ソメイヨシノの終演とともに新緑の芽吹きが始まる
連日の初夏の陽気と打って変わり花冷えのする週末、小石川植物園を訪れました。この時期は1週間で風景が大きく変わります。
今年も私たちの心を魅了してくれたソメイヨシノでしたが、満開が過ぎあっという間に終幕に向かっていました。その一方では、木々の新緑の芽吹きが一斉に始まりました。まさに植物たちの生命の躍動を実感させられます。
以下、園内の様々なこの時季ならではの風景を紹介します。
植物園の入口から日本庭園に向かう途中にある池の周りの風景です。満開のサクラが散り始め、池面に花びらが広がっています。一方、サクラの隣りに生えるイロハモミジが鮮やかな新緑に染まっていました。満開のサクラから新緑の芽吹きへと主役が代わりつつあります。
サクラ並木のソメイヨシノは満開が過ぎてしまいました。あと1週間も経つと葉桜に変貌しています。花冷えのする週末でしたが、まだ少し残っているサクラの花を惜しむかのように、いろんなグループが集い樹下で談笑の輪が広がっていました。
日本庭園にある大きな広場にもサクラの大木が生えています。この場所でも、多くの家族連れ、友だちどうしなどで和やかに賑わっていました。
ソメイヨシノはそろそろ終演ですが、まだサトザクラ群に属するいろんなサクラの花が元気に咲いていました。サトザクラは主に観賞用にオオシマザクラを基にしてヤマザクラ、エドヒガン、カスミザクラ、マメザクラなどを掛け合わされた数多くの園芸品種のことをを総称していいます。
これはチョウシュウヒザクラ(長州緋桜)@サトザクラです。先週はまだ蕾の状態でしたが、この日は艶やかな赤紫色に咲き広がっていました。明治時代に荒川堤から全国に広まったとのことで、長州との関係は不明。
紫桜@サトザクラ。周りの新緑を背景にして、うすい赤紫色(いわゆる桜色)に染まるサクラの花が満開になっている様は見事に美しい。見た目の印象としては、長州緋桜とよく似ています。
雨宿@サトザクラ。白く大きな八重咲きのサクラの花が数輪づつ群れになりながら枝垂れていました。まるで大きな雨だれが滴り落ちているようです。
撫子@サトザクラ。うすい赤紫色の八重咲きのサクラの花が優雅に咲いていました。花弁の先に細かい切れ込みがあるのが野の花のナデシコ(撫子)に似ていることは名の由来とのこと。
染井匂@ソメイヨシノ。ソメイヨシノの園芸品種で、まだ小柄な桜の木ですが、白い花が満開に咲き広がると見事なものです。この桜の木の下にも人の輪がありました。
新緑に覆われたイヌザクラ(犬桜)。花芽が点々と付いていますが、4月下旬以降に白いブラシ状の花を咲かせます。イヌザクラはバラ科サクラ属の植物ですが、いわゆるサクラ(サクラ属サクラ亜属サクラ節)の仲間とは少し異なります。花の形も相当違います。
園内ではいろんな大木の鮮やかな新緑も楽しむことが出来ました。これは深い森林部に生えるイロハモミジの高木。壮観な眺めに圧倒されます。晩秋には美しく紅葉します。
イロハモミジの新緑の中に点々と付いている赤い粒のようなものは花穂になります。暗赤色の花が垂れ下がって付いています。
フウ(楓;マンサク科フウ属)の木にも新緑が芽生えてきました。フウは中国、台湾原産の落葉高木で樹脂の香りがいい。葉の形が、同じ漢字名をもつカエデに似ています。
新緑のシナサワグルミ(クルミ科サワグルミ属)の大木です。中国原産の落葉高木で公園樹、街路樹に用いられます。
冬木立だったイチョウ(裸子植物)の巨木にも新緑が吹き出してきました。よく見ると、枝先に小さなイチョウの新葉が何枚かずつまとまって付いていて、その下に雄しべが多数連なっています。花粉は風で散布されます。
園内の一角に、美しく紫色に染まった風景が出現していました。鮮やかな紫色の正体はハナズオウ(花蘇芳;マメ科)です。勢いよく花が咲いています。ハナズオウは江戸時代に中国から渡来しました。
ハナズオウの隣ではオオリキュウバイ(大利休梅;バラ科ヤナギザクラ属)が真っ白に満開になっていて、両者のコラボが美しい風景を醸し出しています。オオリキュウバイは、中国原産で日本には明治時代に渡来したリキュウバイの変種です。茶人の千利休との関係は不明。
ホンカイドウ(本海棠;バラ科リンゴ属)の樹木が満開になっていました。この樹木は名札が無かったので長年ズミ(酸実;バラ科リンゴ属)だと思っていましたが、最近になってホンカイドウの名札がつきました。正体が判明してスッキリしました。
ヤマブキ(山吹;バラ科ヤマブキ属)の花が満開になって咲き連なっていました。ヤマブキは本州の山地に自生する落葉低木で、まさに絵の具のヤマブキイロと同じ鮮やかな黄色の花を咲かせます。
木々の様子から草むらに目を転じます。薄い赤紫色のイカリソウ(メギ科イカリソウ属)の花を見つけました。ふわふわと遊泳しているような感じの花ですが、名前は、花の形が錨に似ていることに由来します。イカリソウは元々薬草で、滋養・強壮に効力があるということで、薬草園で丁寧の育てられています。
全国の山野に生える多年草のセントウソウ(仙洞草;セリ科セントウソウ属)。小さく細かな白い花が路傍の草むらのあちこちに咲いていました。ニンジンのような葉が特徴的です。
中国原産の一年草のセリバヒエンソウ(芹葉飛燕草;キンポウゲ科デルフィニウム属)。明治時代に渡来し、現在では関東地方で野生化しているとのこと。青紫色の花の姿が燕の飛ぶ姿を思わせることからこの名が由来。
この時季は木々や野の花などがめまぐるしく躍動するので、目が離せません。植物園の散策の楽しみが倍加します。
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