季節・風景・植物

2024年11月22日 (金)

秋が本格化、小石川植物園でも紅葉進む



 今年はいつまでたっても暑さが残っていましたが、11月下旬になって、ようやく冷え込みが厳しくなり、秋が本格化してきました。小石川植物園でも例年より遅れ気味ですが、アメリカスズカケノキ、ハゼノキ、カイノキなど紅葉が進み、またサザンカ、チャノキなどの季節の花も咲き始めました。


 植物園入口から真っ直ぐ坂道を上り左に曲がるとソメイヨシノサクラ並木が広がっています。春の満開時には大勢の人出で賑わいますが、この時期はひっそりとしています。落葉が進み、褐色の黄葉がポツポツと残っています。


 園内の巨木ゾーンに生えるアメリカスズカケノキ(プラタナス;スズカケノキ科スズカケノキ属)。北米東部原産の落葉高木。晩秋の褐色の紅葉の景観は圧巻です。スズカケノキモミジバスズカケノキとともにプラタナスと呼ばれる。


 ハゼノキ(櫨の木;ウルシ科ウルシ属)。関東以西の本州、四国、九州・沖縄、小笠原諸島に自生する落葉小高木。秋の紅葉が美しく、俳句の世界では秋に美しく紅葉するハゼノキを櫨紅葉とよび秋の季語となっている。木枝から房状の黒い実が垂れ下がっています。


 カイノキ(楷樹;ウルシ科カイノキ属)が美しく紅葉していました。中国、台湾及び東南アジアを原産とし、東アジアの温暖な地域に自生する落葉高木。ランシンボク(爛心木)ともいう。枝ぶりが整っていることから、楷書にちなんで名がついたとされる。公園木や庭園木などに用いられる


 ピラカンサ(品種名:ローズデール;バラ科トキワサンザシ属)。南ヨーロッパ、西アジアが原産の常緑低木。秋になると無数の塊状になった赤い実を付け、壮観です。庭木などに多く用いられる。


 オオカナメモチ(大要黐;バラ科カナメモチ属)。中国・台湾・フィリピンに分布する常緑高木。岡山県や愛知県、奄美大島、沖縄などの暖地の山地に希に生える。秋にたくさんの実が付き、黄土色から赤色に変わっていく。


 サザンカ(山茶花;ツバキ科ツバキ属)。山口県、四国南部から九州中南部、南西諸島に分布する常緑広葉樹。晩秋から新年にかけ、多くの園芸種の白色や赤色の花が次々と咲き出します。この白花の品種名は千代鶴。


 このサザンカの赤花の品種名は根岸紅。小石川植物園のツバキ園には、国内外のサザンカや色々な園芸品種のサザンカが植えられています。


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2024年10月22日 (火)

10月中旬の小石川植物園、秋の風情が徐々に広がる



10月に入って小石川植物園をぶらぶら散策していますが、園内ではキンモクセイ、セイタカアワダチソウなどの季節の花々やカリン、モッコク、イイギリなどの木の実が散見されるようになり、徐々に秋の風情が広がってきたような気がします。ただ、全般的に気温が高めだったこともあり、紅葉は少しも進んでいません。このところの気候の変調が気になります。


精子発見の大イチョウ(中)やウルムス・プロセア(左)などの巨木はまだ青々と茂っていて、いっこうに黄葉が進んでいませんが、空を見上げると秋の雲が浮かんでいます。


常緑小高木のキンモクセイ(金木犀;モクセイ科モクセイ属)は代表的な秋の芳香花木ですが、今回は残念なことに満開の時期が過ぎてしまい、秋の香りを楽しむことができませんでした。


落葉低木のミヤギノハギ(宮城野萩;マメ科マメ亜科ハギ属)。夏の頃から枝垂れた枝に多くの赤紫色の蝶形の花をつけ、まだ咲き続けています。やはり秋の七草です。


園内の各所の草むらにセイタカアワダチソウ(背高泡立草;キク科アキノキリンソウ属)を見かけます。北米原産で草丈の高い多年草。秋に形状のいい黄色の花穂を付けます。当初、切り花用の観賞植物として導入されたが、現在は野生化し河原や空き地などに群生しています。


中国原産の落葉高木のカリン(花梨;バラ科カリン属)。秋になると、かなり大きな果実を沢山付けるようになり、木の上からボタボタと落ちてきます。カリンの実は果実酒などに用いられる。


常緑高木のモッコク(木斛;モッコク科モッコク属)。千葉県以西~九州、南西諸島に分布し、暖地の海岸近くの山地に自生する。秋になると実が赤く熟し、熟すと厚い果皮が不規則に裂けて、橙赤色の種子が露出します。


ヒメグルミ(姫胡桃;クルミ科クルミ属)。わが国の山地に自生し、川沿いによく生える落葉高木。実の中の堅果は扁平で表面にしわが少なく、頂端は鋭く尖る。殻が薄いので簡単に割れる。内部の種(クルミ)は風味豊かで食用になる。


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2024年9月23日 (月)

秋の彼岸の頃、小石川植物園にもようやく秋の気配



 今年の9月も湿気が高い熱暑がいつまでも続き、秋分の日が過ぎてようやく爽やかな秋が到来し、ほっとしています。小石川植物園を久しぶりに訪ねてみると、同じ思いの多くの人たちが散策していました。園内の風景は深緑の夏の名残が大半ですが、それでもヒガンバナやオオモクゲンジなどの秋の風情を見つけることができました。 


 ヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属、別名:曼珠沙華)。例年ちょうど秋の彼岸の時期に満開になって咲き広がりますが、今年は長引いた猛暑のせいで咲き具合が少し後れているようです。7分咲きといったところでした。


ヒガンバナ(彼岸花)は、花が燃える炎のように妖美な感じで独特の形状をしています。昔から墓地等に植えられてきていますが、本当に故人を弔っているような感じがします。大部分は赤花ですが、まれに白花も生えています。全草有毒で、特に鱗茎にアルカロイドを多く含む有毒植物なので要注意。


 園内の巨樹ゾーンに生えるオオモクゲンジ(大木欒子;ムクロジ科モクゲンジ属、別名:袋実木欒子)。今年も高木の樹木全体に黄色の細かい花を盛んに付け、壮観でした。golden rain tree と英名のとおり、花が降り注ぐと木の下の地面は黄金色のオガクズを敷き詰めたようになります。


  沖縄・九州などに自生する落葉低木のフヨウ(芙蓉;アオイ科フヨウ属)。淡いピンクの花が盛んに咲いていました。優雅でしっとりとした感じです。関東以南で観賞用に栽培される夏の花木です。


 タイワンニンジンボク(台湾人参木;シソ科ハマゴウ属)。台湾、中国、東南アジア、インド、マダガスカル島、アフリカに広く分布する落葉低木。樹木全体に細い小枝が伸び、枝先に青紫色の小さな花を付いています。


 南ヨーロッパ原産の落葉小低木ナツメ(棗;クロウメモドキ科ナツメ属)。初夏に目立たない淡緑色で小さな花が葉腋につき、この時期に実が熟してきます。熟すと赤黒くなり、次第に乾燥してしわができる。ナツメの実はドライフルーツに使われ、生薬(大棗)としても用いられます。


 シラタマノキ(白玉の木;ツツジ科シラタマノキ属)。北海道、本州中部以北などに分布する常緑小低木。同属のアカモノの果実は赤く、本種は白い果実をつけることからシロモノとも呼ばれます。ぜんざいの中の白玉のようです。


 ヤマトリカブト(山鳥兜;キンポウゲ科トリカブト属)。関東西部、中部地方東部に分布する多年草で日本自生種のトリカブト。冷温室で青紫色の花が咲いていました。花は昆虫のサナギのような変わった形をしています。有毒植物として有名ですが、漢方では附子という生薬として使われる。


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2024年8月11日 (日)

紅花資料館@河北町で紅花染め体験



 8月中旬のお盆休み時に家族のものが山形河北町の紅花資料館を訪れ、紅花染めを体験してきました。かつて私も7月頃に咲き出す紅花の風景を求めて紅花資料館や周辺の紅花畑を回ってきたことがありますので、このときの写真も含めて紹介します。


 紅花資料館は、かつて近郷きっての富豪だった堀米四郎兵衛の屋敷跡にあります。堀米家は、米や紅花などの集荷出荷などによって財をなしてきました。園内には、当時を物語る武者蔵(農兵隊の武器蔵)、座敷蔵(客室用の蔵)、紅の館(紅花交易当時の品々を展示)などが配置されています。この写真は2008年7月当時のもの。


 紅花染が出来るまでの行程です。大まかに言うと、まず畑に咲き出した沢山の紅花を集めて紅餅を作り、この紅餅を炭酸カリウムとともに水に溶かして、紅花染用の水溶液を作ります。この水溶液に絹のハンカチ、綿のガーゼを浸すことによりしっとりと美しい紅花染が出来上がります。


 紅餅です。紅花の花びらを叩いて、餅の形にして何日もかけて発酵させるとのこと。紅餅作りだけでも大変な作業です。


 紅餅を炭酸カリウムとともに水に溶かして作った染色用の赤い水溶液です。作業に使った両手の手指も真っ赤に染まります。


 紅花染め体験で出来上がったシルクのハンカチです。なかなかいい具合に染まりました。

(過去の紅花探訪より)

 ベニバナ(紅花)を求めて郷里の東根市の近辺を探訪していたところ、河北町に咲き残っていた紅花を見つけて感激したことを覚えています。紅花は7月頃に枝先に頭状花をつけ、花は鮮やかな黄色から徐々に赤くなります。 一年草/越年草。キク科ベニバナ属。2008.7


 山形県の県花にもなっている紅花は古くから口紅の原料として盛んに栽培され、交易品として江戸や上方に運ばれていきました。今では、紅色染料や食用油の原料として、さらには観光用に栽培されています。2008.7


 羽州街道六田宿跡(今の東根市六田地区)に紅花を抱えた芭蕉像が置かれています。芭蕉は尾花沢から羽州街道を通って山寺に向かう途中、この地でもてなしを受けました。芭蕉は紅花を見て、「眉掃(まゆはき)を俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花」、「行末は誰が肌ふれむ紅の花」の二つの句を詠んでいます。2016.8


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2024年7月21日 (日)

深緑に覆われた真夏の風景、サルスベリが咲き出す



 今年も暑い夏の季節がやってきました。わが家のテラスから眺めると、真夏の青空の下、テーダマツやオオカナメモチなど小石川植物園内の木々は深緑に覆われています。この時季はムッとした猛暑のため、なかなか植物園内をじっくりと回ることができません。このため、今月は植物園外の風景を紹介することにします。


 わが家の庭のサルスベリ(百日紅;ミソハギ科サルスベリ属)が今年も盛んに咲き出してきました。サルスベリは中国原産の落葉中高木。代表的な夏の花木で花期が長く、炎暑下の強い日差しの下であざやかな深紅の花が咲き続けます。花の後に実が付き、秋には黄葉が見られる。


 サルスベリ(百日紅;ミソハギ科)の街路樹も見かけるようになりました。このサルスベリは、文京シビックセンター近くの文京ガーデン周りに生えています。赤紫色の花と白色の花のサルスベリが仲良く並んでいました。


 水道橋駅からお茶の水駅の線路沿いに走る皀角坂を登り切った付近の街路樹の中に薄く緑がかった花をつけた樹木を見つけました。一面が深緑に覆われている中、気になったので調べてみたらニワウルシ(庭漆;ニガキ科ニワウルシ属)のようです。


 ニワウルシは中国原産でわが国には明治初期に渡来。6月頃に緑白色の沢山の小花をつけ、花のアトに実がつく。ウルシ(ウルシ科)の木に似ることから和名に「ウルシ」が入るが、ウルシとは全くの別種でかぶれる心配はない。かぶれないことから民家の庭木や街路樹に用いられています。


 昨秋、近くの花屋さんから買い求めたシマトネリコ(島十練子;モクセイ科トネリコ属)。熱帯~亜熱帯の山地に生育する常緑小高木。つやのある美しい小葉や風になびく軽やかな樹姿が魅力的で庭木や観葉植物として人気があります。手間がかからずスクスクと成長しています。株立ちする細い幹の下部につく木枝を除去することがポイントです。


 ベゴニア(シュウカイドウ科シュウカイドウ属)とコリウス(シソ科コリウス属)の寄植え。わが家の庭先の小さな花壇の風景です。手軽にまとまって育ってもらえるので助かります。


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2024年6月 6日 (木)

入梅の季節、ハナショウブやアジサイの花が咲き出す



 入梅の季節の6月に入りましたが、今年の実際の梅雨入りはやや遅れ気味のようです。小石川植物園を回ってきましたが、梅雨空に似合うハナショウブやアジサイの花が咲き出していました。


 ハナショウブ(花菖蒲;アヤメ科アヤメ属)。全国各地の庭園、寺社などで栽培される多年草。園内の菖蒲田で優雅な花が白、紫、黄、薄紅色に咲き乱れ、梅雨時のうっとうしさを忘れさせてくれます。別世界に来たかのように錯覚する美しい空間です。古典園芸植物の一つ。


 素朴で野性的な花のノハナショウブ(野花菖蒲;アヤメ科アヤメ属)。水辺や湿原などに自生する多年草。梅雨時に各地で咲く園芸品種ハナショウブの原種です。温室の前のところで展示されていました。


 日本固有種のガクアジサイ(額紫陽花;アジサイ科アジサイ属)が群生しています。花序の中心部の多数の両性花の周りに装飾花が額縁のように縁取る。アジサイ属アジサイ亜節の基本種になります。


 西洋アジサイ(アジサイ科アジサイ属)。もともと日本で栽培されていたホンアジサイが18世紀後半に西洋へ渡り、品種改良されたのちに日本へ戻ってきた品種のことをいい、ハイドランジアとも呼ばれる。


 園内の木々の木々の木枝をよくみると、地味な花が咲いていることに気づきます。これはナツメ(棗;クロウメモドキ科ナツメ属)。目立たない淡緑色で小さな花が葉腋についています。熟した実はドライフルーツや生薬(大棗)に使われる。


 ヨコグラノキ(横倉の木;クロウメモドキ科ヨコグラノキ属)にも小さく地味な黄緑色の花が咲いています。ヨコグラノキは、植物学者として高名な牧野富太郎博士が幼い頃によく遊び回ったとされる高知県の横倉山で最初に発見され、命名されている。


 ナンテン(南天;メギ科ナンテン属)。枝先に中心部が黄色の小さな白い花が点々と咲き出しています。ナンテンは難を転ずる縁起が良い木と言われ、庭木に多く用いられる。古典園芸植物の一つ。


 ウマノスズクサ(馬鈴草;ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属)。関東以西の本州、四国、九州に分布する蔓性多年草。6月~9月頃、葉脇から伸びる花柄に細長い花が一輪ずつ横向きにつく。長さ4㎝ほどの花の大部分はやや湾曲する筒状の萼で、花の基部は球形に膨らむ。果実の形状がかつての荷馬車を引く馬の首に掛けられた鈴が似ていることから和名が由来。


 ノカンゾウ(野萓草;ワスレグサ科ワスレグサ属)。日本、中国、朝鮮半島、サハリンが原産の多年草。ユリの花が上を向いたような形をして一重のすっきりした形状をしています。この時季、園内の各所に咲き出します。


 ドクダミ(毒溜;ドクダミ科ドクダミ属)。道ばたや草むらの半日陰地に分布する多年草。梅雨時に草むらなどで群生するドクダミの花を見かけます。十薬ともいわれるドクダミは、様々な薬効があり、腫れ物、皮膚病などに利用されます。葉茎に独特の強い匂いがある。


(温室・冷温室の植物)


 コオニユリ(小鬼百合;ユリ科ユリ属)。北海道、本州、四国、九州の山地の草原等に生育する球根植物。近縁種のオニユリよりも花が小さく、ムカゴがつかない。


 アガペテス・グランディフロラ(ツツジ科アガペテス属)。学名:Agapetes grandiflora。ミャンマー原産の常緑低木。枝の葉柄に総状花序が形成され、可愛らしい筒状の小さな花が数多く垂れ下がっています。なお、本種は従前アガペテス・ブルマニカとの表記があった。


 バオバブ(アオイ科バオバブ属)。学名:Adansonia digitata、英名:Baobab。サン・テグジュペリの絵本「星の王子さま」に登場する樹木として有名だが、わが国ではなかなかお目にかかれない。小石川植物園の温室ではバオバブが鉢植されています。バオバブの葉は幹の上部に生い茂っていて、原産地のサバンナ地帯の乾期には落葉します。


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2024年5月 3日 (金)

小石川植物園は新緑から万緑へ、落ち着いた雰囲気の花々



 初夏の風薫る5月に入りました。先月初旬に満開になった小石川植物園のサクラ並木です。その頃は大勢の人で賑わっていましたが、今や新緑が過ぎ、万緑の様相を呈しています。木の下では緑陰を求める家族連れがチラホラと見受けられます。この時季になるとバラの仲間の花や大樹の目立たない花が咲き、園内は落ち着いた雰囲気になります。


 満開になったアルニフィラム・フォーチュネイ(Alniphyllum fortunei;エゴノキ科アルニフィラム属)。中国、インド、ミャンマー等が原産の落葉高木で、丘陵地~山地に自生する。園内では大樹が柴田記念館の近くに生えており、この時期だけ近づくことが出来るようになっています。


 アルニフィラム・フォーチュネイは初夏~夏にかけて、枝先の葉腋に円錐花序を形成し、多数の白い花が付いています。枝に互生する全縁の葉の表面には光沢がある。普段見かけない珍しい樹木です。


 バラ科の花が目立ちました。これはノイバラ(野茨;バラ科バラ属)。北海道から九州にかけての山野に自生する落葉低木。バラ特有のトゲが多い野バラです。房状になって白い花が多数咲く。秋に小さな赤い実が付く。日本のバラの代表的な原種です。


 ナナカマド(七竈;ナナカマド属)。北海道から九州の亜高山帯の林地に自生する落葉高木。初夏に複散房花序を付け、小さな白い花が多数咲く。秋になると見事に紅葉し、真っ赤な球状の実をたわわに付ける。庭木や街路樹、花材として用いられる。


 シセンテンノウメ(四川天の梅; バラ科テンノウメ属 )。中国南部、台湾が原産の常緑低木。山地の岩場に生育する。ウメに似た白い花が咲くが、鳥の羽毛のような葉が付き全体としてユニークな形状。点々と咲く花が天空の星のように見えることから和名が由来します。


 タニウツギ(谷空木;スイカズラ科タニウツギ属)。北海道や本州の日本海側の山野に自生する落葉小低木。山地の谷沿いや斜面に多く見られる。新緑の中、美しい淡紅色の漏斗状の花を付ける。田植えの時期に花が咲くことから、「田植え花」ともいわれる。


 大樹の木枝をよく見ると、目立たない地味な花も多々見かけます。これはシラカシ(白樫;ブナ科コナラ属)。福島・新潟県〜九州の山地に生える常緑高木。初夏に枝から多数の花穂(尾状花序で黄褐色の雄花)が垂れ下がります。秋にはドングリの実(堅果)がつく。


 スダジイ(椎の木;ブナ科シイ属)。福島県以西の日本全国に分布する常緑高木。いわゆる椎の木のこと。初夏に大樹がうっそうと緑に覆われ、雄花が枝先にたくさん付く。雄花は強い香りを放ち、虫を呼び寄せます。秋の木の実(堅果)はドングリの一つで、椎の実とも呼ばれる。


 針葉樹にも花穂が付いています・これはクロマツ(黒松;マツ科マツ属)。本州、四国、九州に分布し、海岸に多く自生する常緑針葉樹。和風庭園の主木としてや用いられる。樹皮は名の通り黒みを帯び、樹齢を重ねると亀甲状に剥離する。雌雄同株で、4月~5月頃花をつけ、雌花の後に球果(松かさ)ができる


 アカマツ(赤松;マツ科マツ属)。本州、四国、九州に分布する常緑針葉樹。山地や山野に生えることが多い。アカマツの心材と呼ばれる中心部は耐水性が高く、建築用材や杭などに幅広く使われる。樹皮は赤みの強い褐色で、鱗状に薄く剥がれる。雌雄同株で、4月頃目立たない花をつけ、雌花の後に球果(松かさ)ができる。


 アレッポマツ(Aleppo Pine;マツ科マツ属)。地中海地方を原産とする常緑高木のマツ。球果(松かさ)は細い円錐状で、はじめの緑色から2年ほど経つと熟し、茶色に変化する。 現地では庭園木や木材等に用いられている。アレッポはシリア北部の都市。


 草むらなどを見渡すと、初夏の野の花をも見かけます。これはカマヤマショウブ(蒲山菖蒲;アヤメ科アヤメ属)。朝鮮半島、中国東北部が原産の多年草。濃い紫色の花で外側の大きい花びら(外花被)の中央に網目模様がある。葉は細長い線形で直立し、花径も長くて外花被片の幅が広い。韓国の釜山から和名が由来。


 同じアヤメ属のキショウブ(黄菖蒲;アヤメ科アヤメ属)。ユーラシア大陸原産の多年草。日本全国の水辺や湿地、水田脇に野生化しています。5月~6月に青紫色、紫色の花を付ける他のアヤメ属の仲間と異なり、黄色の花が咲きます。外花被片が大型の広卵形で先が下に垂れ、花弁の基部に茶色の網目がある。


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2024年4月24日 (水)

ソメイヨシノ満開の後、色とりどりのツツジが主役


 ソメイヨシノ満開の後の主役はツツジになります。日本庭園の赤い建物の周りの植込みのツツジも美しく咲き出しています。この時季、ツツジ園や散策の道沿いなど園内至る所で満開のツツジを見かけます。


 園内では色とりどりのツツジ(ツツジ科ツツジ属)が沢山咲いていました。この植込みはヒラドツツジ(平戸躑躅)の園芸品種の大紫(おおむらさき)です。ヒラドツツジはケラマツツジキシツツジなどいくつかのツツジから長崎県の平戸地方で作出された園芸品種群。


 キリシマツツジ(霧島躑躅)の園芸品種の日の出霧島(ひのできりしま)です。キリシマツツジは4月から5月頃に小ぶりの花を開花させる常緑低木のツツジ。鹿児島県下の霧島山の山中に自生するツツジの中から江戸時代初期に作出され、園芸品種が多い。


 オオヤマツツジ(大山躑躅)の園芸品種の錦の司(にしきのつかさ)。オオヤマツツジは関東周辺の日当たりのいい山地に自生する常緑低木のツツジ。ヤマツツジよりも花や葉が大きい。ヤマツツジの仲間。


 ジングウツツジ(神宮躑躅)。東海地方の蛇紋岩地帯に生息する落葉低木のツツジ。伊勢神宮の神域から発見されたことから和名が由来。浜松市内の渋川に群生地があるため、シブカワツツジ(渋川躑躅)の別名あり。春に気品ある花を咲かせることから庭木として利用される。ミツバツツジの仲間。


 ランダイヒカゲツツジ(巒大日陰躑躅)。台湾原産で高雄山などの高山の林地に生える常緑低木のツツジ。4月~5月にかけて赤い斑点が入った淡い赤紫色の花を咲かせ、長い雄しべが5本付く。ヒカゲツツジゲンカイツツジと同じ仲間。


 セイシカ(聖紫花、八重山聖紫花)。沖縄の八重山地方(石垣島や西表島)に自生するツツジ。八重山聖紫花ともいう。川沿いの林内や林縁の岩上に生育する。巨樹のクスノキの緑を後景にして、沢山の花が木全体に咲き広がって壮観です。これ以外にも園内では多くのツツジが美しく咲いていました。


 巨木並木の春の風景です。日に日に緑が濃くなってきます。スズカケノキユリノキケヤキなどの巨木が数多く立ち並んでいます。林立する巨木の下から大空を見上げる風景は圧巻で、まさにパワースポットそのものです。


 巨木並木の区域から少し奥に進むと、ヒトツバタゴ(モクセイ科ヒトツバタゴ属)が満開になっていました。対馬地方、木曽川流域、岐阜県東濃地方などに限定的に自生する落葉高木。この時季に開花し、枝先に集散花序をつけ多数の花が咲きます。まるで高木全体が雪で覆われているような景観です。


 イヌザクラ(犬桜;バラ科サクラ属ウワミズザクラ亜属)。山地に生育する落葉高木。5月頃に枝先のブラシ状の総状花序に多くの白い花を付けます。サクラ亜属のいわゆるサクラの仲間とは花の形状が異なります。シロザクラの別名があります。


 タブノキ(椨の木;クスノキ科タブノキ属)。東北地方~九州・沖縄に分布する常緑高木。潮風、強風、大気汚染に強く、海岸近くに多く見られる。枝先の葉腋に円錐花序を出し、あまり目立たない黄緑色の花がたくさん咲いています。


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2024年4月11日 (木)

4月上旬の小石川植物園、ソメイヨシノがやや遅めの満開



 今年はソメイヨシノの開花を目前にした3月下旬になって冷え込みが続くようになり、開花時期が遅れ、ソメイヨシノの満開は4月上旬になりました。花見を待ちかねた大勢の人たちが桜の木の下に集っています。最近は災害とか戦争とか穏やかならざる出来事が頻発しているので、このような見慣れた花見の光景に出会うと、ふと心が和みます。小石川植物園ではサクラ以外にもいろんな木々の花々や新緑があふれ、美しい季節の到来を実感します。


 ようやく満開になった4/4のソメイヨシノ(染井吉野;サクラ亜属エドヒガン群)。あいにく曇天でしたが、多くの人が押しかけていました。いつもながらサクラの花の圧倒的なボリュームには感動させられます。


 ベニシダレ(サクラ亜属エドヒガン群)の見事な景観です。シダレザクラの淡紅色の品種。ここに植えられて、まだ10年未満だと思うのですが、順調に生育しています。


 4/4の満開の後、強風が吹く悪天候の日があって心配でしたが、4/10時点のサクラ並木には、まだ花がかなり残っていました。


 しかしサクラ並木の樹下を見渡すと、このように散った桜の花が絨毯のように地面に敷き詰められていました。


 日本、中国などが原産の常緑高木トキワマンサク(常盤満作;マンサク科トキワマンサク属)。満開になった大樹がひも状の白色、淡黄色の無数の小さな4弁花に覆われます。樹木を見上げると、まるで滝のように花が流れている感じになります。


 東北地方南部~沖縄まで分布する常緑高木モチノキ(黐の木;モチノキ科モチノキ属)。大樹の木枝に無数の黄緑色の花が束になって咲いています。


 イロハモミジ(いろは紅葉;ムクロジ科カエデ属 )の鮮やかな新緑です。東アジアに自生し、わが国では本州以南に分布する落葉高木。秋の紅葉の代表格ですが、この時期の新緑も見事です。


 イロハモミジの新緑に覆われた木枝をよく見ると、暗紫色の小さな花がたくさん咲いています。この花は風媒花で5弁花。俳句では花楓とかもみじ咲くなどと詠む。


 園内を散策していると、林の中で珍しい樹木を見かけました。コブシモドキ(辛夷擬、這辛夷;モクレン科モクレン属シモクレン節)が数輪の花を付けていました。日本固有種の落葉低木でコブシの品種とされる。葉の展開に先立って大きめの白い花を咲かせています。


 コブシモドキは1948年に徳島県相生町で1個体のみが発見されたが、その後、野生種が見つからず野生絶滅(EW)とされている。コブシが2倍体であるのに対し、コブシモドキは3倍体で結実しないので、現在は挿し木で増やしたクローン株が国内数ヶ所に生えているに過ぎないとのこと。


 本州西部の太平洋側、四国、九州に広く分布する常緑高木クスノキ(樟、楠;クスノキ科ニッケイ属)の巨木。鎮守の森の主のようにそびえ立っています。常緑樹ですが、そろそろ新葉と入れ替わります。


 メタセコイア林の春の風景です。園入口から左方に曲がって少し進むと、天空に向かって直伸するメタセコイアが林立しています。この時期、うっすらと新緑が吹き出してきました。


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2024年3月14日 (木)

啓蟄過ぎの小石川植物園、春の花々がいよいよ咲き出す



 啓蟄が過ぎた春暖の3月中旬、小石川植物園をぶらぶら回ってきました。ソメイヨシノの開花を目前にして、オオカンザクラ(大寒桜)などのサクラの花やハヤトミツバツツジ(隼人三葉躑躅)などのツツジの花が咲き出していました。また、この時期に期間限定公開中のロックガーデンではキクザキイチゲ(菊咲一華)やヒロハノアマナ(広葉の甘菜)などの春の野の花が開花していました。

(木々の花)

 オオカンザクラ(大寒桜;カンヒザクラ×カンザクラの交雑種)。カンザクラよりも花がやや大きいことから和名が由来。埼玉県川口市安行の地から広められたサトザクラ。安行寒緋(あんぎょうかんひ)とも呼ばれる。


 オカメザクラカンヒザクラ×マメザクラの栽培品種)。前年までの名札では早春桜@マメザクラとされていた。このオカメザクラは英国の桜研究家であるコリングウッド・イングラムが作出。早咲きで花期は2月下旬から3月上旬ごろ


 鹿児島県原産で低山地の岩場に多く見られる落葉低木のハヤトミツバツツジ(隼人三葉躑躅;ツツジ亜属ミツバツツジ節)。2月下旬から3月に葉のない枝先に淡い赤紫色の花が元気に咲き出す。


 トサミズキ(土佐水木;マンサク科トサミズキ属)。高知県原産で蛇紋岩地帯や石灰岩地帯などに生育する落葉低木。3月頃、無数の黄緑色の花が一斉に枝から咲き出す。


 サンシュユ(山茱萸;ミズキ科ミズキ属)。中国及び朝鮮半島を原産とする落葉小高木。新葉の展開前、3月に無数の黄金色の花が大空に吹き出すように広がり、ハルコガネバナとも呼ばれる。観賞用として庭木などに利用される。


 ミツマタ(三椏;ジンチョウゲ科ミツマタ属)。中国中南部、ヒマラヤ原産の落葉低木。3月~4月頃、新葉が芽吹く前に開花する。3本に分枝する枝(三叉)の先に、多くの小さい黄色の筒状花が凝集した半球形方の花序がつく。強い繊維質の樹皮は和紙や紙幣の良質な原料となる。

(春の野の花)

 キクザキイチゲ(菊咲一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)。本州近畿地方以北から北海道に分布し、落葉広葉樹林の林床などに生育する。キクサキイチゲの葉は元気に上向いている感じで、ちょうど菊の葉のように切れ込みが鋭いのが特徴。キクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)とも呼ばれる。スプリング・エフェメラル(春の妖精)の一つ。


 ユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)。2月中頃から小さく可憐な白い花が枯葉の中から顔を出します。春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、残りは地下で過ごすスプリング・エフェメラル(春の妖精)の仲間。本州中部以西の暖かい地域の林内に生える。


 ヒロハノアマナ(広葉の甘菜;ユリ科アマナ属)。日本固有種で関東地方から近畿地方、四国に分布し、草地や落葉樹林の下に生育する球根植物。3月~5月に開花し、花茎の先に1個の白色の花が咲く。6個の花弁と6本の雄しべを有し、花茎に3個の苞葉がつく。また、幅が広めの葉の中央に見える白線模様が特徴的。スプリング・エフェメラル(春の妖精)の一つ。


 ハナニラ(花韮、西洋甘菜;ヒガンバナ科ネギ亜科 ハナニラ属)。早春、ハナニラ(花韮)の清楚な白い花が植物園内の各所に咲き広がります。花の形はアマナに似ることから、セイヨウアマナ(西洋甘菜)とも呼ばれます。南米原産で明治時代に観賞用として帰化。


 タチツボスミレ(立坪菫;スミレ科スミレ属)。わが国では平地から低山に分布し、日当たりのよい道端や草原、林地などに普通に見られる多年草のスミレです。


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  → 季節のスケッチ(2024年3月) Archive

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