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2015年3月

2015年3月29日 (日)

東京の桜が満開、小石川植物園でいろんなサクラの風景を満喫


 この週末もポカポカ陽気に恵まれ、東京管区気象台により29日(日)午後2時前、桜の満開が発表されました。平年より5日早く、昨年より1日早い満開です。開花が3月23日でしたので、6日で満開を迎えたことになります。今年は、東京が全国で最初に満開になったそうです。ちなみに、「サクラの満開日」とは、標本木(靖国神社内)で80%以上のつぼみが開いた状態となった最初の日をいいます。



 小石川植物園を散策したのは22日の午前10時~11時頃でしたので、桜並木のソメイヨシノは少し蕾が残っていて、このようにピンク色が濃いめになっていました。時間が経ち満開の状況になると全体的に白っぽくなります。いずれにしても心躍る風景で、つくづく日本人に生まれて良かったと実感します。園内には、ソメイヨシノをはじめとしていろんな桜の花は青空に咲き広がっていて、日本美の醍醐味を満喫してきました。




 桜といえば、何といってもソメイヨシノ(染井吉野)が代表格です。華麗に満開になったソメイヨシノの姿は日本の美の極致といえます。ソメイヨシノのサクラの木は、江戸時代の染井村(現在の豊島区駒込付近)の植木屋さんが作り出したもので、これが全国に広まったと言われています。当初は、桜(ヤマザクラ)の名所であった奈良県の吉野山にちなんで吉野の名で売り出されたそうです。ソメイヨシノの起源については、オオシマザクラとエドヒガンとの雑種であることが確認されています。


 ソメイヨシノにはいろんな品種のサクラが存在します。わが国のサクラ研究の第一人者であった国立遺伝学研究所の竹中要博士が、ソメイヨシノの起源を研究する過程でいろんな品種が生まれたといわています。これは三島桜@ソメイヨシノです。


 山越@ソメイヨシノ。


 天城吉野@ソメイヨシノ。


 伊豆吉野@ソメイヨシノ。


 美しく広がるエドヒガン(江戸彼岸)。普通に私たちがサクラと呼んでいるのはバラ科サクラ属サクラ亜属サクラ節に属する植物で、エドヒガン群、ヤマザクラ群、マメザクラ群、サトザクラ群、カンヒザクラ群、チョウジザクラ群に分類されます。エドヒガンはソメイヨシノと同じエドヒガン群に属します。


 高木のシダレザクラ(枝垂桜)が満開になっていました。上品な白い花が空中に美しく枝垂れています。シダレザクラもエドヒガン群です。


 このシダレザクラは、高さはまだ中低木ですが、無数のピンク色のサクラの花が滝の流れのように枝垂れていました。


 園内の古井戸の近くに生えるヤマザクラの高木。やはり満開になっていました。ヤマザクラはヤマザクラ群に属します。


 群桜@ヤマザクラ。園の入口近くに生えていて清楚で見事な満開の姿です。ヤマザクラは日本の野生の桜の代表的な種で、寿命が長く大木になります。


 最後に紹介するのは珍しい桜の花です。和名はまだ付いていないとのことで、英語名はPrunus pusilliflore Card です。中国原産でバラのような香りがします。植物園の奥の方にあってこの時期だけ、一般に公開されています。

 なお、ソメイヨシノ以外の桜でこれから咲き出す種類のものもあります。しばらくサクラ鑑賞の楽しみが続きます。

 …> 季節のスケッチ(27年3月) (サクラの風景)

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2015年3月22日 (日)

小石川植物園にコブシ咲き、いよいよ春本番


 春の彼岸の日曜日(22日)、約一ヶ月ぶりに小石川植物園を散策してきました。この日は気温が20℃近くまで上がり、ポカポカ陽気でセーター1枚で園内を回ることが出来ました。園内では花々が木々から、そして草むらから一斉に吹き出してきた感があり、いよいよ春本番の候を迎えました。



 園内の林の中で、春の訪れを謳歌するかのように白いコブシ(辛夷;モクレン科モクレン属)の花が、青空の中で乱舞していました。「北国の春」の歌にもあるように、故郷の東北地方では「雪解け」とか「コブシの花」は春の訪れのシンボルになっています。


 開花が気になるソメイヨシノはもう少しの辛抱になりますが、ソメイヨシノ以外のいろんなサクラ(バラ科)の花が咲き出していました。これは、濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与えるカンヒザクラ(寒緋桜)です。サクラの原種の一つで沖縄に自生します。


 伊豆大島や伊豆地方に多く生息するカンザキオオシマ(寒咲き大島)です。このサクラの花はソメイヨシノと雰囲気が似ていて、白く清楚な花を咲かせます。オオシマザクラは野生種のサクラの一種で、花と葉を同時に付けます。また、この時期に食する桜餅はこのサクラの若葉を塩漬けにしたものを使用します。


 カンザキオオシマの隣では、早春桜があでやかなピンク色の小振りな花を一斉にに咲かせ、華やいだ雰囲気を醸し出していました。この早春桜は、富士山や箱根などの山地に分布する富士桜(マメザクラともいう)の園芸種です。この他、チョウジザクラも開花していました。


 なかなか見かけないチョウジザクラ(丁字桜;別名メジロザクラ)ですが、質素な花を付けていました。花を横から見ると丁字や丁子(クローブ)のように見えることが名の由来とされています。チョウジザクラはサクラの野生種の一つで、本州の東北以南の太平洋側に見られます。


 黄金色の花々も目立ってきました。サンシュユ(山茱萸;ミズキ科)の花が見頃になってきました。小さな黄金色の花が点々と木枝の至るところから吹き出している感じです。サンシュユは木全体が黄金色に輝くことからハルコガネバナとも呼ばれます。中国、朝鮮半島原産の落葉小高木で、江戸時代中期に薬用として渡来したとのことで、秋に付ける赤い実は、滋養・強壮の薬効があります。


 庭園のすぐ近くの梅林に向かうと、紅梅、白梅はそろそろ終盤の時期が近づいていましたが、梅林の中央部にあるサンシュユの大木が黄色に輝いていて、色の三重奏を楽しむことができました。


 これはトサミズキ(土佐水木;マンサク科トサミズキ属)です。満開になり、無数の黄緑っぽい花が一斉に枝から吹き出すように咲き出していました。トサミズキは高知県原産で、蛇紋岩地帯や石灰岩地帯などに生育する落葉低木です。

 
 まだ冬木立のままのメタセコイア林の近くで、朝鮮半島原産の落葉低木のチョウセンレンギョウ(朝鮮連翹;モクセイ科レンギョウ属)が満開になっていました。まばゆいほどの黄色の四弁花が枝垂れて咲いていました。メタセコイアはもうすぐ新緑の彩りに変貌します。


 ツツジの仲間もにぎやかになってきました。江戸時代の養生所時代に用いられた古井戸の近くで、上品な淡い赤紫色のゲンカイツツジ(玄海躑躅;ツツジ科)の花が美しく咲いていました。まるで絹の布地でつくったかのようのふわっとしています。


中国原産のホンコンドウダン(香港満天星;ツツジ科ドウダンツツジ属)も花を付け始めました。蝋細工のように釣り下がる釣鐘形の花のピンクと白の色合いが美しく、ピンクシャンデリアの流通名が付いています。また、中国の旧正月頃に咲くことから、英名はチャイニーズ・ニューイヤー・フラワーとなっています。


 木々の花々だけでなく、野の花も賑やかに咲き出してきました。これはスプリング・エフェメラルの代表格のカタクリの花です。群生地に足を運ぶと、期待通り薄い赤紫色のカタクリの花が秘やかにそして可憐に咲いていました。6枚の花びらが反り返っていて、まるで春の陽光の下で森の妖精たちが背中の羽根を羽ばたきながら遊んでいるようです。


 2月中旬にぽつりと咲き出したユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)の清楚で可憐な白い花が一面に広がって咲いていました。メタセコイア林の近くに群生地があります。ユキワリイチゲもスプリング・エフェメラルの野の花です。


 ハナダイコン(花大根;アブラナ科)の紫色の花が、園内の柴田記念館の周りの空き地に群生しています。辺り一面を花で覆いつくす様は見事です。欧米では伝統のある園芸植物です。


 ハナニラ(花韮;ユリ科イフェイオン属)の清楚な白い花が、園内の各所の草むらに咲き出しました。南米原産で明治時代に観賞用として帰化しました。花の形はアマナに似ていることからセイヨウアマナ(西洋甘菜)とも呼ばれます。


この時期におなじみの黄色のタンポポ(蒲公英;キク科タンポポ属)の花が増えてきました。すぐ隣には白いハナニラ(花韮;ユリ科イフェイオン属)の花、青紫色のオオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)などがみられ、この小さいエリアだけでまるで春の野の花の小宇宙のようです。


 さらに野の花が続きます。これはタチツボスミレ(立坪菫;スミレ科スミレ属)。薄紫色の可憐な花を園内のあちこちに見かけました。わが国では日当たりのよい道端や草原、林地などに普通に見られます。


 ヒメオドリコソウ(姫踊り子草;シソ科オドリコソウ属)。小さなピンク色の花を付けています。花の形が踊り子に似ていることから、この名が付いています。肥えた土地を好みあちこちに生えています。周りには米粒のように小さな白い花が点々と咲いています。


 一面に咲き広がる米粒のように小さな白い花はコゴメイヌノグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属 )です。園内の随所に広がっています。花の形はオオイヌノフグリと似ていますが大きさが全然違います。元々小石川植物園に研究用に持ち込まれたものが広がって野生化したそうです。


 やはり米粒のように小さいハコベ(繁縷;ナデシコ科ハコベ属)の白い花も見つけました。各地の路傍や畔などに自生する代表的な野草で、ハコベラとして春の七草の一つに数えられています。


 園内の一角に群生地があるオオキバナカタバミ(大黄花片喰;カタバミ科カタバミ属)の黄色の花が増えてきました。ふつうのカタバミと違い、葉に紫色の斑点があるのが特徴です。

 園内のヨメイヨシノの開花も間近となり、いよいよ本格的な春の訪れになりました。時間を見つけて存分に楽しみたいと思います。


…> 季節のスケッチ(27年3月)


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2015年3月14日 (土)

スプリング・エフェメラルとの出会いを求めて栃木の山野へ

 この時期の醍醐味はスプリング・エフェメラル(春の妖精と呼ばれる春の山野草)との出会いです。3月14日の週末、天気もまあまあでしたのでセツブンソウ、アズマイチゲ、カタクリ、フクジュソウなどのスプリング・エフェメラルの植物との出会いを求めて、栃木の星野の里(森)や、みかも山公園にドライブしてきました。

 実は、2011年3月に星野の里を訪れ、山裾一面に広がるセツブンソウの可憐な姿に大いに感動したのですが、そのときから1週間も経たずにあの東日本大震災が発生したものですから、気分的に再度の訪問をためらっていました。しかし、その後4年も経過したということで自分を納得させ、また出かけることにしました。

星野の里(森) セツブンソウなど



 4年前の星野の里(森)では、セツブンソウが山裾一面に群生していて可憐に咲き広がっていました。近年イノシシの荒らされているそうで、さらに3月中旬は時期的に少し遅めだったので咲き具合が心配でしたが、まだ日当たりが少ない斜面などに咲き残っていたのでホッとしました。


 セツブンソウ(節分草)はキンポウゲ科セツブンソウ属の多年草で、春の一時期だけ地表に姿を現すスプリング・エフェメラルの一種です。関東地方以西に分布し、石灰岩地域に多く見られます(星野も石灰岩地域)。花期は2-3月で直径2cmの可憐な白い花を咲かせます。和名は、早春に芽を出し節分の頃に花を咲かせることに由来します。



 星野の森は三峰山の北側の山裾に位置し、東北自動車道の栃木インターを下りて大きな県道をまっすぐ西方に15分程ドライブすると、鮮やかな黄金色に輝くマンサクや濃いピンク色の紅梅の木々が出迎えてくれます。この三峰山は良質な石灰を産出し、一帯に石灰岩の採石場が数多く分布しています。


 セツブンソウの他にもスプリング・エフェメラルの植物を見かけました。これはフクジュソウ(福寿草;キンポウゲ科フクジュソウ属)です。まぶしいような黄金色を放ちながら、精一杯春の陽光を求め咲き出しています。奥の方にはセツブンソウが立ち並んでいます。


 やはりスプリング・エフェメラルの植物のキクザキイチゲ(菊咲一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)もポツポツと咲いていました。キクサキイチゲの葉は、ちょうど菊の葉のように切れ込みが鋭いのが特徴です。


 森を出たあぜ道には青紫色の小さく可憐なオオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)の花が点々と広がっていました。オオイヌノフグリはスプリング・エフェメラルではありませんが、星の瞳の別名を有する典型的な春の野の花です。


みかも山公園 アズマイチゲ、カタクリなど



 星野の森を後にして、次は佐野藤岡インターのすぐ近くのみかも山公園へ向かいました。みかも山公園は花の百名山に選ばれている三毳山(みかも山)と一体化されている県営の広大な自然公園です。ここは、カタクリ、アズマイチゲ、ニリンソウなどの山野草の自生地としても有名です。


 公園の東側の入口からすぐ近くの所に、広葉樹林が広がっていますが、その林床部を見やると小さな白い花が一面に咲き出しています。


 この群生する白い花はアズマイチゲ(東一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)でした。アズマイチゲは北海道、本州、四国、九州に分布する、スプリング・エフェメラルの植物です。他のスプリング・エフェメラルと同じように、アズマイチゲは広葉樹林がまだ葉を付けないこの頃に林床に注がれる春の日差しを受け、精一杯花を咲かせています。


 アズマイチゲに交じってわずかですが、キクザキイチゲ(菊咲一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)も見つけました。アズマイチゲと比べると、花が大きめで葉の切れ込みが鋭いのが特徴になっています。珍しいうす紫色の花も咲いていました。




 さらに、このアズマイチゲの群生地の一角にカタクリ(片栗;ユリ科カタクリ属)の花も咲き出していました。カタクリは代表的なスプリング・エフェメラルの植物です。万葉の頃から親しまれ、古名は堅香子(かたかご)となっています。カタクリの花は6枚の花びらが反り返っていて、まるで春の陽光の下で森の妖精たちが背中の羽根を羽ばたきながら遊んでいるように見えます。カタクリの鱗茎は澱粉を含み、片栗粉の原料になり、若葉は食用に供されます。


 公園内は山の斜面でも歩き易いように遊歩道がしっかりと配置されています。遊歩道をたどりながら十分に森林浴を楽しむことができます。


 ちびっ子向けにはフラワートレインが用意されています。みかも山公園を縦横に巡っています。子供たちは大はしゃぎです。

 この日はセツブンソウの星野の森といい、アズマイチゲ、カタクリのみかも山公園といい多くのスプリング・エフェメラルの植物と出会うことが出来、久しぶりのドライブも兼ねた楽しい一日でした。

…> 季節のスケッチ(27年3月)


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