の花です。神秘的な語感の和名は、 山奥の渓流沿いという秘境に咲く花のイメージに似合います。


 ヨーロッパ原産の「西洋あやめ」の代表種の一つジャーマンアイリス(アヤメ科アヤメ属)の花が集まって咲いていました。日本のアヤメの仲間と比べて大柄、花弁にはフリルが入って華やかです。カキツバタイチハツカマヤマショウブ などのわが国のアヤメ科の仲間の花々も咲き始めました。


 暖かな陽光のに誘われ、所狭しと数多くの野の花が咲き出してきました。ふと近くのタンポポの花を見やるとアゲハがぶら下がっているかのようにくっついていました。


 赤紫色のムラサキカタバミ(カタバミ科カタバミ属)の群生です。これ以外にも白い花のシロバナイモカタバミ、黄色い花のカタバミもよく見かけます。


 キンポウゲ科キンポウゲ属の野の花ウマノアシガタ(馬の蹄)です。小さな黄色の花が陽光を浴びてキラキラと光っていました。


 サギゴケ(鷺苔;ゴマノハグサ科サギゴケ属)の紫色の小さな花も見つけました。本州、四国、九州の湿ったあぜ道などに分布する多年草。匍匐茎で広がっていき、やがて苔のように地面を葉がびっしりと覆ってしまいます

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2013年5月 2日 (木)

万緑が広がるGWの神代植物公園


 大型連休期間 (GW) の5月2日、調布市の神代植物公園まで足を伸ばしてきました。連休の合間の平日でしたのであまり混雑もせず、万緑が広がる美しい季節を堪能してきました。

  神代植物公園は武蔵野の面影が残り、四季を通じて草木の姿や花の美しさを味わうことができます。この公園は、もともと東京都の街路樹などを育てるための苗圃でしたが、戦後、神代緑地として公開され、その後1961年に都内唯一の植物公園として開園したものです。


 ばら園の見事な眺望です。中央部の噴水の周りに花々が配置され、西洋庭園のような雰囲気があります。正面の建物は大温室です。約5,200株のバラが栽培されているばら園は、ちょうど開花が始ったばかりでした。

  公園内には、ばら園、ぼたん・しゃくやく園、つつじ園、つばき園など種類別、形態別などにより分けて配置されています。また大温室もあり、熱帯、亜熱帯の珍しい植物も集められています。


 植物公園には深大寺門から入園しましたが、入口近くには有名な深大寺そばの茶店が並んでいました。ちょうど昼時でしたので、ここで腹ごしらえしました。


 公園内のつつじ園の風景です。色とりどりのツツジが咲いて葉の緑と美しく調和しています。


 上のばら園の写真では外れていましたが、右側に長い藤棚が配置されています。大勢の人が藤棚のフジを楽しんでいました。


 藤棚のフジはちょうど見頃で、無数の房状のフジの花が垂れ下がる様は圧巻でした。フジはマメ科フジ属のつる性木本で、淡紫色または白色の花が房状に垂れ下ります。わが国にはノダフジとヤマフジの2種があり、上から見たつるの巻く向きがそれぞれ右回り、 左回りという違いがあります。


 つつじ園に隣接してしゃくなげ園が配置されています。しゃくなげ園ではいろんなシャクナゲの花が満開になっていました。シャクナゲ(石楠花)は耐寒性常緑広葉樹で、ツツジ(躑躅)と同じくツツジ科ツツジ属に属します。ツツジと比較すると、花が大きくゴージャスな感じがすること、丸みを帯びた葉が厚く細長いことなどが特徴になります。

 シャクナゲには多くの品種があります。この写真の手前は、マーキーターズ・フレイム、後方はブルーファンタジーの名が付いています。


 この白いシャクナゲの品種名は、クレスト。


 真っ赤なイーブニング・クロー。


 品種名はサッフォー。白花の中心部に紫色の斑が入っています。


 次は大温室内の植物です。これは、マメ科のつる性植物でフィリピンの限られた熱帯雨林に自生するヒスイカズラです。花の色が珍しい青碧色で、宝石の翡翠に似ています。


 大温室には原種も含めて多くの球根ベゴニアも陳列されています。球根ベゴニアはベゴニア(シュウカイドウ科シュウカイドウ属)の一種で、ペルー、ボリビアなどのアンデス高山地帯に分布する植物の交配種です。半耐寒性で暑さにきわめて弱い多年生植物で、わが国では、専用の温室がないと栽培は難しいとされています。


 帰り道ふと見上げると、園内のハクウンボク(白雲木;エゴノキ科エゴノキ属)の大樹に満開になった白雲のような白い花が多数枝先に付いていました。珍しい眺めでした。


 公園の塀沿いにウツギ(空木;ユキノシタ科ウツギ属)の白い花が咲きそろっていました。ウツギは全国に広く分布する落葉低木で、「夏は来ぬ」の小学唱歌の卯の花のことです。初夏の風物詩でもあります。


 今回初めて神代植物公園を訪れましたが、かつての武蔵野の原野に広がる野趣あふれる万緑の世界に感激しました。車でも1時間弱の近さです。リピーターになりそうです。

   → 季節のスケッチ(25年5月 神代植物公園)

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