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2019年10月

2019年10月24日 (木)

金木犀が香る10月下旬の小石川植物園

 強風で房総半島に大停電を引き起こした先月の台風15号に引き続き、今月中旬に襲来した台風19号は、大雨により東日本各地の河川を氾濫させ、甚大な被害をもたらしました。季節外れのスーパー台風には本当に驚かされました。

 その後、10月下旬になってようやく秋らしい日々が続くようになり、キンモクセイが香る小石川植物園を楽しんできました。

 園内のキンモクセイ(金木犀;モクセイ科モクセイ属)の木々に鮮やかなオレンジ色の花がちょうど所狭しと咲き出していて、満開になっていました。


 近づいてみると、あの金木犀の秋の香りが漂っています。キンモクセイの花期は非常に短いので、うまく狙いを定める必要があります。


 キンモクセイの近縁種のウスギモクセイ(薄黄木犀;モクセイ科モクセイ属)。淡黄色の花がまだ咲き残っていました。花の色はキンモクセイより薄く、香りも乏しいのが特徴です。


 オオモクセイ(大木犀;モクセイ科モクセイ属)の白い花。メタセコイア林の近くで見かけました。花の形状は近縁種のキンモクセイに似ていますが、香りはありません。



 秋の季節の風物詩のサザンカ(山茶花;ツバキ科ツバキ属)の花がポツポツと咲き出しました。上の赤花には三国紅、下の白花には雪山というサザンカの品種名が付いています。年末にかけていろんなサザンカの花を楽しむことが出来ます。


 フサフジウツギ(房藤空木;ゴマノハグサ科フジウツギ属)。残っている淡紫色の房状の花穂にチョウが集い、盛んに蜜を吸っています。


 日当たりのよい原野などによく見られる落葉小高木クサギ(臭木;シソ科クサギ属)。ピンク色の星形のガクの中心に紺色の種子が付いています。



 園内の木々の風景です。上はツツジ園からの眺望(イチョウやウルムス・プロセアの大樹)、下は園入口付近に立ち並ぶメタセコイア林ですが、いずれもようやく色づきが始まっていました。


 巨木ゾーンに立ち並ぶ大樹、巨樹も同様です。これは北米中部原産の落葉高木のユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)の高木です。


 スズカケノキ(鈴懸の木;スズカケノキ科スズカケノキ属)の大樹。ヨーロッパ南東部からアジア西部原産の落葉広葉樹。


 アメリカスズカケノキ(スズカケノキ科スズカケノキ属)の大樹。北米原産の落葉広葉樹でスズカケノキの近縁種です。


 木々によっては紅葉・黄葉が少しづつ進んでいました。これは北米原産の落葉高木のハナミズキ(花水木; ミズキ科ミズキ属)。


 ウダイカンバ(鵜松明樺;カバノキ科カバノキ属)。日本の中部以北から北海道、千島列島にかけて生育する落葉広葉樹。


 ヌマミズキ(沼水木;ヌマミズキ科ヌマミズキ属)。北アメリカの東部から南東部に広く分布する落葉高木。


 いろんな木の実も見かけました。これはピラカンサ(バラ科トキワサンザシ属、品種名:ローズデール)のたわわな実。年末にかけて真赤になります。


 山麓の湿地や湿った原野に生える落葉低木のコムラサキ(シソ科ムラサキシキブ属)が紫色の実をつけていました。


 ツクシカイドウ(筑紫海棠;バラ科リンゴ属)の枝先に数多くの赤い実が付いていました。九州に分布していたが、現在は絶滅危惧種。


 全国の野山に自生する落葉高木のケンポナシ(玄圃梨;クロウメモドキ科ケンポナシ属)。小さな梨のような実が付いています。



 珍しい花に出会いました。紀伊半島に自生するキイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑;ユリ科ホトトギス属)です。シダ園の石垣の上部から垂れ下がり黄色い花を下向きにつけていました。同じホトトギス属のタイワンホトトギスとは花の形状が少し違いますが、花の内側に斑点がついています。


 中国からの帰化植物で九州、四国、沖縄などで自生するショウキズイセン(鍾馗水仙;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)。黄色の花が少しだけ咲き残っていました。形状はヒガンバナとそっくりで、黄花彼岸花とも言われる。9月のヒガンバナより遅れて10月頃に咲き出します。


 トネアザミ(利根薊;キク科、別名タイアザミ)の花の蜜を求めて昆虫が集っています。10月になってから咲き出す晩秋の花です。

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2019年10月 9日 (水)

10月上旬の小石川植物園、秋晴れ下の季節の花々


 10月に入ってもしばらく30℃前後の蒸暑い日が続いていましたが、上旬のこの日10/9は爽やかな秋晴れが広がりました。週末には強大な台風19号が襲来しそうなので、この日急いで小石川植物園を回ってきました。園内では青空の下、シュウメイギク、タイワンホトトギス、シオンなどの季節の花々が咲いていました。


 ソメイヨシノ(染井吉野)の桜並木の樹下の風景です。少しづつ落葉する黄葉次第に増えています。


 一日花のスイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)。青空の下、朝咲きの白い花と萎んだ赤い花が混在しています。


 巨木・大木が数多く立ち並ぶ巨木ゾーンの風景です。夏木立から秋風景へと少しづつ変容しています。


 ヨーロッパ南東部からアジア西部原産の落葉広葉樹のスズカケノキ(鈴懸の木;スズカケノキ科スズカケノキ属)。スズカケノキもまだ緑葉の装いです。


 しかし、スズカケノキの木の下を見渡すと鈴のような実が数多く落ちていました。


 秋の草花を多く見かけました。これは多年草のシュウメイギク(秋明菊;キンポウゲ科イチリンソウ属)。可憐な白い花が優雅に咲いています。


 沖縄や台湾に分布する多年草タイワンホトトギス(台湾杜鵑草;ユリ科ホトトギス属)。花の紫色の斑点が鳥のホトトギスの胸模様に似ています。


 シナノアキギリ (信濃秋桐;シソ科アキギリ属)。長野県松原湖周辺と群馬県の一部でのみ自生するわが国の固有種です。種の保全を図るため、小石川植物園が長野県の協力を得て移植したもの。


 コガネバナ (黄金花;シソ科タツナミソウ属)。青紫色の唇形の花が総状に咲いています。根の断面が鮮やかな黄色をしていることから和名が由来。


 秋の七草の一つのフジバカマ(藤袴;キク科ヒヨドリバナ属)。万葉の昔から日本人に親しまれてきた秋の野草で、まだ咲き残っていました。


 東アジア原産の多年草シオン(紫苑;キク科シオン属)。薄い紫色のシ花がゆらゆらと優雅に風にたなびいています。根、根茎に去痰作用、利尿作用があります。


 北米原産の帰化植物セイタカアワダチソウ(背高泡立草;キク科アキノキリンソウ属)。黄色の花がススキ(イネ科ススキ属)の穂と隣り合わせです。


 秋の草原に普通に見られる多年草のノハラアザミ(野原薊;キク科アザミ属)。オレンジ色のチョウが花から花へと飛び回っています。


 北米原産の多年草のシカクヒマワリ(四角向日葵;キク科テトラゴノセカ属)の花が僅かに咲き残っていました。


 シカクヒマワリの茎をよく見ると、和名の由来になっている四角の断面の形状がよく分かります。



 最後に、新温室の⼀般公開のニュースです。世界に誇る植物多様性の研究施設として整備し、社会に開かれた植物園へと発展させる Life in Green プロジェクトの一環として進められていた小石川植物園の公開温室の建て替え⼯事がまもなく終了し、いよいよ来月の11⽉19⽇より新温室の⼀般公開が始まるとのことです。オープンが楽しみです。


  詳しくは
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ノーベル化学賞に旭化成名誉フェローの吉野彰氏が受賞決定


 この週末に非常に強い台風19号の襲来するといった重苦しいニュースが流れていた最中、本年のノーベル化学賞に旭化成名誉フェローの吉野彰氏が受賞決定したという大変うれしいニュースが飛び込んできました。


  2019年ノーベル化学賞受賞の3氏(吉野彰氏は右)

 スウェーデン王立科学アカデミーは、本年のノーベル化学賞を、リチウムイオン電池を発明した旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71才)ら3氏に授与すると発表しました。小型で高性能の充電池として携帯型の電子機器を急速に普及させ、IT社会の発展に大きく貢献した功績が評価されたとのことです。

 リチウムイオン電池は、従来充電できる2次電池として使用されていたニッケル・カドミウム電池などの性能を飛躍的に高めたもので、この登場により携帯電話やノートパソコンなどの普及が加速され、現在のIT・モバイル社会の実現に大きな役割を果たしたと言えます。リチウムイオン電池の市場規模は世界で4兆円超に拡大しています。現在、電気自動車、スマートグリッドなどへの実用化も精力的に進められていて、未来社会のエネルギー基幹デバイスとしての活躍が大いに期待されます。

 今回の吉野彰氏の受賞により、日本人のノーベル賞受賞は、昨年の生理学・医学賞を受賞した本庶佑京都大特別教授に続いて27人目になります。また、企業研究者からの受賞は2002年の田中耕一氏(島津製作所)以来2人目です。日本人としては大変誇らしい気持ちです。

 しかしながら、最近は、資金面などでわが国の研究環境が年々厳しくなっていると言われています。わが国が引き続き世界の研究開発を先導していくことが出来るような枠組みを再構築してもらいたいと切望します。

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