自然災害

2022年1月16日 (日)

1月中旬、ようやくロウバイの花が満開


 新年に入って寒い日が続いています。15日夜、日本から約8千キロ離れた南太平洋の島国トンガの海底火山が大噴火し、この影響で翌朝のわが国沿岸に高さ1m前後の津波が押し寄せました。当初この津波は気象庁でも予測することが出来ず、まったく経験したことのない未知の現象だったと発表。大噴火により周囲の大気圧が波のように振動し、その空振の衝撃波が遠く離れた各国の沿岸まで到達。それが海面に作用して津波を増幅させたようです。幸い、今回は大きな被害が出ませんでしたが、今後の防災対策に課題が残りました。

 さて、小石川植物園では、1月中旬になってようやくロウバイの花が満開になってきました。また、前のブログ記事でも取り上げた常緑の木立とともに園内の様子を紹介します。

 ロウバイ(蝋梅;ロウバイ科ロウバイ属)の花は迎春花ともいわれ、芳香を放つ蝋細工のような黄金色の花を咲かせます。


 ソシンロウバイ(蝋梅素心)。花の中心部も透きとおっています。近郊には、秩父長瀞町の宝登山安中市のろうばいの郷などのロウバイの名所がありますが、コロナ禍の現状ではなかなか出かけることが出来ません。


 九州や沖縄に分布する常緑高木ヒゼンマユミ(肥前真弓;ニシキギ科ニシキギ属)。この時期は橙黄色の果実の殻が木枝に多く残っていて、まるで花が盛んに咲いているように見えます。これから4月~6月にかけて新芽が出て、目立たない小さな黄緑色の花がつく。


 果実の殻が裂け、中から赤い種が露出しています。


 温室でヒメサザンカ(姫山茶花;ツバキ科ツバキ属)の花を見かけました。琉球列島の固有種の常緑小高木。沖縄本島、久米島、石垣島、西表島、沖永良部島に見られ、山地の森林の川辺りに生育する。冬に小さな白い花をつけ、花には芳香がある。花木として栽培されるとともに、香りのあるツバキを作出するための交配親として用いられる。


 常緑低木モクセンナ(マメ科センナ属)。やはり、温室で花をつけていました。熱帯アジア原産の常緑低木。沖縄では各島の庭園で栽培されている。花の形がスクランブルエッグに似ることから、海外では
Scrambled eggs tree と呼ばれる。


(常緑の木立)

 タイワンアカマツ(台湾赤松;マツ科マツ属)。台湾、中国南部に広く分布する常緑針葉樹。日本の アカマツに似て幹が赤っぽい。針状の葉が長く、ウマの尾を連想させることからバビショウ(馬尾松)とも呼ばれる。中国では松脂を採取するため計画的に植林されている。


 タカネゴヨウ(高嶺五葉;マツ科マツ属)。台湾、中国原産の常緑針葉高木。標高1200m~3500mの高山に自生する。五葉松系なので、線形の葉が1ケ所から5本束生し、長く枝垂れる。雌雄異花で4月~5月頃目立たない花をつけ、果実(松笠状の球果)が翌年秋に結実します。


 常緑針葉高木のアイグロマツ(間黒松;マツ科マツ属)。アカマツクロマツの交雑種で、両者の中間的な形態をしている。赤褐色の樹皮はアカマツに、濃緑色で硬直な葉はクロマツに似る。東日本大震災で生き残った「奇跡の一本松」(岩手県陸前高田市)はアイグロマツです。


 エンピツビャクシン(鉛筆柏槇;ヒノキ科ビャクシン属)。北アメリカ東部に分布する常緑針葉高木。幹は直立し、樹形は円錐形。葉は十字対生し、針葉と鱗葉が混生する。公園樹、庭園樹、庭木として植えられ、木材は装飾材や鉛筆の材料として用いられる。


 メキシコラクウショウ(ヒノキ科ヌマスギ属)。米国南部、メキシコなどに分布する常緑針葉樹。河岸や湿地などに生える。樹皮は褐色で縦の裂け目がある。枝は横に伸び、広い樹冠を形成する。小枝は下垂し、羽状の葉は互生する。
メキシコの国の木。


 カンニンガムモクマオウ(モクマオウ科モクマオウ属)。豪州原産で沖縄の海岸にも多く見られる。灰色がかった緑色の針様群葉を持つ常緑高木(針葉樹ではない)。雌雄異株で秋に開花し、小さな球果がつく。川岸や沼沢地の日当たりのよい場所で見られる。


 関東地方~九州、沖縄の暖地に分布する常緑高木バクチノキ(博打の木;バラ科バクチノキ亜属)。絶えず古い灰白色の樹皮がうろこ状に剥がれ落ち、黄赤色の幹肌が現れる。この様子を博打に負けて衣を剥がれることに例え、和名が由来。


 クロキ(黒木;ハイノキ科ハイノキ属)。関東地方南部~トカラ列島に分布する常緑小高木。海岸近くの照葉樹林内に生える。葉の間についた新芽(花の蕾)は開花が近づくと徐々に白っぽくなり、3月~4月頃にハイノキに似た花が咲く。枝葉を燃やした後の灰汁を黒の染料に用いることから和名が由来したとも言われる


 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2022年1月)

 

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2021年8月22日 (日)

夏空が戻った小石川植物園の深緑の風景


 五輪閉幕後、日本上空に線状降水帯が発生し、各地に豪雨災害をもたらしました。さらに、コロナウィルスのデルタ株による感染が急拡大し、これも災害級の事態と喧伝されており、大変な8月となっています。
 さて、8月下旬になってようやく夏空が戻り、久しぶりに深緑に覆われた小石川植物園を回ってきました。



 久しぶり訪れた植物園は全体的に深緑に覆われていました(上は桜並木、下は巨木並木の風景)。早くも桜の木の下では落葉がチラホラと見えるようになっています。深緑の中にいろんな木々の花や野の花が咲いていました。



 日本庭園の池の周りにサルスベリ(百日紅;ミソハギ科サルスベリ属)の真紅や薄紫色の花が咲いています。サルスベリは花期が長く、炎暑下の強い日差しの中で咲き続けます。


 北海道~沖縄に分布する落葉小高木のクサギ(臭木;シソ科クサギ属)。この時期に咲く5弁の白い花を初めて見かけました。


 クサギは秋になると、ピンク色の星形のガクの中心に紺色の種子が付くようになり、一見するとこれが花のように見えます(2019.10)。クサギの和名は葉に悪臭があることから由来。


  日当たりの良い草地に生える多年草オミナエシ(女郎花;スイカズラ科オミナエシ属)。直立した茎の先にあざやかな黄色の花が群生して咲いています。秋の七草の一つ。


 ワレモコウ(吾亦紅;バラ科ワレモコウ属)。秋の高原の風物詩の多年草で、北海道~九州の日当たりのよい草原に見られる。花は穂の先端から咲き始め、独特の暗赤色の丸く短い花穂を付けます。


 タヌキノカミソリ(狸の剃刀;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)。中国原産の球根植物。同属のヒガンバナナツズイセンキツネノカミソリと同様、春に葉が出て夏には枯れ、その後花茎だけが直立するようになり、花茎の先に薄い桃色の花をつける。 花の形はキツネノカミソリとよく似るが、花の色が異なる。


 これはキツネノカミソリ(狐の剃刀;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)。林床や林縁などに自生する球根植物。タヌキノカミソリの近くに生えています。タヌキ……とかキツネ……とか面白い名前が登場しますが、深い理由がある訳ではなく、単に区別用に使われているようです。


 シナノアキギリ(信濃秋桐;シソ科アキギリ属)。長野県松原湖周辺と群馬県の一部でのみ自生する多年草。絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。種の保全を図るため、小石川植物園が長野県の協力を得て移植したもの。


 木の実もボチボチ見かけるようになりました。これはボダイジュ(菩提樹;アオイ科シナノキ属)。中国原産の落葉高木。この実は菩提子といい、数珠をつくります。


 関東~沖縄に自生する落葉小高木マルバチシャノキ(丸葉萵苣の木;ムラサキ科チシャノキ属)。多くの黄色の実が塊状になって付いています。


 中国原産の落葉高木エンジュ(槐;マメ科マメ亜科エンジュ属)。ササゲのような細長い果実が多数枝先から垂れ下がっています。


 わが家のテラスから見た小石川植物園の風景です。ようやく晴れ上がった夏空が見られるようになりました。



 わが家の庭ではサルスベリ(百日紅;ミソハギ科サルスベリ属:上)の花やハイビスカス(アオイ科フヨウ属:下)の花が色鮮やかに咲いています。


 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2021年8月)

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2019年10月24日 (木)

金木犀が香る10月下旬の小石川植物園

 強風で房総半島に大停電を引き起こした先月の台風15号に引き続き、今月中旬に襲来した台風19号は、大雨により東日本各地の河川を氾濫させ、甚大な被害をもたらしました。季節外れのスーパー台風には本当に驚かされました。

 その後、10月下旬になってようやく秋らしい日々が続くようになり、キンモクセイが香る小石川植物園を楽しんできました。

 園内のキンモクセイ(金木犀;モクセイ科モクセイ属)の木々に鮮やかなオレンジ色の花がちょうど所狭しと咲き出していて、満開になっていました。


 近づいてみると、あの金木犀の秋の香りが漂っています。キンモクセイの花期は非常に短いので、うまく狙いを定める必要があります。


 キンモクセイの近縁種のウスギモクセイ(薄黄木犀;モクセイ科モクセイ属)。淡黄色の花がまだ咲き残っていました。花の色はキンモクセイより薄く、香りも乏しいのが特徴です。


 オオモクセイ(大木犀;モクセイ科モクセイ属)の白い花。メタセコイア林の近くで見かけました。花の形状は近縁種のキンモクセイに似ていますが、香りはありません。



 秋の季節の風物詩のサザンカ(山茶花;ツバキ科ツバキ属)の花がポツポツと咲き出しました。上の赤花には三国紅、下の白花には雪山というサザンカの品種名が付いています。年末にかけていろんなサザンカの花を楽しむことが出来ます。


 フサフジウツギ(房藤空木;ゴマノハグサ科フジウツギ属)。残っている淡紫色の房状の花穂にチョウが集い、盛んに蜜を吸っています。


 日当たりのよい原野などによく見られる落葉小高木クサギ(臭木;シソ科クサギ属)。ピンク色の星形のガクの中心に紺色の種子が付いています。



 園内の木々の風景です。上はツツジ園からの眺望(イチョウやウルムス・プロセアの大樹)、下は園入口付近に立ち並ぶメタセコイア林ですが、いずれもようやく色づきが始まっていました。


 巨木ゾーンに立ち並ぶ大樹、巨樹も同様です。これは北米中部原産の落葉高木のユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)の高木です。


 スズカケノキ(鈴懸の木;スズカケノキ科スズカケノキ属)の大樹。ヨーロッパ南東部からアジア西部原産の落葉広葉樹。


 アメリカスズカケノキ(スズカケノキ科スズカケノキ属)の大樹。北米原産の落葉広葉樹でスズカケノキの近縁種です。


 木々によっては紅葉・黄葉が少しづつ進んでいました。これは北米原産の落葉高木のハナミズキ(花水木; ミズキ科ミズキ属)。


 ウダイカンバ(鵜松明樺;カバノキ科カバノキ属)。日本の中部以北から北海道、千島列島にかけて生育する落葉広葉樹。


 ヌマミズキ(沼水木;ヌマミズキ科ヌマミズキ属)。北アメリカの東部から南東部に広く分布する落葉高木。


 いろんな木の実も見かけました。これはピラカンサ(バラ科トキワサンザシ属、品種名:ローズデール)のたわわな実。年末にかけて真赤になります。


 山麓の湿地や湿った原野に生える落葉低木のコムラサキ(シソ科ムラサキシキブ属)が紫色の実をつけていました。


 ツクシカイドウ(筑紫海棠;バラ科リンゴ属)の枝先に数多くの赤い実が付いていました。九州に分布していたが、現在は絶滅危惧種。


 全国の野山に自生する落葉高木のケンポナシ(玄圃梨;クロウメモドキ科ケンポナシ属)。小さな梨のような実が付いています。



 珍しい花に出会いました。紀伊半島に自生するキイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑;ユリ科ホトトギス属)です。シダ園の石垣の上部から垂れ下がり黄色い花を下向きにつけていました。同じホトトギス属のタイワンホトトギスとは花の形状が少し違いますが、花の内側に斑点がついています。


 中国からの帰化植物で九州、四国、沖縄などで自生するショウキズイセン(鍾馗水仙;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)。黄色の花が少しだけ咲き残っていました。形状はヒガンバナとそっくりで、黄花彼岸花とも言われる。9月のヒガンバナより遅れて10月頃に咲き出します。


 トネアザミ(利根薊;キク科、別名タイアザミ)の花の蜜を求めて昆虫が集っています。10月になってから咲き出す晩秋の花です。

 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2019年10月)


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2019年9月29日 (日)

小石川植物園に自生する彼岸花、ようやく月末に満開



 小石川植物園では、いつも秋の彼岸の頃に妖美に燃えるようなヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)が咲き広がります。しかし今年は残暑が長く続いたためか、例年より1週間ほど遅れて9月末にようやく満開になりました。以下ヒガンバナを含め9月中下旬の小石川植物園の風景になります。

(真赤に染まるヒガンバナ)

 日本全域に分布するヒガンバナは全て遺伝的に同一の三倍体のため、種子で増えることができず、球根を増やしながら広がります。ヒガンバナ群生地のメタセコイア林付近の林地をはじめ、園内の随所が真赤に染まります。


 ヒガンバナは鱗茎にアルカロイドを多く含み、全草が有毒植物ですが、アゲハチョウにとってはヒガンバナの蜜が好物のようです。花に集っているアゲハをよく見かけます。


 園内に自生するヒガンバナは大部分が赤花ですが、白花曼殊沙華とも呼ばれる白い花も少し交っています。


 ヒガンバナは多くの呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の別名が最も有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。


 一方、わが国では墓地などにも植えられ、ちょうど秋の彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。先祖の霊を弔う気持ちにマッチしています。


 ヒガンバナといえば奥武蔵の巾着田が有名ですが、規模は小さいものの小石川植物園に自生するヒガンバナも野趣たっぷりで、なかなか見応えがあります。


 園内ではヒガンバナ以外にもいろんな季節の花々が見られました。これはハギ(萩;マメ科ハギ属)の赤紫色の花です。秋の七草の一つですが、草本ではなく木本に属します。小さな花を細い枝に多数つけて枝垂れて咲いています。

(ヒガンバナ以外の花々)

 八重咲きのスイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)。一日花で、白色から薄赤色に徐々に変わってしぼみます。


 中国原産の落葉低木トウフジウツギ(唐藤空木;ゴマノハグサ科)。残っている薄紫色の花穂にチョウが集っています。


 フクロミモクゲンジ(袋実木欒子; ムクロジ科モクゲンジ属)の黄色の花が盛んに咲いていました。細かい花がハラハラと降り注ぎ、木の下の地面は黄金色のオガクズを敷き詰めたようになります。


 その後、9月下旬には花の後にベージュ色の袋実が付いていました。


 チベットの高地に自生する多年草シュッコンソバ(宿根蕎麦;タデ科ソバ属)。白い花が盛んに咲いていました。普通のソバの花と似て、質素な趣があります。地下に黄赤色の根茎を残し越冬する。


 植え込みなどを覆うつる性植物のヤブガラシ(藪枯らし;ブドウ科ヤブガラシ属)。アゲハが盛んに蜜を吸っています。


 生命力が強く灌木をすっぽりと覆うつる性多年草のクズ(葛;マメ科クズ属)。赤紫色の花を付けていました。

(台風15号による倒木被害)




 9/9早朝に首都圏を通過した台風15号の強風の影響で、千葉県全域で長期間停電が続くなどの大きな被害がもたらされましたが、小石川植物園でも多くの大樹・高木の倒木被害が見られました。左から、アワブキ(泡吹;アワブキ科アワブキ属)、ギンヨウボダイジュ(銀葉菩提樹;アオイ科シナノキ属)ユリノキ(百合の木;モクレン科)、タイザンボク(泰山木;モクレン科モクレン属)。やむを得ないこととは言え、痛ましい限りです。


 詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2019年9月)


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2018年10月 7日 (日)

台風24号の被害を受けた小石川植物園

 10月に入っても相次ぐ台風の襲来など荒れ気味の天気が続いていましたが、しばらくして秋らしい落ち着いた感じが戻ってきました。


 晴れ上がった10月上旬の一日、久しぶりに小石川植物園を回ってきました。園内はこの時季ならではの秋の花々が咲き、赤く色づく木の実を見かけました。その一方で、園内の樹木が台風24号の強風で太い木枝が吹き飛ばされている状況も散見されました。



 イチョウやニレの木の巨木(上)、メタセコイア林(下)などの様子を見ると、深緑の夏木立が少しづつ色づいてきました。


 この季節ならではの花々が咲いていました。これはショウキズイセン(鍾馗水仙;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の黄色の花。形状はヒガンバナとそっくりですが、ヒガンバナより遅れて咲き出します。


 コガネバナ(黄金花;シソ科タツナミソウ属)。ロシアの極東地方からモンゴル、中国北部、朝鮮半島にかけて分布する多年草。和名からは黄金色の花を連想しますが、実際は深い青色の花です。根の断面が鮮やかな黄色をしているのが和名の由来です。


 万葉の昔から日本人に親しまれてきた秋の野草フジバカマ(藤袴;キク科ヒヨドリバナ属)です。花に虫が集まっていました。


 チベットの高地に自生する多年草シュッコンソバ(宿根蕎麦;タデ科ソバ属)を草むらで多く見かけました。質素な白い花に清楚な趣があります。


 色づいた木の実も随所で見かけました。これは柴田記念館のすぐ近くに生えるピラカンサ(バラ科トキワサンザシ属)の園芸品種のローズデール。ずっしりとした無数の木の実が赤く色づき始めました。


 日本庭園の池辺に生えているモッコク(木斛;ツバキ科モッコク属)の木に赤い実が付いていました。しばらくすると実が裂開して赤い種子が出てきます。モッコクは庭木としてよく植えられています。

  9月30日夜間から10月1日未明に東京地方に来襲した台風24号の強風が小石川植物園の樹木にも被害をもたらしました。園内を回ってみると、太い木枝が吹き飛ばされている状況が散見されました。

 これは、巨木並木ゾーンのアメリカシナノキ。



  日本庭園近くのナンキンハゼ(上)。例年11月頃になると美しい紅葉(下、2017.11.17撮影)が見られるのですが、今年は心配です。


 カジノキも相当に枝木がやられていました。


 また、園入口からメタセコイア林へ入る散策路の入口にヤマザクラの大木が生えていて、例年3月頃に満開の花を楽しむことができるのですが、このヤマザクラの木が見当たりませんでした。倒木したものと思われ、大変残念です(上記写真は2018.3.28撮影)。


 詳細は
   …> 季節のスケッチ(2018年10月)


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2016年11月26日 (土)

11月下旬、小石川植物園は鮮やかな紅葉・黄葉が主役


 11月下旬は重大な気象の出来事が相次ぎました。まず22日朝方に福島県などで最大震度5弱を観測し、東北地方沿岸に津波が押し寄せました。東日本大震災の余震だとのこと、まだまだ油断が出来ません。それから2日後の24日には強大な寒気が日本列島に南下するとともに南岸低気圧の東進と相まって、都心でも降雪を観測。11月では何と54年ぶりだそうです。
 さて、週末の26日はすっきりと晴れ上がりましたので、風邪気味だったのですが、小石川植物園内を散策してきました。鮮やかな木々の紅葉・黄葉が園内の主役でした。以下、園内の風景を紹介します。


 入口から日本庭園へ向かう途中の池の風景。水面にイチョウの黄葉やモミジの紅葉が逆さに映っていて、晩秋の風情たっぷりでした。春の時期には、この池面は新緑とサクラの花に覆われていました。



 中国原産の落葉高木ナンキンハゼ(南京櫨;トウダイクサ科ナンキンハゼ属)。無数の木の葉が秋の日差しに輝く大樹の紅葉の姿は圧巻でした。下の写真にナンキンハゼの実が見えますが、種皮が蝋状の物質で覆われ、ハゼノキと同じようにロウを採取します。


 ナンキンハゼに隣接する落葉小高木のハゼノキ(ウルシ科ウルシ属)も美しく紅葉していました。ハゼノキはモミジ、カエデとともに山の紅葉の代名詞になっていて、四国・九州・小笠原・琉球などの温暖な場所に生育します。ハゼノキの房状の実からロウを採取、和ロウソクやクレヨンなどに利用されます。


 イロハモミジの並木径です。まだら模様ながらも紅葉がかなり進行していました。春には心地よい緑のトンネルに変貌します。



 並木径のイロハモミジの葉の様子を観察すると、真っ赤に紅葉しているものや、まだ緑葉のもの、橙色のものなど様々です。日当り加減などに左右されるそうです。


 ヌマミズキ科の木々の紅葉も見事です。これは北アメリカの東部から南東部の湿地に広く分布する落葉高木のヌマミズキ(沼水木;ヌマミズキ科ヌマミズキ属)です。真っ赤に紅葉していました。


 ヌマミズキと同属のニッサボク(ヌマミズキ科ヌマミズキ属)の紅葉も秋の日差しに輝いていました。ニッサボクは中国原産の落葉小高木で、欧米では街路樹や庭園樹に用いられています。


 精子発見で有名なイチョウの大樹の見事な黄葉です。かつて平瀬作五郎博士がこの大イチョウを観察して動く精子を発見し、世界的に有名な研究業績になりました。イチョウの大樹の左はニレ科のウルムス・プロセアの大樹ですが、落葉が進んでいました。


 中国原産の落葉高木シナユリノキ(支那百合の木;モクレン科ユリノキ属)です。黄色や褐色に輝く無数の木の葉が大樹を覆っていました。つい見落としがちですが、初夏に小さな花を付けます。


 植物園入り口近くに生えるシナマンサク(支那満作;マンサク科マンサク属)の黄葉が陽光に輝き、青空に美しく映えていました。新春にはふわふわした黄色の花を咲せてくれます。


 中国原産の落葉低木シナミズキ(支那水木;マンサク科トサミズキ属)も黄葉が進んでいました。春になると、シナミズキの小さく房状の黄色の花が周りの空間を埋め尽くすようになります。


 ラクウショウ(落羽松;スギ科ヌマスギ属:右)とメタセコイア(スギ科メタセコイア属:左)の高木が共に鮮やかな褐色に輝いていました。ラクウショウは水湿地に生育し気根を有する落葉針葉樹です。


 園入口付近のメタセコイア林。11月初旬の頃と比べるとかなり褐色が深まってきました。


 メタセコイア林のすぐ隣に咲くグランサムツバキ(ツバキ科ツバキ属)の白い大輪の花。グランサムツバキは1955年に香港で発見され、当時の香港総督グランサム卿にちなんでこの名が付けられたそうです。

 上記以外にもいろんな写真を撮りました。
           …>季節のスケッチ(28年12月)

 植物園の紅葉・黄葉は12月中旬頃まで、しばらく楽しむことが出来ます。


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2016年3月 5日 (土)

小石川植物園、鎮魂花のような真紅のカンヒザクラが満開

 あのすさまじい被害をもたらした東日本大震災の発生 (2011.3.11)からまもなく5年になり、テレビでは連日復興状況の特集番組が放映されています。かなり復興が進展しているものの、被災地の皆さんが元の生活を取り戻すにはまだまだ時間がかかりそうです。まさに未曾有の大災害だったことが再認識させられます。
 週末のこの日は春暖の陽気で小石川植物園内を気持ちよく散策してきました。園内では、真紅色のカンヒザクラが満開になっていて、壮観な眺めでした。いつもこの時期に満天星のように大空を覆いつくす光景は、東日本大震災の犠牲者の鎮魂花のように思えてなりません。
 春の野の花もハナニラ、オオイヌノフグリ、コスミレ等々、本当に賑やかに咲き出してきました。


  濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与えるカンヒザクラ(寒緋桜)が満天星のように大空に広がっていました。カンヒザクラはサクラの原種の一つで沖縄に自生します。東日本大震災が発生したこの頃にいつも満開になります。


 満開の花は鳥たちの大好物のようです。鳥の多くは大食漢のヒヨドリなのですが、この中にインコも交じっていました。野生のインコとは思えないので、どこからか逃げ出して棲みついたのでしょうか。


 3月末頃に満開になるソメイヨシノが真打だとすれば、カンヒザクラも含め前座のサクラの花が次々に登場します。このあでやかなピンク色の小振りな花が咲き出したのは早春桜です。ピンク色なので華やいだ雰囲気を醸し出してくれます。この早春桜は、富士山や箱根などの山地に分布する富士桜(マメザクラともいう)の園芸種になります。


 このひそやかな落ち着いた感じのシナミザクラ(支那実桜)もサクラの仲間です。中国原産で実が食用になるので。カラミザクラ(唐実桜)の別名があります。中国では桜桃と呼ばれます。同じ食用種のサクラとしてはセイヨウミザクラ(西洋実桜)があり、わが国ではいわゆるサクランボとして栽培されています。シナミザクラの実は若干酸味が強いとのこと。


 黄金色の花々も目立ってきました。例年より少し早めですが、サンシュユ(山茱萸;ミズキ科)の花が見頃になってきました。小さな黄金色の花が木枝の至るところから吹き出している感じで、遠くから見ると林間の空間で細かく点描されているかのようです。中国、朝鮮半島原産の落葉小高木。江戸時代中期に薬用として渡来したとのことで、秋に付ける赤い実は、滋養・強壮の薬効があります。


 マンサクの花々も黄金色を放っています。これはアテツマンサク(阿哲満作;マンサク科マンサク属)です。アテツの名は最初に発見された岡山県阿哲地方にちなんで付けられています。


 メタセコイア林の近くでは同属で北米原産のハヤザキマンサク(早咲満作;マンサク科マンサク属)も咲いていました。ハヤザキマンサクの花は少し橙色が強く、小さくまとまって咲きます。


 園内の梅林では、まだ新しいウメの花が次々と咲き出していて、まだまだ賑やかです。1月から3月までの長い期間、ウメの香りと花を楽しむことができます。


 24節気の啓蟄の頃になると、虫たちだけでなく野の花も続々と地面から顔を出してきます。これはハナニラ(花韮;ユリ科イフェイオン属)。清楚な白い花が咲き始めました。ハナニラの花の形はアマナに似ていることからセイヨウアマナとも呼ばれます。これから園内の各所に咲き広がります。


 落ち葉の中から可憐な白い花が咲き出しているのは春の妖精の仲間のユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)。先月数輪だけ咲き出していたが、この日は多くの花が顔を出してきました。


 星くずのように可憐な青い小さな花のオオイヌノフグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属)が咲き広がってきました。この中にヒメオドリコソウ(姫踊り子草;シソ科オドリコソウ属)も見えます。


 コゴメイヌノグリ(ゴマノハグサ科クワガタソウ属 )が米粒のように小さな白い花を咲かせていました。花の形はオオイヌノフグリと似ていますが、ずっと小振りです。元々小石川植物園に研究用に持ち込まれたものが広がって野生化したそうです。


 先端に緑色の花序を形成するトウダイグサ(燈台草;トウダイグサ科トウダイグサ属)も多く見かけました。燈火の皿に見立てて和名が付いています。茎や葉を傷つけると白い乳液を出し、全草にわたり有毒。


 散策路でタチツボスミレ(立坪菫;スミレ科スミレ属)の花が咲いていました。薄紫色の可憐な花が園内のあちこちに咲き出します。わが国では平地から低山に分布し、日当たりのよい道端や草原、林地などに普通に見られます。


 ヨーロッパから東アジアに分布する帰化植物のミチタネツケバナ(道種漬花;アブラナ科タネツケバナ属)の花も所々で見かけました。茎には葉がほとんど付かず、根生葉がロゼットをつくっています。

 これ以外にも、色んな花々を見つけました。これから園内の散策が快適で楽しい時期になります。

…> 季節のスケッチ(28年3月)




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2014年10月13日 (月)

10月の小石川植物園、黄色のヒガンバナを見つける


 10月に入って、週末毎に台風18号、19号と次々に大型台風が日本に襲来しました。さらには、その前の9月最後の週末は御嶽山の水蒸気噴火がありました。本来であれば暑くもなく寒くもなく絶好の行楽シーズンのはずですが、散々な状況です。この「大荒れの気象」はたまたまの一過性のものであって欲しいのですが、地球規模の気候変動の一環なのかも知れません。大いに気になるところです。

 さて、台風19号の襲来を翌日に控えた10/12(日)の東京は、曇天ながらもまだ穏やかな天気でしたので、急いで小石川植物園を回ってきました。

 園内の様子ですが、ショウキヒガンバナ(黄色のヒガンバナ)との初出会いがありましたし、晩秋の風物詩のサザンカの花が数輪咲き始めているのを見つけました。これ以外にも、先月から咲き続ける赤白のシュウメイギクや、シオン、ソメイヨシノ、セイタカアワダチソウなどの多くのキク科の花々を見かけました。




 形状はヒガンバナとそっくりですが、黄色の花を付けたショウキズイセン(鍾馗水仙;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)がヒガンバナより約1ヶ月遅れで咲いていました。何度も植物園に通っていますが、初めて見ました。ヒガンバナが群生する草むらの片隅に生えていましたので、近年ここに植え付けられたのかも知れません。

 ショウキズイセンは、ショウキランともいい、四国から沖縄などの山野に分布します。昔は沖縄の野山に沢山咲いていたそうです。名前のショウキは、立派な髭を生やし冠をつけた鍾馗様(中国の道教系の神様)のことです。

 黄色のショウキズイセンが加わり、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に属する「ヒガンバナの仲間」がまた増えました。次のように赤、白、ピンク、橙、黄といったカラフルなコレクションになりました。

真紅に燃えるようなヒガンバナは9月の彼岸の頃に一斉に咲き出します。アゲハにとってヒガンバナの蜜が大好物なようで、舞いながら花から花へと次々に巡り回っていきます。(2013年9月)

ヒガンバナは赤い花が大多数ですが、白い花も少し咲いています。シロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華)ともいわれます。(2013年9月)

ナツズイセン(夏水仙)は淡桃色の花を付けます。林地の暗い茂みの中で8月頃に見かけます。(2012年8月)

橙色のキツネノカミソリ(狐の剃刀)の花は、やはりの林地の涼しい所で8月頃に見かけます。面白い和名がですが、春先の伸びた葉をキツネの剃刀にたとえ、この名が付いたとのことです。(2012年8月)

 翌日台風が接近するということですが、この日はまだ大丈夫。暑くもなく寒くもなく程良い天気で、桜並木の下では家族連れが敷物を広げていました。


 ツバキ園を覗いてみたら、やはり10月です。白いサザンカ(山茶花)の花が咲き出していました。秋冬の花の少ない景色の中で赤や白のサザンカの花は貴重です。サザンカはこの季節の風物詩で、歌にもよく登場します。小学唱歌「さざんかさざんか咲いた道 たき火だたき火だ落ち葉たき」や、 演歌「赤く咲いても冬の花 咲いて寂しい山茶花の宿」などの歌はポピュラーです。これからどんどん咲き出してきます。



 先月咲き始めたシュウメイギク(秋明菊;キンポウゲ科イチリンソウ属)の花が盛んになってきました。風にたなびく白花は可憐な野の花という趣があります。シュウメイギクの名前からはキク科のように思えますが、実はキンポウゲ科の植物です。
 一方、赤紫色の八重咲きの花は立派な勲章のような形状をしています。京都北山の貴船に自生していることから貴船菊の別名があります。


 ここからは正真正銘のキク科の花々が続きます。薄い紫色の花がゆらゆらと優雅に風にたなびいているのはシオン(紫苑;キク科シオン属)の花です。古い時代に薬草として渡来したが、花が美しいので薬草より観賞用として栽培が盛んになったとのことです。


 静かな佇まいのカントウヨメナ(関東嫁菜;キク科ヨメナ属)の花を園内の随所で見かけるようにました。カントウヨメナはいわゆる野菊の一種です。木の根元でひっそりと群れて咲いていました。


 背の高いセイタカアワダチソウ(背高泡立草;キク科アキノキリンソウ属)を園内の草むらなどの各所に見かけました。スクッと立った枝先に形状のいい黄色の花穂を付けます。北米原産の帰化植物で各地の河原や空き地などに群生します。


 風になびくススキ(薄;イネ科ススキ属)の穂が秋の陽射しを受けゆらゆらと輝いていました。典型的な秋の風景です。ススキは秋の七草の一つとして古くから親しまれ、全国津々浦々に見かけます。


 先月細かい無数の黄色の花が地上に降り注いでいたフクロミモクゲンジ(袋実木欒;ムクロジ科モクゲンジ属)の大樹を見上げると、今度は沢山のベージュ色の花が咲いているように見えました。実は、色づいた花のように見えるのは黒い実の果実が収まった袋です。この大樹は姿・形を変えて色々と楽しませてくれます。

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2014年9月28日 (日)

久しぶりの小石川植物園、スイフヨウ、ヒガンバナ、萩などの秋の花々


 9月下旬になってデング熱騒動がようやく収まりそうになってきました。やれやれと思っていたところ、昨日は秋の紅葉シーズンを迎えた木曽の御嶽山が噴石を伴う水蒸気噴火を起こし、数10名の被害者が出たようです。


  [NHK ニュースWEBより]

 自然は私たちに季節の喜びや生きるための癒やしを与えてくれます。が、同時に多くの試練を課してきます。当たり前のことですが、いろんな災害が発生するたびに再認識させられます。


(秋分の日の小石川植物園)

 さて、先日の秋分の日(23日)、久しぶりに小石川植物園を訪れてきました。デング熱対策として虫除けようのリストバンドを2カ所付けた重装備の格好で回ってきましたので、蚊には全く刺されませんでした。

 園内の様子ですが、季節は暦通りに進んでいて、スイフヨウ、ヒガンバナ、萩などの秋の花々を見かけることができました。

 まず、植物園に入って直ぐの所にスイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)の花が咲いていました。

 八重咲きのスイフヨウの花は一日花で、白色から薄赤色に徐々に変わってしぼみます。酒を飲んで顔がだんだん赤くなってくる様子から「酔う芙蓉」といい、この名になったとのこと。普通に見る花は白花か赤花ですが、この日はちょうど変身中の花を撮ることができ、ラッキーでした。

 スイフヨウの木から少しだけ離れた所にフクロミモクゲンジ(袋実木欒子; ムクロジ科モクゲンジ属)の大樹があります。

 樹上を見上げると、黄色の花が盛んに咲いていました。黄色の細かい花がハラハラと舞い降りて、木の下の地面は黄色のオガクズを敷き詰めたようになります。まさに、英名の golden rain tree そのものです。

 次はこの季節の風物詩のヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)です。園内の至る所で真っ赤に広がっていました。

 ヒガンバナにはその美しさ、妖しさ等からいろんな呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の呼び名が有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。一方、わが国ではちょうど彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。ヒガンバナは妖しく燃えるような真っ赤な花が大部分ですが、少しだけ白いヒガンバナも咲いています。白花曼珠沙華ともいいます。


 毒花、痺れ花の別名が付くヒガンバナは全草有毒なのですが、アゲハには無毒のようです。アゲハはヒガンバナの蜜が大好物で、舞うように次々にヒガンバナを巡っていきます。


 園内の至る所でヒガンバナを見かけました。ヨメイヨシノの大樹の根元でもこのように。日本に分布するヒガンバナは全て遺伝的に同一の三倍体のため、種子で増えることができず、球根を増やしながら広がります。


 ヒガンバナは昔から墓地に植えられ、故人を弔うための花といった感じもします。故人の霊が宿るようなヒガンバナの後方に見えるのはラクウショウ(落羽松)の気根ですが、まるで野辺に立つお地蔵さまのように見えます。

 秋の七草の一つである萩の花も盛んに咲き出していました。

 全国の山地に分布するマルバハギ(丸葉萩;マメ科ハギ属)が赤紫色の蝶形の花を付けていました。名のとおり丸い葉が特徴です。マルバハギや同属のヤマハギが、「秋の七草の萩」とされています。


 ミヤギノハギ(宮城野萩)が紅紫色の小さな花を細い枝に多数つけ、枝垂れて咲いていました。宮城県に多く自生することから和名が由来します。わが家の庭にも同じ萩の木がありましたが、旺盛な繁殖力でどんどん成長します。


 珍しい白い花を付けるシロバナハギ(白花萩)も見かけました。シロバナハギはミヤギノハギの変種です。


 白いシュウメイギク(秋明菊;キンポウゲ科イチリンソウ属)の花が可憐に咲いていました。シュウメイギクの名前からはキク科のように思えますが、実はキンポウゲ科の植物です。シュウメイギクには白い花と趣が異なる、勲章のように立派な形をした八重咲きの赤い花もあります。京都北山の貴船に自生していることから貴船菊の別名があります。


 山野の半日陰地にみられる多年草のホトトギス(杜鵑;ユリ科)も見かけました。面白い和名が付いていますが、花びらの斑点模様が鳥のホトトギスの胸の模様に似ていることに名が由来。

 秋の花々以外にも赤い実を付けている樹木を多く見かけました。秋の季節を実感します。

 初夏に美しい花を付け楽しませてくれるハナミズキ(花水木;ミズキ科ミズキ属)ですが、頭上の木の枝をよく見ると、赤い実が点々と付いているのがわかります。葉も少しずつ色づいてきました。


 これは日本庭園の池の周りに生える落葉低木のゴンズイ(権萃;ミツバウツギ科ゴンズイ属)。赤い袋果の実が数多く付いています。やがて黒い種が出てきます。


 ニイタカガマズミ(スイカズラ科ガマズミ属)の低木にガマズミの赤い実が付いていました。植物園の名札にはViburnum betulifolium Batal.の英語名しか付いていませんでしたので、調べてみたらニイタカガマズミが和名のようです。ニイタカ山は台湾の最高峰ですので、台湾に多く自生していると思われます。


 秋に赤い実でなく、珍しい紫色の実を付けるのは落葉低木コムラサキ(小紫;クマツヅラ科ムラサキシキブ属)です。その名のとおり紫色の小粒の実が房状に連なって枝垂れながら枝中に付いていました。

  …> 季節のスケッチ(26年9月)

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2014年9月 7日 (日)

9月の花は真紅に燃えるヒガンバナ


(デング熱騒動)
 9月に入って暑さが納まってきましたが、蚊を感染媒介とするデング熱騒動が収まる気配がありません。感染場所とみられる都立代々木公園で採取した蚊から、デングウイルスが検出されたことを受け、代々木公園が閉鎖されました。さらに、新宿中央公園、神宮外苑、外濠公園などの蚊に刺された感染者が出て、波紋が広がっています。

 ただ、デング熱の症状を調べてみると一過性の熱性疾患であり、重症化することはあまりないようです。症状的には、発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛など、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含むとのこと。西アフリカのエボラ出血熱のイメージと重なって、大騒ぎになってしまった感があります。

 私にとって困ったことには、植物園に行きづらくなったことです。新宿御苑は閉鎖になったようです。また、小石川植物園は閉園になっていませんが、窓から園内の様子を覗いてみると、散策している人が皆無です。長袖、長ズボンの服装で虫除け器を持参すれば大丈夫かと思うのですが、万一の場合のことを考えた場合、植物園訪問をためらってしまいます。こんなわけで、今回はこれまでの季節のスケッチのコンテンツを用いて記事をまとめることにしました。

(季節の花ヒガンバナの紹介)

 9月になると次第に暑さも収まり、野山に咲く秋の花々を楽しむことが出来るようになります。いろんな秋の花々の中で、今回は妖しく真紅に燃えるように咲き出すヒガンバナ(彼岸花)を紹介します。

 ヒガンバナにはその美しさ、妖しさ等からいろんな呼び名があります。曼珠沙華(まんじしゃげ)の呼び名が有名ですが、サンスクリット語からきたもので天界に咲く美しい花ということです。一方、わが国ではちょうど彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。

            (2013.9@小石川植物園)

            (2004.9@小石川植物園)
 小石川植物園では、林地の林床部の草むらをはじめとして園内随所に真紅に燃えるようなヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の花々が数多く咲き出します。毒花、痺れ花の呼び名もあるヒガンバナは全草有毒なのですが、アゲハには無毒のようです。ヒガンバナの蜜が大好物で、舞いながら花から花へと次々に巡り回っていきます。


            (2013.9@小石川植物園)
 ヒガンバナは赤花が大部分ですが、少しだけ白いヒガンバナも咲いています。白花曼珠沙華ともいいます。


            (2004.9@小石川植物園)
 ヒガンバナは昔から墓地に植えられ、故人を弔うための花といった感じもします。この写真は、かつて親が亡くなった直後に植物園で撮ったものです。故人の霊が宿るようなヒガンバナと、その後方に仏像群のように見えるラクウショウ(落羽松)の気根の組み合わせに不思議な符号を感じました。


            (2012.9@小石川植物園)

            (2008.9@小石川植物園)

            (2008.9@小石川植物園)
 この時期、植物園のいろんな所にヒガンバナを見かけます。まさに9月の花と言えます。
 ヒガンバナはその生長サイクルも独特です。すなわち、1週間ほどで花も茎も枯れてしまった後、球根から緑の葉がすくすくと伸びてきます。そして、翌年の春までしっかりと光合成をして球根に栄養をため込み、夏を迎える頃には、葉を枯らして休眠期に入ります。やがて秋の彼岸の頃に、再び地表に姿を現して、真っ赤な花を咲かせます。


            (2010.10@巾着田)

            (2010.10@巾着田)
 奥武蔵にある日高市の巾着田(きんちゃくだ)はヒガンバナの群生地として有名です。巾着田とは日高市内を流れる高麗川の蛇行により長い年月をかけて形成され、その形が巾着の形に似ていることから、そのように呼ばれています。かって訪れた時には面積約22ヘクタールの川に囲まれた巾着田の平地が、ちょうど赤い絨毯を敷き詰めたように一面が満開の彼岸花で真紅に染まっていました。あまりの美しさに息をのんだものです。この地は水田の休耕田でしたが、地元では彼岸花、菜の花、コスモスの種蒔き、球根手入れや草刈りを丁寧に行って整備しているとのことでした。


            (2008.9@皇居東御苑)
 皇居東御苑でも見かけました。典雅な感じの数寄屋風の書院茶室で、二の丸庭園に建つ諏訪の茶屋の前の草地に、紅白のヒガンバナが咲いていました。この他土手などにも咲いています。


            (2012.8@小石川植物園)
 次にヒガンバナの近縁種を紹介します。これはナツズイセン(夏水仙;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の淡桃色の花です。林地の茂みに8月に見かけます。水仙の名を含んでいますが、水仙よりも彼岸花に似ています。


            (2012.8@小石川植物園)
 林地の涼しい所に見かける橙色のキツネノカミソリ(狐の剃刀;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の花。やはりヒガンバナの同属で、8月に咲きます。面白い和名がですが、春先の伸びた葉をキツネの剃刀にたとえ、この名が付いたとのことです。


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