活躍するMEMS(メムス)~身の回りでもSociety5.0でも
MEMS(メムス)というと聞き慣れない用語かも知れませんが、実はモバイル機器、自動車等の私たちの身の回りの製品の中に数多く組み込まれている必須デバイスです。MEMSとはMicro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略で、半導体製造技術やレーザー加工技術等、各種の微細加工技術を用いて微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に組み込んだ米粒や豆粒ほどの大きさのデバイスのことを言います。
MEMSと半導体デバイス(LSIなど)はどちらも同じような大きさで外見上よく似ていますが、働きが少し違います。すなわち、半導体デバイスは入出力が電気信号で、人間の頭脳のような高速計算や大容量の記憶などの働きに秀れていて、コンピュータの中枢デバイスとなっています。一方、MEMSは入出力が電気信号に限定されず、エネルギーや機械変位、物理量など多岐に亘り、人間の五感器官のようなセンシング(センサ)、筋肉部のような動作(アクチュエータ)などの様々な働きをします。
(図1)MEMSの概念図

例えば、モバイル機器のスマホでは高性能化・多機能化を実現するため、モーションセンサ、MEMSマイクロフォン、無線センサ、環境センサなど盛沢山のMEMSがスマホ内の狭小な空間の中にぎっしりと組み込まれていて、MEMSのかたまりのようなものです。また、自動車も同様です。エンジン制御のための圧力センサ、姿勢制御のためのジャイロ、エアバック感知のための加速度センサなど多くのMEMSが使われていますし、今後は自動運転のための各種MEMSセンサが増大していくと予想されます。
(図2)スマホで使われるMEMS

さらには、数次のMEMSに係る先端技術開発プロジェクトの研究成果等が基盤技術として蓄積・活用され、スマホ、自動車に限らず多くの製品やシステムへの先進MEMSの応用が広がっています。
(図3)広がる先進MEMSの応用

一方、政府の第5期科学技術基本計画においてSociety5.0(超スマート社会)の実現に向けた取り組みが提唱されていますが、Society5.0の実現には近年注目を集めるIoT(あらゆるものがインターネットでつながる)システムが欠かせません。このIoTシステムの中でもMEMSが重要な役割を果たしていくことになります。
例えば、工場を対象としたIoTシステムでは、実世界(工場現場)の状況を適確かつ迅速にデータ収集(センシング)し、収集したデータをクラウド上に集め、ビッグデータ技術やAI(人工知能)を用いて設備管理や生産管理に役立つ経営情報に変換する、そして経営情報を実世界(工場管理、経営)にフィードバックする、といった流れになります。この流れの中で実世界とクラウドを結ぶセンシングの局面においてMEMSが主役となります。
すなわちMEMSを用いた多様な産業用途のセンサ、環境からエネルギーを自力で調達する自立電源、データを無線で飛ばす無線モジュールなどをまとめて搭載した小型センサ端末(これもMEMSのかたまり)が工場の各所に配置され、工場の様々な稼働状況をリアルタイムにモニタリングし、クラウドに収集データを送り出します。
今年度からNEDO委託事業の高効率スマートセンシングシステム(LbSS)の研究開発も始まりました。近い将来Society5.0を支え、元気に活躍するMEMSの姿を見ることができるようになります。乞うご期待。
(図4)Society5.0/IoTシステムで活躍するMEMS

注)本稿は、JRCMニュース(2016年12月号)への寄稿文に加筆修正を加えたものです。
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