東京の街路樹めぐり トチノキ、マロニエ、ユリノキなど
コロナの緊急事態宣言が延長となり、5月11日を過ぎても小石川植物園の閉園が続いています。このような状況下でも自然の営みは確実に進み、木々の新緑が日に日に濃くなってきます。そこで、いままでの植物めぐりのやり方を変え、東京の街中をブラブラし、街路樹を探訪することにしました。いつも目にしているはずの街路樹ですが、思いのほか色んな発見があり、トチノキ、マロニエ、ユリノキなどの樹木の花々も見かけました。今までは単に通り過ぎていただけだったことが分かりました。
(水道橋皀角坂 ベニバナトチノキ他)

まず最初に水道橋駅からお茶の水駅方面へ上る皀角坂(さいかちざか)に向かいました。

街路樹として何本ものベニバナトチノキ(紅花栃の木;ムクロジ科トチノキ属)が植えられています。ちょうど満開になった大きな薄紅色の円錐状の多くの花穂が高木の樹中に垣間見えます。皀角坂以外にも、この付近一帯にがベニバナトチノキが立ち並んでいます。ベニバナトチノキは北米原産のアカバナトチノキと欧州原産のセイヨウトチノキ(マロニエ)との交配種で、わが国では街路樹に多く用いられています。

皀角坂の坂下で、街路樹の中に満開になったセンダン(栴檀;センダン科センダン属)の高木も見かけました。木枝に淡紫色の小さな花が密集して咲いています。センダンの木は本州~沖縄に分布し、温暖な地域の海岸近くや森林辺縁に多く自生する落葉高木。

皀角坂の名前の由来になったサイカチ(皀莢;マメ科サイカチ属)の木があるはずだと思い、近辺をあれこれ探したところ、坂上の街路樹の中に一本のサイカチの木を見つけました。

サイカチは本州から九州の山野や川原に自生する日本固有種の落葉高木。この時期に淡黄緑色の小花を多数つき、秋にできる豆果の種子は漢方の皀角子として利尿や去痰の薬に用られる。
(浅草橋 マロニエ)

トチノキの仲間のマロニエ(ムクロジ科トチノキ属、セイヨウトチノキとも呼ばれる)の街路樹があるということで、水道橋から浅草橋まで足を伸ばしてきました。浅草橋駅の北側周辺の福井町通りや左衛門橋通りなどの道路に多数の紅白の花を咲かせるマロニエの街路樹が植えられています。

例年この時期はマロニエ祭りが開かれるのですが、コロナ禍の影響で昨年、今年と連続して中止になっています。ただ、祭りが中止でもトチノキに似た白い円錐状の花そのものは見ることができました。

欧州原産の落葉高木のマロニエはヨーロッパで街路樹や公園木などに多く用いられています。同属のトチノキやベニバナトチノキと比べると、葉が大きくふっくらとした感じです。

わが国の街路樹にはベニバナトチノキが多く用いられ、マロニエの植樹の例が少ないため、浅草橋の街路樹を管理する台東区に確認したところ、間違いなくセイヨウトチノキ(マロニエ)で、平成14年~18年にかけて植樹されたとのこと。貴重な正真正銘のマロニエ並木となります。
(桜田門付近 トチノキ)

警視庁や法務省などの官庁の建物が集まる桜田通り(桜田門付近)です。

トチノキ(栃の木;ムクロジ科トチノキ属)の街路樹が生えていました。建物の前の立派なトチノキの大樹が満開になっていて、上向きで円錐状の白い花穂がニョキニョキと立ち並んでいました。
(迎賓館周辺 ユリノキ)

港区元赤坂の迎賓館周辺の街路樹はユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)で、大樹が立ち並んでいます。

ユリノキは北米中部原産の落葉高木で、この頃(初夏)にチューリップに似た形のクリーム色の花が咲き出します。若葉が生い茂る大樹の中をよく見てみると、沢山の花が咲いていました。高所に咲き、若葉の色に似ているので、一見しただけでは気がつきません。
(九段~飯田橋 ヤマボウシ)

ヤマボウシ(山法師;ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属)の街路樹。九段~飯田橋の富士見地区(早稲田通り)に立ち並んでいて、ちょうどこの時期(初夏)が開花期です。

ヤマボウシは本州から九州の山地に生える落葉高木。同属のハナミズキと全体がよく似ていますが、ヤマボウシは葉がついた後に樹木の上方に上向きに咲きます。

白花以外にも薄紅色の花も見かけました。
詳しくは
…> 季節のスケッチ(2021年5月)
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