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2014年9月

2014年9月28日 (日)

久しぶりの小石川植物園、スイフヨウ、ヒガンバナ、萩などの秋の花々


 9月下旬になってデング熱騒動がようやく収まりそうになってきました。やれやれと思っていたところ、昨日は秋の紅葉シーズンを迎えた木曽の御嶽山が噴石を伴う水蒸気噴火を起こし、数10名の被害者が出たようです。


  [NHK ニュースWEBより]

 自然は私たちに季節の喜びや生きるための癒やしを与えてくれます。が、同時に多くの試練を課してきます。当たり前のことですが、いろんな災害が発生するたびに再認識させられます。


(秋分の日の小石川植物園)

 さて、先日の秋分の日(23日)、久しぶりに小石川植物園を訪れてきました。デング熱対策として虫除けようのリストバンドを2カ所付けた重装備の格好で回ってきましたので、蚊には全く刺されませんでした。

 園内の様子ですが、季節は暦通りに進んでいて、スイフヨウ、ヒガンバナ、萩などの秋の花々を見かけることができました。

 まず、植物園に入って直ぐの所にスイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)の花が咲いていました。

 八重咲きのスイフヨウの花は一日花で、白色から薄赤色に徐々に変わってしぼみます。酒を飲んで顔がだんだん赤くなってくる様子から「酔う芙蓉」といい、この名になったとのこと。普通に見る花は白花か赤花ですが、この日はちょうど変身中の花を撮ることができ、ラッキーでした。

 スイフヨウの木から少しだけ離れた所にフクロミモクゲンジ(袋実木欒子; ムクロジ科モクゲンジ属)の大樹があります。

 樹上を見上げると、黄色の花が盛んに咲いていました。黄色の細かい花がハラハラと舞い降りて、木の下の地面は黄色のオガクズを敷き詰めたようになります。まさに、英名の golden rain tree そのものです。

 次はこの季節の風物詩のヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)です。園内の至る所で真っ赤に広がっていました。

 ヒガンバナにはその美しさ、妖しさ等からいろんな呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の呼び名が有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。一方、わが国ではちょうど彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。ヒガンバナは妖しく燃えるような真っ赤な花が大部分ですが、少しだけ白いヒガンバナも咲いています。白花曼珠沙華ともいいます。


 毒花、痺れ花の別名が付くヒガンバナは全草有毒なのですが、アゲハには無毒のようです。アゲハはヒガンバナの蜜が大好物で、舞うように次々にヒガンバナを巡っていきます。


 園内の至る所でヒガンバナを見かけました。ヨメイヨシノの大樹の根元でもこのように。日本に分布するヒガンバナは全て遺伝的に同一の三倍体のため、種子で増えることができず、球根を増やしながら広がります。


 ヒガンバナは昔から墓地に植えられ、故人を弔うための花といった感じもします。故人の霊が宿るようなヒガンバナの後方に見えるのはラクウショウ(落羽松)の気根ですが、まるで野辺に立つお地蔵さまのように見えます。

 秋の七草の一つである萩の花も盛んに咲き出していました。

 全国の山地に分布するマルバハギ(丸葉萩;マメ科ハギ属)が赤紫色の蝶形の花を付けていました。名のとおり丸い葉が特徴です。マルバハギや同属のヤマハギが、「秋の七草の萩」とされています。


 ミヤギノハギ(宮城野萩)が紅紫色の小さな花を細い枝に多数つけ、枝垂れて咲いていました。宮城県に多く自生することから和名が由来します。わが家の庭にも同じ萩の木がありましたが、旺盛な繁殖力でどんどん成長します。


 珍しい白い花を付けるシロバナハギ(白花萩)も見かけました。シロバナハギはミヤギノハギの変種です。


 白いシュウメイギク(秋明菊;キンポウゲ科イチリンソウ属)の花が可憐に咲いていました。シュウメイギクの名前からはキク科のように思えますが、実はキンポウゲ科の植物です。シュウメイギクには白い花と趣が異なる、勲章のように立派な形をした八重咲きの赤い花もあります。京都北山の貴船に自生していることから貴船菊の別名があります。


 山野の半日陰地にみられる多年草のホトトギス(杜鵑;ユリ科)も見かけました。面白い和名が付いていますが、花びらの斑点模様が鳥のホトトギスの胸の模様に似ていることに名が由来。

 秋の花々以外にも赤い実を付けている樹木を多く見かけました。秋の季節を実感します。

 初夏に美しい花を付け楽しませてくれるハナミズキ(花水木;ミズキ科ミズキ属)ですが、頭上の木の枝をよく見ると、赤い実が点々と付いているのがわかります。葉も少しずつ色づいてきました。


 これは日本庭園の池の周りに生える落葉低木のゴンズイ(権萃;ミツバウツギ科ゴンズイ属)。赤い袋果の実が数多く付いています。やがて黒い種が出てきます。


 ニイタカガマズミ(スイカズラ科ガマズミ属)の低木にガマズミの赤い実が付いていました。植物園の名札にはViburnum betulifolium Batal.の英語名しか付いていませんでしたので、調べてみたらニイタカガマズミが和名のようです。ニイタカ山は台湾の最高峰ですので、台湾に多く自生していると思われます。


 秋に赤い実でなく、珍しい紫色の実を付けるのは落葉低木コムラサキ(小紫;クマツヅラ科ムラサキシキブ属)です。その名のとおり紫色の小粒の実が房状に連なって枝垂れながら枝中に付いていました。

  …> 季節のスケッチ(26年9月)

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2014年9月 7日 (日)

9月の花は真紅に燃えるヒガンバナ


(デング熱騒動)
 9月に入って暑さが納まってきましたが、蚊を感染媒介とするデング熱騒動が収まる気配がありません。感染場所とみられる都立代々木公園で採取した蚊から、デングウイルスが検出されたことを受け、代々木公園が閉鎖されました。さらに、新宿中央公園、神宮外苑、外濠公園などの蚊に刺された感染者が出て、波紋が広がっています。

 ただ、デング熱の症状を調べてみると一過性の熱性疾患であり、重症化することはあまりないようです。症状的には、発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛など、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含むとのこと。西アフリカのエボラ出血熱のイメージと重なって、大騒ぎになってしまった感があります。

 私にとって困ったことには、植物園に行きづらくなったことです。新宿御苑は閉鎖になったようです。また、小石川植物園は閉園になっていませんが、窓から園内の様子を覗いてみると、散策している人が皆無です。長袖、長ズボンの服装で虫除け器を持参すれば大丈夫かと思うのですが、万一の場合のことを考えた場合、植物園訪問をためらってしまいます。こんなわけで、今回はこれまでの季節のスケッチのコンテンツを用いて記事をまとめることにしました。

(季節の花ヒガンバナの紹介)

 9月になると次第に暑さも収まり、野山に咲く秋の花々を楽しむことが出来るようになります。いろんな秋の花々の中で、今回は妖しく真紅に燃えるように咲き出すヒガンバナ(彼岸花)を紹介します。

 ヒガンバナにはその美しさ、妖しさ等からいろんな呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の呼び名が有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。一方、わが国ではちょうど彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。

            (2013.9@小石川植物園)

            (2004.9@小石川植物園)
 小石川植物園では、林地の林床部の草むらをはじめとして園内随所に真紅に燃えるようなヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の花々が数多く咲き出します。毒花、痺れ花の呼び名もあるヒガンバナは全草有毒なのですが、アゲハには無毒のようです。ヒガンバナの蜜が大好物で、舞いながら花から花へと次々に巡り回っていきます。


            (2013.9@小石川植物園)
 ヒガンバナは赤花が大部分ですが、少しだけ白いヒガンバナも咲いています。白花曼珠沙華ともいいます。


            (2004.9@小石川植物園)
 ヒガンバナは昔から墓地に植えられ、故人を弔うための花といった感じもします。この写真は、かつて親が亡くなった直後に植物園で撮ったものです。故人の霊が宿るようなヒガンバナと、その後方に仏像群のように見えるラクウショウ(落羽松)の気根の組み合わせに不思議な符号を感じました。


            (2012.9@小石川植物園)

            (2008.9@小石川植物園)

            (2008.9@小石川植物園)
 この時期、植物園のいろんな所にヒガンバナを見かけます。まさに9月の花と言えます。
 ヒガンバナはその生長サイクルも独特です。すなわち、1週間ほどで花も茎も枯れてしまった後、球根から緑の葉がすくすくと伸びてきます。そして、翌年の春までしっかりと光合成をして球根に栄養をため込み、夏を迎える頃には、葉を枯らして休眠期に入ります。やがて秋の彼岸の頃に、再び地表に姿を現して、真っ赤な花を咲かせます。


            (2010.10@巾着田)

            (2010.10@巾着田)
 奥武蔵にある日高市の巾着田(きんちゃくだ)はヒガンバナの群生地として有名です。巾着田とは日高市内を流れる高麗川の蛇行により長い年月をかけて形成され、その形が巾着の形に似ていることから、そのように呼ばれています。かって訪れた時には面積約22ヘクタールの川に囲まれた巾着田の平地が、ちょうど赤い絨毯を敷き詰めたように一面が満開の彼岸花で真紅に染まっていました。あまりの美しさに息をのんだものです。この地は水田の休耕田でしたが、地元では彼岸花、菜の花、コスモスの種蒔き、球根手入れや草刈りを丁寧に行って整備しているとのことでした。


            (2008.9@皇居東御苑)
 皇居東御苑でも見かけました。典雅な感じの数寄屋風の書院茶室で、二の丸庭園に建つ諏訪の茶屋の前の草地に、紅白のヒガンバナが咲いていました。この他土手などにも咲いています。


            (2012.8@小石川植物園)
 次にヒガンバナの近縁種を紹介します。これはナツズイセン(夏水仙;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の淡桃色の花です。林地の茂みに8月に見かけます。水仙の名を含んでいますが、水仙よりも彼岸花に似ています。


            (2012.8@小石川植物園)
 林地の涼しい所に見かける橙色のキツネノカミソリ(狐の剃刀;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の花。やはりヒガンバナの同属で、8月に咲きます。面白い和名がですが、春先の伸びた葉をキツネの剃刀にたとえ、この名が付いたとのことです。


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