あのすさまじい被害をもたらした東日本大震災の発生 (2011.3.11)からまもなく5年になり、テレビでは連日復興状況の特集番組が放映されています。かなり復興が進展しているものの、被災地の皆さんが元の生活を取り戻すにはまだまだ時間がかかりそうです。まさに未曾有の大災害だったことが再認識させられます。
週末のこの日は春暖の陽気で小石川植物園内を気持ちよく散策してきました。園内では、真紅色のカンヒザクラが満開になっていて、壮観な眺めでした。いつもこの時期に満天星のように大空を覆いつくす光景は、東日本大震災の犠牲者の鎮魂花のように思えてなりません。
春の野の花もハナニラ、オオイヌノフグリ、コスミレ等々、本当に賑やかに咲き出してきました。

濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与えるカンヒザクラ(寒緋桜)が満天星のように大空に広がっていました。カンヒザクラはサクラの原種の一つで沖縄に自生します。東日本大震災が発生したこの頃にいつも満開になります。

満開の花は鳥たちの大好物のようです。鳥の多くは大食漢のヒヨドリなのですが、この中にインコも交じっていました。野生のインコとは思えないので、どこからか逃げ出して棲みついたのでしょうか。

3月末頃に満開になるソメイヨシノが真打だとすれば、カンヒザクラも含め前座のサクラの花が次々に登場します。このあでやかなピンク色の小振りな花が咲き出したのは早春桜です。ピンク色なので華やいだ雰囲気を醸し出してくれます。この早春桜は、富士山や箱根などの山地に分布する富士桜(マメザクラともいう)の園芸種になります。

このひそやかな落ち着いた感じのシナミザクラ(支那実桜)もサクラの仲間です。中国原産で実が食用になるので。カラミザクラ(唐実桜)の別名があります。中国では桜桃と呼ばれます。同じ食用種のサクラとしてはセイヨウミザクラ(西洋実桜)があり、わが国ではいわゆるサクランボとして栽培されています。シナミザクラの実は若干酸味が強いとのこと。

黄金色の花々も目立ってきました。例年より少し早めですが、サンシュユ(山茱萸;ミズキ科)の花が見頃になってきました。小さな黄金色の花が木枝の至るところから吹き出している感じで、遠くから見ると林間の空間で細かく点描されているかのようです。中国、朝鮮半島原産の落葉小高木。江戸時代中期に薬用として渡来したとのことで、秋に付ける赤い実は、滋養・強壮の薬効があります。

マンサクの花々も黄金色を放っています。これはアテツマンサク(阿哲満作;マンサク科マンサク属)です。アテツの名は最初に発見された岡山県阿哲地方にちなんで付けられています。

メタセコイア林の近くでは同属で北米原産のハヤザキマンサク(早咲満作;マンサク科マンサク属)も咲いていました。ハヤザキマンサクの花は少し橙色が強く、小さくまとまって咲きます。

園内の梅林では、まだ新しいウメの花が次々と咲き出していて、まだまだ賑やかです。1月から3月までの長い期間、ウメの香りと花を楽しむことができます。

24節気の啓蟄の頃になると、虫たちだけでなく野の花も続々と地面から顔を出してきます。これはハナニラ(花韮;ユリ科イフェイオン属)。清楚な白い花が咲き始めました。ハナニラの花の形はアマナに似ていることからセイヨウアマナとも呼ばれます。これから園内の各所に咲き広がります。

落ち葉の中から可憐な白い花が咲き出しているのは春の妖精の仲間のユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)。先月数輪だけ咲き出していたが、この日は多くの花が顔を出してきました。

星くずのように可憐な青い小さな花のオオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)が咲き広がってきました。この中にヒメオドリコソウ(姫踊り子草;シソ科オドリコソウ属)も見えます。

コゴメイヌノグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属 )が米粒のように小さな白い花を咲かせていました。花の形はオオイヌノフグリと似ていますが、ずっと小振りです。元々小石川植物園に研究用に持ち込まれたものが広がって野生化したそうです。

先端に緑色の花序を形成するトウダイグサ(燈台草;トウダイグサ科トウダイグサ属)も多く見かけました。燈火の皿に見立てて和名が付いています。茎や葉を傷つけると白い乳液を出し、全草にわたり有毒。

散策路でタチツボスミレ(立坪菫;スミレ科スミレ属)の花が咲いていました。薄紫色の可憐な花が園内のあちこちに咲き出します。わが国では平地から低山に分布し、日当たりのよい道端や草原、林地などに普通に見られます。

ヨーロッパから東アジアに分布する帰化植物のミチタネツケバナ(道種漬花;アブラナ科タネツケバナ属)の花も所々で見かけました。茎には葉がほとんど付かず、根生葉がロゼットをつくっています。
これ以外にも、色んな花々を見つけました。これから園内の散策が快適で楽しい時期になります。
…> 季節のスケッチ(28年3月)
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