小石川植物園に自生する彼岸花、ようやく月末に満開
小石川植物園では、いつも秋の彼岸の頃に妖美に燃えるようなヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)が咲き広がります。しかし今年は残暑が長く続いたためか、例年より1週間ほど遅れて9月末にようやく満開になりました。以下ヒガンバナを含め9月中下旬の小石川植物園の風景になります。
(真赤に染まるヒガンバナ)
日本全域に分布するヒガンバナは全て遺伝的に同一の三倍体のため、種子で増えることができず、球根を増やしながら広がります。ヒガンバナ群生地のメタセコイア林付近の林地をはじめ、園内の随所が真赤に染まります。
ヒガンバナは鱗茎にアルカロイドを多く含み、全草が有毒植物ですが、アゲハチョウにとってはヒガンバナの蜜が好物のようです。花に集っているアゲハをよく見かけます。
園内に自生するヒガンバナは大部分が赤花ですが、白花曼殊沙華とも呼ばれる白い花も少し交っています。
ヒガンバナは多くの呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の別名が最も有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。
一方、わが国では墓地などにも植えられ、ちょうど秋の彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。先祖の霊を弔う気持ちにマッチしています。
ヒガンバナといえば奥武蔵の巾着田が有名ですが、規模は小さいものの小石川植物園に自生するヒガンバナも野趣たっぷりで、なかなか見応えがあります。
園内ではヒガンバナ以外にもいろんな季節の花々が見られました。これはハギ(萩;マメ科ハギ属)の赤紫色の花です。秋の七草の一つですが、草本ではなく木本に属します。小さな花を細い枝に多数つけて枝垂れて咲いています。
(ヒガンバナ以外の花々)
八重咲きのスイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)。一日花で、白色から薄赤色に徐々に変わってしぼみます。
中国原産の落葉低木トウフジウツギ(唐藤空木;ゴマノハグサ科)。残っている薄紫色の花穂にチョウが集っています。
フクロミモクゲンジ(袋実木欒子; ムクロジ科モクゲンジ属)の黄色の花が盛んに咲いていました。細かい花がハラハラと降り注ぎ、木の下の地面は黄金色のオガクズを敷き詰めたようになります。
その後、9月下旬には花の後にベージュ色の袋実が付いていました。
チベットの高地に自生する多年草シュッコンソバ(宿根蕎麦;タデ科ソバ属)。白い花が盛んに咲いていました。普通のソバの花と似て、質素な趣があります。地下に黄赤色の根茎を残し越冬する。
植え込みなどを覆うつる性植物のヤブガラシ(藪枯らし;ブドウ科ヤブガラシ属)。アゲハが盛んに蜜を吸っています。
生命力が強く灌木をすっぽりと覆うつる性多年草のクズ(葛;マメ科クズ属)。赤紫色の花を付けていました。
(台風15号による倒木被害)
9/9早朝に首都圏を通過した台風15号の強風の影響で、千葉県全域で長期間停電が続くなどの大きな被害がもたらされましたが、小石川植物園でも多くの大樹・高木の倒木被害が見られました。左から、アワブキ(泡吹;アワブキ科アワブキ属)、ギンヨウボダイジュ(銀葉菩提樹;アオイ科シナノキ属)ユリノキ(百合の木;モクレン科)、タイザンボク(泰山木;モクレン科モクレン属)。やむを得ないこととは言え、痛ましい限りです。
詳しくは
…> 季節のスケッチ(2019年9月)
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