本土から遠く離れ、独自の生態系をもつ小笠原の植物
先月の沖縄特集に続き、今月は独自の生態系をもつ小笠原特集です。本土から遠く離れた父島、母島などの小笠原諸島はまだ訪れたことがありませんので、今回は主に小石川植物園の温室内の小笠原の植物をまとめてみました。
小笠原諸島の島々は海底火山の隆起により形成されたもので、日本本土や大陸と一度も繋がったことがない海洋島です。このため独特の生態系となっていて、多くの固有種の植物が存在し、植物では自生種の約5割が固有種とされています。都内では、小石川植物園や神代植物公園、新宿御苑、夢の島熱帯植物館などの温室にて保存・生育されている小笠原の植物に出会うことができます。
小笠原諸島を代表する固有植物の常緑小高木ワダンノキ(海菜木;キク科ワダンノキ属)。東アジア産のキク科の木本としては最も大きく生長し、樹高3~5mに達する。小笠原諸島は競合する木本植物が少ない海洋島であることから本来の草本植物が木本化したものとのこと。絶滅危惧Ⅱ類 。2021.3
小笠原固有の常緑低木オガサワラクチナシ(小笠原梔子;アカネ科クチナシ属)。山頂付近から山腹にかけて広く分布する。4月~5月頃、枝先に白い6弁の大きい花が咲き、いい香りがします。光沢のある厚い葉が対生する。同属のクチナシに全体的によく似るが、やや小ぶり。絶滅危惧Ⅱ類。2021.3末
小笠原固有種の常緑低木シマザクラ(島桜;アカネ科シマザクラ属)。島の道路沿いや林の縁、岩場などに生える。花期は7月~10月頃で普通の桜の花とは全然似ていない。枝先に集散花序がつき、うっすらと紫色を帯びた多くの白い花が咲く。花の裂片、雄しべ、雌しべともにひも状に伸びています。絶滅危惧Ⅱ類。2019.11
イオウノボタン(硫黄野牡丹;ノボタン科ノボタン属)。小笠原諸島北硫黄島の固有種でノボタンの変種。6月~8月頃に薄い赤紫色の5弁の花をつける。花弁の先の部分は外側に反り返り、長い雄しべや雌しべがくっきりと見える。イオウジマノボタン(硫黄島野牡丹)の別名あり。常緑低木。絶滅危惧Ⅱ類。2021.4
小笠原固有種のムニンネズミモチ(無人鼠黐;モクセイ科イボタノキ属)。各島の海岸に近い岩場から山の中まで広く生える。3月~4月頃に円錐花序を形成し、白色の多くの小花が密集して咲きます。全縁の葉は対生し、厚みがある葉の表面は光沢がある。2021.4
小笠原固有植物の多年生草本オオハマギキョウ(キキョウ科ミゾカクシ属)。草本ながら見かけは木本のような太い茎がある。花期は6月~7月で、5枚の花弁が合わさって下向きに付く。発芽してから数年間は成長を続け、花を咲かせて実を付けると枯れていく1回繁殖型の植物サイクルをもつ。絶滅危惧ⅡB類。2021.3
小笠原固有の多年草ツルワダン(蔓海菜;キク科ニガナ属)。海岸の崖や砂地、草地に生える。ロゼットの根元から匍匐するつる状の茎が伸び、新たなロゼットを形成する。細長い葉が輪生し、花茎の先に黄色の花を付けた頭状花序をなす。絶滅危惧Ⅱ類。2021.3末
小笠原固有種のシマカコソウ(島夏枯草;シソ科キランソウ属)。父島、母島、妹島に分布し、日当たりのよい湿った岩場に生育する多年草。全草一面に短毛が生え、葉の先端は丸みを帯び、波形の鋸歯がある。夏に一時枯れて、11月頃に芽を出す。絶滅危惧IA類。2019.11
ムニンタイトゴメ(無人大唐米;ベンケイソウ科キリンソウ属)。花期は12月~3月で、小さな黄色の5弁花を咲かせる。米粒のような葉が付く。小笠原諸島の固有種。環境の厳しい山頂部の岩場に生える多年草。絶滅危惧IB類。2021.1
小笠原の聟島列島の固有種の多年草ムコジママンネングサ(聟島万年草;ベンケイソウ科キリンソウ属)。最近まで小笠原固有種のムニンタントゴメと同一と思われていたが、DNA検査により新種であることが判明した。2021.4
これ以外にも、小石川植物園などで色々な小笠原の植物に出会うことができます。詳しくは
…> 季節のスケッチ(2021年8月 小笠原の植物)
| 固定リンク
「季節・風景・植物」カテゴリの記事
- 若葉茂り風薫る5月、初夏の木々の花、野の花が咲き競う(2023.05.01)
- 4月中旬の小石川植物園、美しい新緑が広がる(2023.04.24)
- 春爛漫の4月はサクラから新緑、ツツジへ主役交代(2023.04.01)
- 春分の日、はやくもソメイヨシノが満開に(2023.03.21)
- コブシ、ベニシダレ、シナミズキなどの木々が次々と満開(2023.03.16)
「小石川植物園」カテゴリの記事
- 若葉茂り風薫る5月、初夏の木々の花、野の花が咲き競う(2023.05.01)
- 4月中旬の小石川植物園、美しい新緑が広がる(2023.04.24)
- 春爛漫の4月はサクラから新緑、ツツジへ主役交代(2023.04.01)
- 春分の日、はやくもソメイヨシノが満開に(2023.03.21)
- コブシ、ベニシダレ、シナミズキなどの木々が次々と満開(2023.03.16)
コメント