« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »

2019年9月

2019年9月29日 (日)

小石川植物園に自生する彼岸花、ようやく月末に満開



 小石川植物園では、いつも秋の彼岸の頃に妖美に燃えるようなヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)が咲き広がります。しかし今年は残暑が長く続いたためか、例年より1週間ほど遅れて9月末にようやく満開になりました。以下ヒガンバナを含め9月中下旬の小石川植物園の風景になります。

(真赤に染まるヒガンバナ)

 日本全域に分布するヒガンバナは全て遺伝的に同一の三倍体のため、種子で増えることができず、球根を増やしながら広がります。ヒガンバナ群生地のメタセコイア林付近の林地をはじめ、園内の随所が真赤に染まります。


 ヒガンバナは鱗茎にアルカロイドを多く含み、全草が有毒植物ですが、アゲハチョウにとってはヒガンバナの蜜が好物のようです。花に集っているアゲハをよく見かけます。


 園内に自生するヒガンバナは大部分が赤花ですが、白花曼殊沙華とも呼ばれる白い花も少し交っています。


 ヒガンバナは多くの呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の別名が最も有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。


 一方、わが国では墓地などにも植えられ、ちょうど秋の彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。先祖の霊を弔う気持ちにマッチしています。


 ヒガンバナといえば奥武蔵の巾着田が有名ですが、規模は小さいものの小石川植物園に自生するヒガンバナも野趣たっぷりで、なかなか見応えがあります。


 園内ではヒガンバナ以外にもいろんな季節の花々が見られました。これはハギ(萩;マメ科ハギ属)の赤紫色の花です。秋の七草の一つですが、草本ではなく木本に属します。小さな花を細い枝に多数つけて枝垂れて咲いています。

(ヒガンバナ以外の花々)

 八重咲きのスイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)。一日花で、白色から薄赤色に徐々に変わってしぼみます。


 中国原産の落葉低木トウフジウツギ(唐藤空木;ゴマノハグサ科)。残っている薄紫色の花穂にチョウが集っています。


 フクロミモクゲンジ(袋実木欒子; ムクロジ科モクゲンジ属)の黄色の花が盛んに咲いていました。細かい花がハラハラと降り注ぎ、木の下の地面は黄金色のオガクズを敷き詰めたようになります。


 その後、9月下旬には花の後にベージュ色の袋実が付いていました。


 チベットの高地に自生する多年草シュッコンソバ(宿根蕎麦;タデ科ソバ属)。白い花が盛んに咲いていました。普通のソバの花と似て、質素な趣があります。地下に黄赤色の根茎を残し越冬する。


 植え込みなどを覆うつる性植物のヤブガラシ(藪枯らし;ブドウ科ヤブガラシ属)。アゲハが盛んに蜜を吸っています。


 生命力が強く灌木をすっぽりと覆うつる性多年草のクズ(葛;マメ科クズ属)。赤紫色の花を付けていました。

(台風15号による倒木被害)




 9/9早朝に首都圏を通過した台風15号の強風の影響で、千葉県全域で長期間停電が続くなどの大きな被害がもたらされましたが、小石川植物園でも多くの大樹・高木の倒木被害が見られました。左から、アワブキ(泡吹;アワブキ科アワブキ属)、ギンヨウボダイジュ(銀葉菩提樹;アオイ科シナノキ属)ユリノキ(百合の木;モクレン科)、タイザンボク(泰山木;モクレン科モクレン属)。やむを得ないこととは言え、痛ましい限りです。


 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2019年9月)


| | コメント (0)

2019年9月 7日 (土)

残暑続く小石川植物園、秋の気配も進行


 残暑続く9月初旬(9/7)、久しぶりに小石川植物園を回ってきました。炎暑下の8月は散策を避けていましたので、2か月ぶりになります。残暑が残っていることもあって、夏の花木のサルスベリの花が咲き誇っていました。その一方で、ススキ、オミナエシ、シュウカイドウなどの秋の花々も見かけ、秋の気配も徐々に進行していました。

(サルスベリ)

 中国南部原産の落葉中高木のサルスベリ(ミソハギ科サルスベリ属)。代表的な夏の花木で花期が長く、百日紅の別名があります。


 ピンク色、うす紫色、白色など色とりどりのサルスベリの花々がまだ盛んに咲いていました。


 九州や南西諸島に分布する落葉高木のシマサルスベリ(ミソハギ科サルスベリ属)が立ち並んでいます。


スベスベした白い木肌が目立ちますが、高木の頂付近をよく見ると、白い花が咲いていました。

(東京古型・変化アサガオ)

 数多くのアサガオの系統を総合的に研究するナショナルバイオリソースプロジェクト「アサガオ」の協力によるアサガオの標準系統「東京古型」と変化咲きアサガオの展示が園内でなされていました。


 標準系統「ムラサキ」(青鍬型葉濃紅紫丸咲)。由緒正しいアサガオになります。


 大輪品種「月夜野」(黄斑入蝉葉黒鳩縞丸咲)。


 立田遺伝子(柳)の弱いアレル(青斑入立田葉藤色切咲)になります。

(秋の野の花)

 秋の気配を感じる花々を多く見かけました。これは秋の七草の一つオミナエシ(女郎花;スイカズラ科オミナエシ属)。黄色の花が咲き始めていました。


 山野に生えるオトコエシ(男郎花;スイカズラ科オミナエシ属)の白い花です。オミナエシに比べて質実な感じがします。


 お盆の頃に咲き出す質素な感じのミソハギ(禊萩;ミソハギ科ミソハギ属)の花がまだ咲いていました。


 中国原産の多年草シュウカイドウ(秋海棠;シュウカイドウ科シュウカイドウ属)の薄い赤紫色の清楚な感じの花。


 秋の季節の風物詩のススキ(芒、尾花;イネ科ススキ属)の穂がたなびいています。秋の七草の一つです。


 暖地の海岸近くに生育するシマダンチク(縞縞暖竹;イネ科ダンチク属)。長い花穂が付いています。


 全国に分布し、低地から山間部の草地から森林周辺に生える多年草ヌスビトハギ(盗人萩;マメ科マメ亜科ヌスビトハギ属)。小さく細かい花を沢山付けています。花の後の節果の表面にはカギ状の毛が密生していて、衣服に付着します。

(つる性草本)

 この時季になると蔓性の草本が目立つようになります。これはつる性半低木(木質化した多年草)のセンニンソウ(仙人草;キンポウゲ科センニンソウ属)。仙人のヒゲのような多数のふわふわとした白色の花が群がっています。


 つる性半低木のコボタンヅル(小牡丹蔓;キンポウゲ科センニンソウ属)。ギザギザした3つの小葉をもちます。花が似るセンニンソウの葉はギザギザがないハート形です。


 ヤブガラシ(藪枯らし;ブドウ科ヤブガラシ属)。全国の道端、林縁、荒れ地などに普通に生えるつる性多年草で、植え込みなどを覆っています


 日当りのいい草やぶや樹木などに絡みつくヘクソカズラ (屁糞葛;アカネ科ヘクソカズラ属)。花自体はかわいらしいのですが、葉や茎に悪臭があることから和名が由来。


 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2019年9月)


| | コメント (0)

2019年9月 2日 (月)

優美で静かに踊る越中八尾おわら風の盆



 越中富山にある人口約2万人の八尾の町で、毎年9月初めに「おわら風の盆」というお祭りが開催されます。約20万人もの大勢の観光客が訪れる人気のお祭りです。是非一度は見てみたいということで、夫婦バス旅行で出かけてきました。風の盆の優美で静かな踊りに大感激。バスの長旅の疲れも吹っ飛びました。



 今回は新宿からのバス旅行で午前11時出発で越中八尾着が午後6時過ぎという長旅で大変な行程でした。全国各地から多くの観光バスが集まり、駐車場は大混雑。井田川沿いの駐車場を出て小高い丘を登っていきます。



 井戸川の橋には風の盆の欄干(上)が設けられていて、ムードが高まります。みんなでゾロゾロと丘を登り切ると八尾の町中に入ります(下)。風の盆は町中の流しもあるのですが、このツアーは演舞場でじっくりと見物するコースです。



 演舞場は小学校の校庭に設営されていて、雨天でも大丈夫なようになっています。ただ、観客席は屋根がありませんので、演舞場入口で手渡される雨がっぱを被っての見物になります。幸いにも、この日は雨がなかったので幸運でした。午後7時から始まった風の盆。暗闇の中に浮かび上がった踊りを間近に観ることができ、大迫力でした。



 二百十日(9月初旬)の初秋の風が吹く頃、おわら風の盆は幕開けを迎えます。昔から収穫前の稲が風害に遭わないよう風を鎮め、豊作を祈願する祭りが「風の盆」の由来になります。期間中、町の老若男女が総出で踊り続けるそうです。



 演舞場からの帰りに町流しの踊りに出会いましたが、雑踏と暗闇の中でよく見えません(上)。やはり演舞場での見学が一番です。帰りの夜の闇の中に橋の欄干や丘の斜面に建つ家々のライトアップ(下)も印象的でした。風の盆を観た後は約2時間かけて南下し、飛騨高山のホテルに宿泊。



 翌日、飛騨高山の城下町をブラブラと散策してきました。城下町は商人の町として発達した上三之町を中心に、江戸末期から明治期に建てられた屋敷等が軒を連ねる古い町並み(上)です。景観を維持するために電線をすべて軒下配線にするなど、街並みがきれいに保存されています。天領時代の代官・郡代の政務所の高山陣屋(下)も公開されています。大門や郷倉、天朝御用の看板を残し、現在は郷土博物館となっています。


 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2019年9月 おわら風の盆)


| | コメント (0)

« 2019年8月 | トップページ | 2019年10月 »