囲碁・将棋

2017年12月13日 (水)

囲碁・将棋界に朗報、羽生、井山に国民栄誉賞を同時授与へ


 囲碁・将棋界に朗報が届きました。政府は12/13、将棋で初めて永世7冠(竜王、名人、棋聖、棋王、王位、王将、王座)を達成した羽生善治竜王と、囲碁で初の2度にわたる7冠(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段)独占を果たした井山裕太7冠に国民栄誉賞を同時に授与することを進めていくと発表しました。菅官房長官は「いずれも歴史に刻まれる偉業であり、社会に明るい希望と勇気を与えてくれた。広く国民に親しまれている将棋、囲碁で多くの国民に感動を与えた」と説明。年明けにも、正式決定され表彰式が行われる運びになる見通しです。


将棋の羽生永世7冠(左)と囲碁の井山7冠(囲碁)
(写真はそれぞれ日本将棋連盟、日本棋院のHPから)

 最近は、AI(人工知能)将棋・囲碁ソフトの棋力が著しく向上しています。このところ、将棋界では佐藤天彦名人が将棋ソフトのPポナンザに完敗、また囲碁界でも世界的なトップ棋士のイ・セドル9段がやはりGoogleアルファ碁に完敗するなど、関係者に大きな衝撃を与えました。

 特に将棋界では昨年になりますが、AIソフトをカンニングしたとして無実のプロ棋士を出場停止処分にする不祥事も発生するなど、暗雲が漂い始めていたところでした。幸い、将棋連盟が早々に処分の間違いを認め事態収拾に努めたことや、中学生棋士の藤井4段がデビュー後負けなしで29連勝の大記録を達成したことなどで、今年後半は明るさ戻るようになってきました。

 このような時に国民栄誉賞の快挙です。明るい展望が一気に広がったような気がします。今や将棋界、囲碁界ともに羽生、井山の2人の天才棋士を目標に続々と新世代の若手が台頭しつつあり、新たなブーム到来の予感もあります。また、人間の棋力を超えたともいわれるAI(人工知能)とは、対局して勝負を争うこと以外に、うまく対峙し共生する道を模索することが肝要です。困難なハードルを超えうる人間の叡智に期待したいと思います。


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2017年9月 3日 (日)

9月初旬の小石川植物園、ススキ、ハギなど秋の風情ただよう


 9月に入って最初の日曜日、国内外からビッグニュースが飛び込んできました。海外からは、隣国の北朝鮮が水爆級の核実験を実施したとのニュースです。最近、盛んにICBM用の弾道ミサイルの発射実験を繰り返していましたが、今度はICBMに搭載する核弾頭の実験だそうです。一体、北朝鮮がどこに向かって進もうとしているのか、正直言って予測不能です。

 一方、国内では将棋界からの素晴らしいニュースです。破竹の快進撃を続ける中学生棋士の藤井聡太4段が、NHK杯のテレビ棋戦で永世名人の資格を持つ超一流棋士の森内俊之九段にも見事勝利しました。ずっと番組を見ていましたが、従来の棋士とは異なる戦法でもってたちまち局面をリードし、そのまま寄り切った感じでした。まるでAIを内包しているかのような新感覚の天才棋士の出現です。今後の活躍が大いに楽しみです。

 さて、自然界では9月に入った途端、これまでの蒸し暑さが一変し、さわやかな天気になりましたので、久しぶりに小石川植物園を回ってきました。園内では、サルスベリ、ムクゲなどの夏の花々もまだ咲き残っていましたが、ススキ、オミナエシ、ハギなどの秋の七草も見かけるようになり、園内には早くも秋の風情が漂っていました。


 日本庭園の池の周りに秋の七草のススキ(イネ科ススキ属)の穂が立ってきて、風にそよいでいました。ススキは尾花とも呼ばれ、全国津々浦々に見かけます。古くから親しまれ、お月見には欠かせない草です。


 ハギ(萩;マメ科ハギ属)の紅紫色の小さな花も咲き始めました。ハギは草本ではなく木本に属しますが、秋の七草の一つに数えられています。細い枝が風に揺れ、しなやかに枝垂れる様や、中秋に花の散りこぼれる様は昔から多くの人に親しまれてきました。


 やはり秋の七草のオミナエシ(女郎花;オミナエシ科オミナエシ属)も盛んに花を付けていました。直立した茎の先に細かいあざやかな黄色の花が群生して咲きます。オミナエシの隣にはオトコエシ(男郎花;オミナエシ科オミナエシ属)の白い花が咲いていました。


 常緑高木のシラカシ(白樫;ブナ科コナラ属)の木の枝をよく見ると、小さな木の実が付き始めていました。もう少し経つと茶色に変わって秋の風物詩のドングリになります。


 落葉低木スイフヨウ(酔芙蓉;アオイ科フヨウ属)に花が咲き始めました。スイフヨウの花は一日花で、朝方の真白な花から時間の経過とともに、酔いが回ったかのように次第に赤みが増してきます。左側の赤い花は前日の残りと思われます。


 日本庭園の赤い建物の前に白い花が咲いていました。白いサルスベリのようでもあるし、確認のため近づいてみました。すると、……


 その正体は、つる性の草本のセンニンソウ(仙人草;キンポウゲ科センニンソウ属)でした。ふわふわとした小さな白色の花が群がって咲き、長い葉柄があって他の植物によく絡みつきます。葉の先に生えている白い毛を仙人のヒゲや白髪に見立てこの名が付いたとのこと。センニンソウはこの時期、随所に繁茂しています。


 つる性植物のヤブガラシ(藪枯らし;ブドウ科ヤブガラシ属、別名は貧乏葛)も、至るところに広がり、他の植物を覆っていました。藪を覆って枯らしてしまうと言われるほど生育が 旺盛です。ハチが花の蜜を吸っていました。


 この時期、園内の草むらでは全国に分布する多年草のツルボ(蔓穂;ユリ科ツルボ属)が群生しています。小柄でピンク色の花穂を付けています。かつて、ツルボの鱗茎は飢饉の時に食用に供されたそうです。


 ヤブラン(薮蘭;ユリ科ヤブラン属)も日陰の草むらとか大木の根元などに群生しています。紫色の穗状の小さな花を随所に見かけます。ヤブランは東アジアに分布し、開花期は夏から秋です。 落ち着いた風情で和風の庭園などによく似合います。

 この他にもいろんな写真をアップしています。
       …> 季節のスケッチ(29年9月)


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2016年12月27日 (火)

人工知能(AI)の台頭に動揺する将棋の世界


 ここ数年来の人工知能(AI)を活用した囲碁・将棋ソフトの棋力が著しく伸長し、プロ棋士との対戦で互角以上の成績を残すようになってきていることは、本ブログでも紹介済みです。
 このような状況の中で、日本将棋連盟(以下、連盟)が台頭する人工知能の影におびえて、無実のプロ棋士(三浦九段)に対して証拠の無いまま出場停止(12月末まで)の処分を断行してしまうという由々しい出来事(不祥事)が起きてしまいました。
(少々長くなりますが、本件の推移を末尾にまとめました。)

 今回の騒動に関する私の感想は次の通りです。

(1)間違っていた処分断行
 棋士にとって出場停止処分というのは、疑惑棋士という汚名を着せられること、対局出来ないことにより対局料の収入が絶たれることなど、棋士生命にも直結する極めて重大な事案です。調査委員会報告では、三浦9段に不正使用はなかったものの、竜王戦開幕直前に週刊文春に疑惑記事が載るという差し迫った事情があったため連盟の処分はやむを得なかったということですが、私はおかしいと思います。

 いくら切迫した事情があったとは言え、しっかりとした調査もせず確証の無いまま処分を断行するというのは絶対に間違っています。世間の常識からもかけ離れています。社団法人たる連盟は不当な疑惑から会員(棋士)を守ることも本来業務の一つです。それにもかかわわらず、今回は棋戦(竜王戦)を守るため一人の棋士(三浦9段)を犠牲にした構図になります。羽生3冠の「今回の件は白の証明も黒の証明も難しいと考えています。疑わしきは罰せずが大原則と思っています」とのコメントが妥当な考えだと思います。

(2)急がれる名誉回復、原状復帰、金銭補償
 不正使用がなかったという結論が出た以上、真っ先に三浦9段の速やかな名誉回復が急がれます。少なくとも連盟の常務会メンバー、疑惑を指摘した棋士たちが、しっかりとした謝罪を行い、さらに三浦9段の出場停止に見合った処分を受けることなどの自浄能力がまず求められます。

 また、出場停止の3か月の間、竜王戦を始め多くの棋戦で挑戦者交代や不戦敗などの扱いになっています。この不利益な扱いについてなかったことにして処分前の原状に戻すことが必要です。もし、戻すことが不可能なのであれば、被った不利益に対する金銭補償を行わなければなりません。将棋界の最高棋戦といわれる竜王戦は4,320万円もの高額な優勝賞金が出ます。この優勝賞金を含めて、さらには不戦敗になった他の棋戦の対局料に相当する補償は最低限必要です。さらに、不戦敗の扱いを勝局扱いと変更することも必要になります。

(3)人工知能の台頭と将棋世界の未来
 今回の騒動の根底にあった人工知能がプロの将棋棋士の頭脳を超えてしまった感のある状況に対して人間側がどのように向き合うかが今問われています。今回のように動揺して対応を誤れば、「弱い」人間の将棋対局からファンの心が離れてしまいかねません。また、対局料を提供するスポンサも、「弱い」人間よりも「強い」人工知能へと支援対象を移すという事態も想定されます。人間と人工知能が共存できる仕組みを作り上げてこそ将棋世界に未来があるということを肝に銘じて欲しいと思います。

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 時系列にまとめた本件の経緯
 (主に将棋ワンストップ・ニュースからの引用)

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(2016.7-2016.9頃)
 一部の棋士から、三浦9段が対局中に将棋ソフトを不正使用しているのではないかという疑惑が指摘される。

(2016.10.10)極秘会合
 渡辺竜王、島理事に加え、羽生善治三冠、佐藤天彦名人、谷川浩司九段(連盟会長)、佐藤康光九段(棋士会長)、千田翔太五段の7人が、島理事宅に集まり極秘会合。久保九段は電話で参加。

(2016.10.11)聞き取り調査
 常務会による三浦九段への聞き取り調査。渡辺竜王、千田五段も参加。連盟の会見によると、ここで三浦九段が休場を申し出たという。しかし三浦九段は「一方的に処分された」と反論、NHKインタビューでも「辞退するわけがない」としている。

(2016.10.12)処分断行
 竜王戦七番勝負が3日後に迫った10月12日、連盟からリリースが出される。内容は以下の通り。
  1. 三浦九段は2016年12月31日まで出場停止処分とする。
  2. 竜王戦七番勝負の挑戦者が三浦弘行九段から丸山忠久九段に変更された。竜王戦主催の読売新聞は了承済。

 連盟リリースだけではわからない報道機関からの情報。
  1. 三浦九段はスマホを使って不正をした疑いがある
  2. 過去に対戦した5人前後の棋士から指摘があった
  3. 三浦九段は不正を認めていないが、疑惑の中では指せないとして休場を申し出た
  4. 休場届が期限までに提出されなかったため(処分理由)、処分した
  5. 三浦九段は「濡れ衣。不正はしていない」とコメント
  6. 連盟はこれ以上調査しない

(2016.10.15)竜王戦始まる
 挑戦者が三浦9段から丸山9段に変更になった竜王戦が始まる。

(2016.10.18)三浦9段からの反論
 三浦9段からの反論文書が出る。
  1. 対局中のソフト使用は一切ない
  2. 連盟にはPC4台の現物と、スマホにインストールされた全アプリの「撮影画像」を自主的に提出
  3. 連盟はそれを精査せず一方的に処分した
  4. 連盟に離席の多さや一致率の資料を求めたが開示されず
  5. 今後も連盟の調査に最大限協力する
 同夜のNHKニュース(三浦九段の単独インタビュー)
  1. 竜王戦は将棋界最高峰の棋戦ですから、挑戦するだけで大変な名誉。辞退するわけがない
  2. (離席が多かった7月26日の久保九段戦は)その日は特に体調がすぐれなかったので、休んでいる時間が長かった
  3. そもそも携帯(スマートフォン)に将棋ソフトが入ってない
(2016.10.19)渡辺竜王のインタビュー記事
 週刊文春での渡辺竜王のインタビュー。
  1. 渡辺竜王は、三浦九段の自身との対局および過去の対局も調べ、指し手の一致、離席のタイミング、感想戦での読み筋などから「間違いなくクロだ」と確信
  2. 最悪のシナリオは『疑惑を知りながら隠していたという事が発覚する事だ』と判断
  3. 前述したトップ棋士による極秘会合があった
(2016.10.20)羽生3冠の訂正ツィート
 羽生善治三冠が、文春の記事に誤解を招く表現があったとして「今回の件は白の証明も黒の証明も難しいと考えています。疑わしきは罰せずが大原則と思っています」と表明。

(2016.12.26)第三者調査委員会による発表
 第三者調査委員会が会見。概要は「疑惑の根拠とされたものいずれも実質的な証拠価値は乏しく、不正の証拠はない」「出場停止処分の妥当性は、七番勝負開幕戦を直後に控えた状況で、連盟所属棋士および公式戦における規律権限の範囲内であり、当時の判断としてはやむを得ない」。

(2016.12.27)調査結果を受けての三浦9段の会見
 出場停止処分となった2か月半の期間について、三浦9段は「私個人だけなら耐えきれましたが、家族がひどい目に遭ったので思うところはあります。推測でいろいろ言われるのはつらいですし、悔しい思いはあります」と打ち明け、「元の状態に戻してほしい」と名誉や地位の回復を求めた。

(2016.12.27)調査結果を受けての谷川連盟会長の会見
 連盟の谷川浩司会長は「三浦九段につらい思いをさせたことを申し訳なく思っております」と謝罪。会長以下理事7人の理事報酬を一部減額処分とし、三浦九段に対しては処分期間中に不戦敗となっていた順位戦A級での残留などの措置を取って「名誉回復に全力で務めていく」とした。

以上


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2016年3月19日 (土)

人工知能囲碁ソフト(アルファ碁)が世界のトップ棋士を圧倒


 囲碁のAIソフトのアルファ碁が世界のトップ棋士である韓国のイ・セドル9段を4勝1敗で撃破したという驚きのニュースが広まっています。まさに晴天の霹靂といった感じで、囲碁ソフトがここまで強くなり人間の頭脳を超えつつある現実に大きな衝撃を受けました。


 将棋の世界では将棋ソフトの進化が著しく、ここ数年トップ棋士と互角以上の勝負を展開していますが、将棋よりも考慮すべき要素の数が圧倒的に多い囲碁の世界ではまだまだ人間が優勢と言われ、ようやく4年前に囲碁ソフトのZenが4子のハンディ戦でもって武宮正樹9段を破ったレベルでした。4子のハンディとは、プロ棋士とアマ県代表クラスとの実力差に相当しますので、人間に追いつくのはだいぶ先の話と誰もが信じていた矢先です。

 それなのに、人工知能恐るべしです。たちまちアルファ碁が人間の頭脳を超えるようになってしまいました。ウィキペディアによると、アルファ碁の学習はGoogle Cloud Platformのコンピュータ資源(CPU1202個、GPU176基)を使用しています。また、アルゴリズムはディープニューラルネットワークを実装した「value network」と「policy network」によって動くモンテカルロ木探索法を用いています。学習の方法は、まず膨大な棋譜の記録を学習した後、自分自身との何度もの対戦を行うことでさらに能力を高めているとのことです。

 わが国トップ棋士の井山裕太6冠は、アルファ碁が3連勝後の時点での朝日新聞の取材に対して、「第1局から第3局まで、インターネットの生中継で観戦しました。こんな結果になるのは想像できなかった。ただアルファ碁の実力を知るデータが少なすぎるので、ひょっとしたらという気持ちがあったのも事実です。ほんとに急に出てきた。こんなに早く、これほどの実力で打てるようになるなんてショックです。囲碁の長い歴史の中で、もしかしたら一番というくらいの棋士に勝ち越した。これはものすごいこと。人間を超えたと思われても仕方のない結果。僕自身はイ・セドル九段が5連敗したら、そう判断します。残り2局に注目したい。」と率直な感想を述べています。

 なお、人工知能研究の世界では今回のアルファ碁の快挙について、囲碁は以前は当時のテクノロジーでは力の及ばない機械学習における難問であると見なされていたため、今回の成果は人工知能研究における画期的な進展として注目されています。今後の人工知能の多方面への活用が大いに期待されます。


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2013年4月21日 (日)

将棋電王戦でコンピュータが勝利、プロ棋士を撃破


 将棋の世界では、人間(プロ棋士)とコンピュータ(将棋ソフト)の激闘が続いていますが、先日コンピュータ軍団がトッププロ棋士チームを打ち破り、大変なことになってきました。

 将棋ソフトは日進月歩の勢いで開発が進み、今やアマチュアの棋力を超え、プロ棋士並みの力量を持つようになってきています。ここ数年の両者の戦いを振り返ってみます。

2007年3月 渡辺竜王 v.s. ボナンザ
 2007年3月、前年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝した最強の将棋ソフトボナンザが、トッププロ渡辺明竜王に平手で挑戦しました。それまで将棋連盟はプロ棋士が将棋ソフトと対戦することを規制し ていたので、初めての公式対局とあって、多数の将棋ファンの注目を集めました。将棋は、終盤まで緊迫した局面が続きましたが、最後は一手違いで渡辺竜王が112手の熱戦を制しました。竜王の貫禄勝ちといったところでしょうか。


2010年10月 清水市代女流王将 v.s. あから2010
 次は、コンピュータ将棋(あから2010)が清水市代女流王将に挑戦しました。対局途中、あから2010は人間であれば到底考えつかないような意表を突いた手を指して、その後清水を圧倒。結果はあから2010の勝利。コンピュータが大和撫子を凌駕した瞬間でもありました。


 → RWCPの成功がもたらした「コンピュータ将棋(あから2010)が女流王将に勝利」


2012年1月 故米長邦雄永世棋聖 v.s. ボンクラーズ
  (第1回将棋殿王戦)

 清水女流のリベンジとばかり、今度は将棋連盟会長(当時)を務めていた米長邦雄永世棋聖(故人)が、強豪ソフトのボンクラーズと対戦。入念な作戦を練っていた米長は中盤まで善戦したものの、一瞬の隙を突かれて攻め込まれあえなく返り討ち。結果はボンクラーズの勝利。米長は、この対局を第1回将棋電王戦として、翌年の第2回は団体戦とすることを発表した。


 → コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に完勝

 この流れを受けて、今年の第2回将棋電王戦の団体対抗戦が行われました。第2戦、第3戦の戦いは、それぞれ女流棋士、現役引退棋士との対局でしたので、いくら最強ソフトといえども、現役バリバリのプロ棋士であれば何とか撃退してくれるのではと誰しもが淡い期待を抱きながら、今回の第4戦を迎えることなったわけです。

 本棋戦の内容は、5人の現役プロ棋士と5つの最強コンピュータ将棋ソフトが闘うというものです。プロ棋士チームは、新進気鋭の若手からA級在籍のトップ棋士たちです。これに対して、コンピュータチームは第22回世界コンピュータ選手権で勝利した上位5チームの将棋ソフトです。

 今回の戦いを関係者は固唾を飲んで見守りました。果たして、その結果は?
2013年3月~4月 現役プロ棋士 v.s. 最強将棋ソフト
  (第2回将棋電王戦)



  • 第1局 3月23日 ○ 阿部光瑠 四段 v.s. ● 習甦
  • 第2局 3月30日 ● 佐藤慎一 四段 v.s. ○ ponanza
  • 第3局 4月 6日 ● 船江恒平 五段 v.s. ○ ツツカナ
  • 第4局 4月13日 △ 塚田泰明 九段 v.s. △ Puella α
  • 第5局 4月20日 ● 三浦弘行 八段 v.s. ○ GPS将棋

 最終第5局で、東京大学の研究者らが開発したソフト「GPS将棋」が三浦弘行八段(39)に勝ち、団体戦は将棋ソフト側の3勝1敗1分けとなり、人間がコンピュータに敗れてしまいました。コンピュータが人間の頭脳に一層近づいてきました。

 特に最終局の三浦八段は名人挑戦権を争うA級棋士のトップクラスでしたので、予想に反しての完敗に将棋界には大きな衝撃が走りました。最終戦・第五局の終局後に東京・千駄ヶ谷の将棋会館にて全体記者会見が行われ、谷川浩司連盟会長は次のような厳しい所感を語っています。
  • 『今回の結果は、プロ棋士にとって厳しい現実をつきつけられましたが、5名のプロ棋士はきっちりと準備・研究をして、全力を出し切ったと思います。今日の三浦八段の姿を見ると心が痛みますが、決して責任を感じることなく胸を張って欲しい。若いプロ棋士は(電王戦の経験を)プラスに繋げて欲しいと思います』
 この勢いでは、数年後にはコンピュータ軍団が人間側の渡辺竜王、森内名人、羽生3冠の「最後の砦」に戦いを挑むことになりかねません。このような最終決戦を見たいような、見たくないような複雑な心境です。

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2013年3月14日 (木)

若手囲碁棋士の井山裕太本因坊が史上初の六冠達成


 囲碁の第37期棋聖戦七番勝負第6局が行われ、14日午後5時過ぎ、張栩棋聖が投了。挑戦者の井山裕太本因坊が先番中押し勝ちし、シリーズ4勝2敗で初の棋聖を獲得しました。

 井山新棋聖は23才の若さで天元、王座、碁聖、十段と合わせて、七大タイトルのうち六つを占める史上初の六冠となりました。また、過去に名人も獲得しており、史上最年少での七大タイトル制覇(グランドスラム)も達成したことになります。

 ちなみに、囲碁界の七大タイトルは次のようになっていて、タイトルの順位は、優勝賞金の大きさによって決まり、「棋聖」は最高位のタイトルになります。

囲碁7大タイトル
棋戦名 主催・協賛等 創設年 挑戦手合 優勝賞金
棋聖戦 読売新聞社 1976年 七番 4500万円
名人戦 朝日新聞社 1976年 七番 3700万円
本因坊戦 毎日新聞社他 1940年 七番 3200万円
天元戦 ブロック紙3社連合 1975年 五番 1400万円
王座戦 日本経済新聞社 1952年 五番 1400万円
碁聖戦 新聞囲碁連盟 1975年 五番 800万円
十段戦 産経新聞社 1961年 五番 750万円


 なお、七大タイトル以外にも以下のような囲碁棋戦があります。
その他の主な囲碁棋戦
棋戦名 主催・協賛等 創設年 挑戦手合 優勝賞金
NECカップ戦 日本電気 1981年 - 1000万円
阿含・桐山杯 阿含宗他 1994年 - 1000万円
新人王戦 しんぶん赤旗 1975年 - 200万円
王冠戦 中日新聞社 1953年 - 170万円
大和証券杯 大和証券G 2006年 - 500万円
NHK杯 日本放送協会 1953年 - 500万円
竜星戦 囲碁・将棋ch 1990年 - 600万円
(女流棋戦)
女流本因坊戦 共同通信社他 1981年 五番 580万円
女流名人戦 産経新聞社他 1988年 三番 500万円
女流棋聖戦 NTTドコモ 1997年 三番 500万円


 今回の棋聖戦は、かつて五冠を保持していた張栩棋聖にとっては、次第にタイトルを奪われ最後の一冠になっていました。勝負の世界に非情さはつきものとはいえ、最後に投了するときの張栩棋聖の気持ちは、察して余りあるものがあります。ただ、彼は33才でまだまだ若いわけですので、捲土重来を期待したいと思います。

 一方、井山六冠はしばらくトップとして君臨し続けるものの、23才の井山六冠 v.s 30代の四天王(張栩阿含桐山杯33才、高尾NEC杯36才、山下名人34才、羽根王冠36才)の激闘を中心に囲碁界が動いていくものと思われます。とにかく、井山の碁の内容が溌剌としていて、本当に強いの一語に尽きます。従来の定石にとらわれず自由奔放に碁を打っていて、私たち視聴者も次はどんな手を指すのかとハラハラドキドキしながらも小気味よく彼の碁を楽しむことができます。

 実は、自在の碁の裏には緻密な読みがあります。前に「情熱大陸」のテレビ番組に出演したときに1分間でどれだけ手を読めるかと質問されていましたが、数百手から千手位は読むことが出来るそうです。すごい読みです。
      

 日本の囲碁界にはいろいろと課題がありますが、まずは中国勢や韓国勢が独占している世界戦を制覇することです。棋聖戦6局の解説者をしていた高尾紳路九段(張栩棋聖と同世代で四天王の一人)も、彼(井山)の碁は中国、韓国でも強いと評判で、十分に世界戦を勝ち抜く可能性あり、と大きな期待を寄せていました。

 経済や防衛などの分野での強い日本の復活が、今のわが国社会の悲願になっていますが、囲碁の分野でも歩調を合わせて世界一になってくれることを念願します。



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2012年4月21日 (土)

囲碁の世界でもコンピュータがプロ棋士に勝利!?


 今年の1月、コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に完勝したというニュースが日本中を駆け巡りました。→ ブログ記事

 米長邦雄というと、名人位を獲得したこともある超一流の将棋棋士です。現役を退いたとはいえ、米長の敗北は衝撃的でした。コンピュータの処理技術や知能(対局ソフト)の進展に驚きましたし、現役の「名人」や「竜王」まで負かすことになったりでもしたら、将棋の世界は天地がひっくり返ったように大変なことになるだろうと思います。

 将棋と似たようなゲームが囲碁です。将棋では人がコンピュータに負けてしまいましたが、囲碁の世界ではコンピュータが人智を超えるのは遠い未来のことだろうと思っていました。

 実際、別のブログ記事の中で、私は

『相手の王将を追い詰めるために直線的に進行する将棋と違って、囲碁のゲームでは、最終的に自分の陣地(地)を相手より1目でも多く確保するためにいろんな駆け引きが必要で、ジグザクとした複雑な進行をたどります。

 具体的には、
1)盤の目の数が361(将棋は81)もあるので、局面の数が飛躍的に増え、より超高速なコンピュータの処理能力が必要となる。

2)相手の石をを取り返せない「劫」があったり、今は実利ゼロだが将来の地となりうる「厚み」の計算の仕方が難しかったり、さらには自分の石をわざと捨てる「捨て石」が有利な場面があったりと、コンピュータソフトの作り込みが極めて難しい。
等の点から、コンピュータが人間に追いつくには相当な年月を要するものと思われます。』


と書いたばかりです。ところが、今度はつい最近、コンピュータ囲碁ソフトのZenが 武宮正樹9段を負かしたことを知り、ここで更なる衝撃を受けてしまいました。

 → 対局結果の記事
 → 電気通信大学エンターテイメントと認知科学
  シンポジウム特別イベント(2011.3.17) 

 武宮正樹といえば「宇宙流」で知られ、今まで名人、本因坊、十段など数々のタイトルを獲得したいまだ現役の超一流囲碁棋士です。実際の対局は平手戦ではなく、4子局のハンディ戦だったのですが、並みのアマチュアがこのハンディでプロ棋士に勝つのは容易ではありません。従って、現在の囲碁ソフトは県代表クラスの実力があるのではないかと思われます。

 最近の囲碁ソフトが急速に強さの秘訣は「モンテカルロ法」の採用にあるといわれる。一般的に、モンテカルロ法とは乱数を用いてシミュレーションや数値計算を行う方法を総称していますが、これを囲碁の世界に活用しています。簡単に言えば、次の着手選択するのに、コンピューターに終局までランダムに打たせ、すべての着手候補の中で一番勝率がいいものを選ぶという方法です。

 定石や美しい形を覚えるのでもなく、単に次の手を最後まで読み尽くしてから選択するといったコンピュータならではのすさまじい力業です。このような「野暮ったい」方法でも強いのです。武宮9段との棋譜を見てみると、今まで習ってきた感覚とは全く違ったやり方ですが、結果を見ると正しかったということでしょうか。

 囲碁ソフトは毎年1目ぐらいずつ強くなっているそうです。現在は4目ぐらいの差ですから、近い未来に平手でもプロ棋士に伍するようになるのでしょうか。Zenのソフトウェア(エンジン)が組み込まれているのは「天頂の囲碁」だそうです。私も早々に購入して、試してみようかとかと思います。

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2012年2月 5日 (日)

囲碁は若き天才棋士たちが覇を競う世界


 今、囲碁棋聖戦の七番勝負が進行中です。将棋の世界では、先日コンピュータ将棋が米長永世棋聖を打ち破り(→ ブログ記事)、大きな話題になりました。また、将棋に似ているチェスの世界では、すでに1997年に世界王者がコンピュータチェスに敗れています。しかしながら、囲碁の世界はまだまだ人智にコンピュータが追いつきそうにない状況です。

 相手の王将を追い詰めるために直線的に進行する将棋と違って、囲碁のゲームでは、最終的に自分の陣地(地)を相手より1目でも多く確保するためにいろんな駆け引きが必要で、ジグザクとした複雑な進行をたどります。

 具体的には、
1)盤の目の数が361(将棋は81)もあるので、局面の数が飛躍的に増え、より超高速なコンピュータの処理能力が必要となる。
2)相手の石をを取り返せない「劫」があったり、今は実利ゼロだが将来の地となりうる「厚み」の計算の仕方が難しかったり、さらには自分の石をわざと捨てる「捨て石」が有利な場面があったりと、コンピュータソフトの作り込みが極めて難しい。
等の点から、コンピュータが人間に追いつくには相当な年月を要するものと思われます。

 こういうわけで、囲碁の世界では現在、若い天才棋士たちが覇を競っています。すなわち30代の四天王(張栩、山下敬吾、羽根直樹、高尾紳路)と20代の井山裕太を軸に、いろんな棋戦が激しく展開されています。

 つい先日、張栩 棋聖・王座 対 高尾紳路 九段の囲碁棋聖戦の第3局が放映されていました。四天王の二人の対戦です。さらに、もう一人の四天王の羽根直樹が解説者という、囲碁ファンにとってはたまらない番組でした。私も、しっかりと番組を録画して、帰宅してからじっくりと熱戦を鑑賞しました。



 二日間に亘る激闘の結果は、高尾紳路の半目勝ちに終わりました。一見、盤の前に座っているだけのように見えますが、お互い8時間の持ち時間を目一杯使って、知力の限りを尽くして最善の着手を捻り出し続けます。相当の体力も要し、終わったときにはへとへとになるようです。

 半目差というのは極めて微差で、私たちのアマの対戦では誤差の範囲内の揺らぎのようなもので、どちらが勝つかは指運にかかっています。しかし、トップ棋士ともなると揺らぎのない数字のようで、この半目差を巡って延々と死闘が続いていました。

 羽根の解説が明快で、この辺の状況がよく分かって非常に興味深いものでした。特に、終盤に入った局面ですが、まだ寄せの部分がかなり残っている段階で、羽根は「このまま寄せると半コウが残り、その半コウを張栩を勝ちついでも高尾に半目が残る」と言い切っていました。結果は、その羽根の予測通りになりました。最後まで最善の手順を尽くした高尾、張栩の両対局者、そしてその進行を早い段階から読み切った羽根。若い天才的な頭脳たちに拍手です。

 棋聖戦は目下高尾の2勝1敗ですが、7番勝負ですのでまだまだ激闘は続きます。最後まで名勝負を期待しています。


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2012年1月15日 (日)

コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に完勝


 新年早々ビッグニュースが飛び込んできました。といっても政治・経済・事件などのことではなく、人間対コンピュータの将棋対局でコンピュータが永世棋聖に完勝したというニュースです。 →コンピュータ将棋協会ブログ記事



 将棋の元名人で永世棋聖の米長邦雄(68才)とコンピューター将棋ソフト「ボンクラーズ」が対戦する特別公式対局(第一回将棋電王戦)が1/14(土)、東京・千駄ケ谷の将棋会館で行われ、113手でボンクラーズが勝利しました。対局は、ボンクラーズの指し手を代理人の人間が盤上で再現する形で行われた。後手となった永世棋聖は序盤相手を封じ込める作戦に出たが、ボンクラーズは中盤の一手のミスを見逃さず、一気に米長陣を攻略、圧勝しました。

 2003年に現役を引退した米長永世棋聖に対し、ボンクラーズは昨年5月の世界コンピュータ将棋選手権で優勝した「強豪棋士」。これまでのプロとコンピューターソフトの公式対局を振り返ると、2007年に渡辺明竜王が「ボナンザ」に勝ったものの、2010年に清水市代女流名人が「あから2010」に敗れている(→ ブログ記事)。コンピュータ将棋はソフトの改良とともにPCの処理能力の著しい向上により年々「棋力」がアップし、今や十分にプロ棋士と肩を並べる実力を有すると言われる。



 コンピュータ将棋の進撃を止めるため、米長永世棋聖は将棋連盟会長の立場もあってか、女流名人の次の防波堤を買って出たわけですが、あえなく敗退。来年の将棋電王戦は、プロ棋士側5人対コンピュータ側5チームで行われることになりました。なお、将棋界最高峰に位置する渡辺竜王は、他が倒されてしまったら出ざるを得ない(それまではでない)とのコメント。

 開発者の伊藤英紀氏(富士通研究所)によれば、ボンクラーズの名前は将棋ソフト「ボナンザ」を基本ソースとしていることと、ハード的にPCクラスタ(並列処理)技術を用いていることから付けられたそうです。

 かつて、国プロのReal World ComputingプロジェクトにおいてPCクラスタ技術開発に携わったものとしては、その成果を活用したコンピュータ将棋の快進撃を嬉しく思うとともに、それと同時に人間の能力の素晴らしさを信じたい気持ちもあって複雑な思いをしています。

(参考)Real World Computingプロジェクト
RWC(Real World Computing)プロジェクト は、 21世紀において必要とされる新しい情報処理技術 を開発するため、 1992年から10年計画で経済産業省によって推進された研究開発プロジェクトであり、内外の企業・研究機関が組合員として参加する 技術研究組合 新情報処理開発機構(RWCP) 及び 独立行政法人 産業技術総合研究所 によって実施されました。 RWCプロジェクトでは、次世代の情報処理技術の基盤となる (1) 実世界知能技術、 (2) 並列分散コンピューティング技術 の開発に取り組みました。



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2010年10月13日 (水)

RWCPの成功がもたらした「コンピュータ将棋(あから2010)が女流王将に勝利」

 
 さる 10月11日、東京大学本郷キャンパスにおいて、コンピュータ将棋(あから2010)が清水市代女流王将と対局し、圧勝したという衝撃的なニュースが流れました。

 コンピュータ将棋(あから2010)と清水市代女流王将の対局
 あから2010は、情報処理学会の「トッププロ棋士に勝つ将棋プロジェクト」が開発した特製の、次のような圧倒的な能力を有するコンピュータシステムです。

あからというネーミングは、10の224乗を表わす阿伽羅(あから)が、将棋の局面数に近いことに由来。
ハードウエアは、東京大学クラスターマシンが使用され、Intel Xeon 2.80GHz(4コア) 109台、Intel Xeon 2.40GHz(4コア) 60台、合計169台(676コア)が搭載されている。
ソフトウェアは、国内トップ4プログラム(激指、GPS将棋、Bonanza、YSS)を動かし、その多数決合議法を採用。
 この結果は、極めて意義深いものがあります。かつてチェスの世界でスパコン「ディープ・ブルー」が世界チャンピオンを破ったと大騒ぎになったのが1997年でした。このとき、将棋は駒の動きが複雑だし、一度取った敵の駒が味方の駒として復活するとかで、ゲームとしての難易度は比較にならないほど大きいとして、コンピュータが将棋で勝つまでには長年の時間を要するだろうと、多くの人は自分を納得させるかのように論評していたものです。しかし、その後コンピュータの能力が飛躍的に向上し、たった10年余で女流プロの実力に追いついてしまったことになります。

 実は、私どもは1990年代の10年間、リアルワールド・コンピューティング・プロジェクト(RWCP)を推進し、コンピュータの能力を極限まで追求すべく実世界知能技術や並列分散コンピューティング技術の開発を進めてきました(→ RWCPメモリアル)。

RWCP当時のPCクラスタマシン 特に、並列分散コンピューティング技術は、PCなどのCPUを何百台も何千台も連結してあっという間にPCクラスタというスパコンを作り上げてしうという画期的なものでした。PCの能力が高まってきますので、個々のCPUを交換すればスパコンとしての能力は、PCの性能向上に比例して巨大化していきます。

 今回の東京大学クラスターマシンは、このようなRWCPの並列分散コンピューティング技術に由来するもので、RWCPの成功が衝撃的なニュースによって実証されたことになります。プロジェクト関係者にとっては感慨ひとしおといった所です。

 1999年の筆者のエッセイ「四六のガマ」 の中では、PCクラスタマシンと囲碁の名人が対決す筑波山麓に生息するという四六のガマるという近未来の場面を描写しています。囲碁のルールは将棋よりもはるかに難しい(盤面の広さ、劫の存在、実利と勢力との関係等々)ので、囲碁にコンピュータが追いつくのは何十年もかかるだろうと言われています。

 しかしながら、この状況は10年前のチェスと将棋の関係に酷似しています。私としては人間はコンピュータより優秀であり続けて欲しいと思うと同時に、今回のRWCPの成功が更なる飛躍につながって欲しいとの気持ちもあって、心の中では複雑な思いが錯綜しています。


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