小石川植物園にコブシ咲き、いよいよ春本番
春の彼岸の日曜日(22日)、約一ヶ月ぶりに小石川植物園を散策してきました。この日は気温が20℃近くまで上がり、ポカポカ陽気でセーター1枚で園内を回ることが出来ました。園内では花々が木々から、そして草むらから一斉に吹き出してきた感があり、いよいよ春本番の候を迎えました。


園内の林の中で、春の訪れを謳歌するかのように白いコブシ(辛夷;モクレン科モクレン属)の花が、青空の中で乱舞していました。「北国の春」の歌にもあるように、故郷の東北地方では「雪解け」とか「コブシの花」は春の訪れのシンボルになっています。

開花が気になるソメイヨシノはもう少しの辛抱になりますが、ソメイヨシノ以外のいろんなサクラ(バラ科)の花が咲き出していました。これは、濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与えるカンヒザクラ(寒緋桜)です。サクラの原種の一つで沖縄に自生します。

伊豆大島や伊豆地方に多く生息するカンザキオオシマ(寒咲き大島)です。このサクラの花はソメイヨシノと雰囲気が似ていて、白く清楚な花を咲かせます。オオシマザクラは野生種のサクラの一種で、花と葉を同時に付けます。また、この時期に食する桜餅はこのサクラの若葉を塩漬けにしたものを使用します。

カンザキオオシマの隣では、早春桜があでやかなピンク色の小振りな花を一斉にに咲かせ、華やいだ雰囲気を醸し出していました。この早春桜は、富士山や箱根などの山地に分布する富士桜(マメザクラともいう)の園芸種です。この他、チョウジザクラも開花していました。

なかなか見かけないチョウジザクラ(丁字桜;別名メジロザクラ)ですが、質素な花を付けていました。花を横から見ると丁字や丁子(クローブ)のように見えることが名の由来とされています。チョウジザクラはサクラの野生種の一つで、本州の東北以南の太平洋側に見られます。

黄金色の花々も目立ってきました。サンシュユ(山茱萸;ミズキ科)の花が見頃になってきました。小さな黄金色の花が点々と木枝の至るところから吹き出している感じです。サンシュユは木全体が黄金色に輝くことからハルコガネバナとも呼ばれます。中国、朝鮮半島原産の落葉小高木で、江戸時代中期に薬用として渡来したとのことで、秋に付ける赤い実は、滋養・強壮の薬効があります。

庭園のすぐ近くの梅林に向かうと、紅梅、白梅はそろそろ終盤の時期が近づいていましたが、梅林の中央部にあるサンシュユの大木が黄色に輝いていて、色の三重奏を楽しむことができました。

これはトサミズキ(土佐水木;マンサク科トサミズキ属)です。満開になり、無数の黄緑っぽい花が一斉に枝から吹き出すように咲き出していました。トサミズキは高知県原産で、蛇紋岩地帯や石灰岩地帯などに生育する落葉低木です。

まだ冬木立のままのメタセコイア林の近くで、朝鮮半島原産の落葉低木のチョウセンレンギョウ(朝鮮連翹;モクセイ科レンギョウ属)が満開になっていました。まばゆいほどの黄色の四弁花が枝垂れて咲いていました。メタセコイアはもうすぐ新緑の彩りに変貌します。

ツツジの仲間もにぎやかになってきました。江戸時代の養生所時代に用いられた古井戸の近くで、上品な淡い赤紫色のゲンカイツツジ(玄海躑躅;ツツジ科)の花が美しく咲いていました。まるで絹の布地でつくったかのようのふわっとしています。

中国原産のホンコンドウダン(香港満天星;ツツジ科ドウダンツツジ属)も花を付け始めました。蝋細工のように釣り下がる釣鐘形の花のピンクと白の色合いが美しく、ピンクシャンデリアの流通名が付いています。また、中国の旧正月頃に咲くことから、英名はチャイニーズ・ニューイヤー・フラワーとなっています。

木々の花々だけでなく、野の花も賑やかに咲き出してきました。これはスプリング・エフェメラルの代表格のカタクリの花です。群生地に足を運ぶと、期待通り薄い赤紫色のカタクリの花が秘やかにそして可憐に咲いていました。6枚の花びらが反り返っていて、まるで春の陽光の下で森の妖精たちが背中の羽根を羽ばたきながら遊んでいるようです。

2月中旬にぽつりと咲き出したユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)の清楚で可憐な白い花が一面に広がって咲いていました。メタセコイア林の近くに群生地があります。ユキワリイチゲもスプリング・エフェメラルの野の花です。

ハナダイコン(花大根;アブラナ科)の紫色の花が、園内の柴田記念館の周りの空き地に群生しています。辺り一面を花で覆いつくす様は見事です。欧米では伝統のある園芸植物です。

ハナニラ(花韮;ユリ科イフェイオン属)の清楚な白い花が、園内の各所の草むらに咲き出しました。南米原産で明治時代に観賞用として帰化しました。花の形はアマナに似ていることからセイヨウアマナ(西洋甘菜)とも呼ばれます。

この時期におなじみの黄色のタンポポ(蒲公英;キク科タンポポ属)の花が増えてきました。すぐ隣には白いハナニラ(花韮;ユリ科イフェイオン属)の花、青紫色のオオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)などがみられ、この小さいエリアだけでまるで春の野の花の小宇宙のようです。

さらに野の花が続きます。これはタチツボスミレ(立坪菫;スミレ科スミレ属)。薄紫色の可憐な花を園内のあちこちに見かけました。わが国では日当たりのよい道端や草原、林地などに普通に見られます。

ヒメオドリコソウ(姫踊り子草;シソ科オドリコソウ属)。小さなピンク色の花を付けています。花の形が踊り子に似ていることから、この名が付いています。肥えた土地を好みあちこちに生えています。周りには米粒のように小さな白い花が点々と咲いています。

一面に咲き広がる米粒のように小さな白い花はコゴメイヌノグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属 )です。園内の随所に広がっています。花の形はオオイヌノフグリと似ていますが大きさが全然違います。元々小石川植物園に研究用に持ち込まれたものが広がって野生化したそうです。

やはり米粒のように小さいハコベ(繁縷;ナデシコ科ハコベ属)の白い花も見つけました。各地の路傍や畔などに自生する代表的な野草で、ハコベラとして春の七草の一つに数えられています。

園内の一角に群生地があるオオキバナカタバミ(大黄花片喰;カタバミ科カタバミ属)の黄色の花が増えてきました。ふつうのカタバミと違い、葉に紫色の斑点があるのが特徴です。
園内のヨメイヨシノの開花も間近となり、いよいよ本格的な春の訪れになりました。時間を見つけて存分に楽しみたいと思います。
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