小石川植物園

2023年3月21日 (火)

春分の日、はやくもソメイヨシノが満開に


 ポカポカ陽気が続く春分の日3/21、小石川植物園を訪れてきました。待望のソメイヨシノの桜がほぼ満開とあって、園内は家族連れなど大勢の人で賑わっていました。かつては入学式の頃に桜満開の年もあったのですが、今年は卒業式の頃とあって相当早まっています。また公開中のロックガーデンでは、普段は道ばたに咲いていても単なる雑草として見過ごしてしまうようなヤブニンジンやヒメウズのような小さな野の花も見かけました。


 植物園入口から真っ直ぐ坂道を上り左に曲がったところに広がる桜並木の風景です。ちょうどソメイヨシノ(染井吉野;バラ科サクラ属サクラ亜属エドヒガン群)が満開になっていました。


 サクラ並木の木の下では、家族連れや仲間どうしのグループが敷物の上に座り込み、思い思いに花見を楽しんでいます。


 温室前のベニシダレ(紅枝垂)も満開になっていました。枝垂桜(バラ科サクラ属サクラ亜属エドヒガン群)の淡紅色の品種。優雅に枝垂れた桃色の花が樹全体に広がっています。


 植物園のメタセコイア林近くの草むらに小高木の樹木全体が白い花に覆われていました。


 近づいてみると、この木の正体は南アジアの高地に自生する常緑小高木のトガリバサザンカ(尖葉山茶花;ツバキ科ツバキ属)でした。名前のとおり葉の先が尖っているのが特徴。12月~2月頃に小さめの白い花が咲く


 この時期公開中のロックガーデンも忘れずに回ってきました。これは関東地方~沖縄の海岸近くの林で多く見られる多年草のムサシアブミ(武蔵鐙;サトイモ科テンナンショウ属)です。2個の長い葉柄、その先の大きな3個の小葉が特徴。花(仏炎苞)の形が鐙に似ていることから和名が由来。


 ニンジン葉に似た葉をつけるヤブニンジン(藪人参;セリ科ヤブニンジン属)。北海道~九州に分布し、山野の日陰になる草むら、藪地などに生育する多年草。直立する茎は白いせん毛に覆われる。4月~5月頃、茎先にごく小さな白い5弁花を何個かつける。


 関東以西の本州~九州の暖地に分布する多年草。ヒメウズ(姫烏頭;キンポウゲ科ヒメウズ属)。畑や人家周辺、山間部などに広く見られる。地下茎から伸びる花茎の先端にややうつむいた小さな白い花をつける。和名のウズはトリカブト(鳥兜)のことで、小さなトリカブトの意味になる。漢方に使われる。


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2023年3月16日 (木)

コブシ、ベニシダレ、シナミズキなどの木々が次々と満開

 このところ初夏のような暖かい日が続き、早くも東京の桜開花が発表されました。この日小石川植物園を回ってきましたが、コブシ、ベニシダレ、シナミズキなどの木々が次々に満開になっていました。まさに春爛漫の季節到来の感があります。また、公開中のロックガーデンでは、カタクリやヒロハノアマナなどの春の妖精の花々も咲き出してきました。



 北海道から九州まで広く分布する落葉高木コブシ(辛夷;モクレン科モクレン属 Yulania亜属)。この時期に白い花が満開になり、春の訪れを謳歌するかのように青空の中で花が乱舞します。花は小枝の先につき、ひらひらの白い6枚の花弁をもつ。開花の後、新緑が芽吹きます。


 温室前の草原にそびえ立つベニシダレ(紅枝垂)が満開になっていました。枝垂桜(バラ科サクラ属サクラ亜属エドヒガン群)の淡紅色の品種。枝垂れた様子が艶やかです。


 中国原産の落葉低木シナミズキ(支那水木;マンサク科トサミズキ属)。細い枝がよく分枝し株立ち樹形を成しています。この時期、青空の下に無数の黄色の花が点描されるかのように一斉に咲き出し、壮観な眺めです。


 林立するメタセコイア(曙杉)の風景です。まだ冬木立のメタセコイアの手前では、灌木状になったチョウセンレンギョウ(朝鮮連翹)の黄色の花が満開になっていました。


 2月頃からユキワリイチゲフクジュソウなどの春の妖精と言われる植物が姿を見せ始めていますが、いよいよ春の妖精の代表格のカタクリ(片栗、堅香子;ユリ科カタクリ属)の花が咲き出しました。まるで春の陽光の下で森の妖精たちが背中の羽根を羽ばたきながら遊んでいるようにも見えます。


 日本固有種で関東地方から近畿地方、四国に分布するヒロハノアマナ(広葉の甘菜;ユリ科アマナ属)の花を園内のロックガーデンで見つけました。花茎の先に6個の花弁と6本の雄しべを有する可憐な白色の花が咲いています。幅が広めの葉の中央に白線模様が特徴的。絶滅危惧II類、春の妖精の仲間。


 ツクシスミレ(筑紫菫;スミレ科スミレ属)の小さな花を見つけました。花の中央部が黄色で周りがうす紫色の珍しい色調のスミレです。元々九州地方に分布するスミレだが、園の研究用のものが野生化したと言われています。


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  → 季節のスケッチ(2023年3月)

 

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2023年3月 4日 (土)

貴重な山野草が生えるロックガーデンが期間限定公開中



 天気が良くなってきた3月初旬、小石川植物園をぶらぶらと散策してきました。 普段は立入禁止区域になっている園内のロックガーデン(山地植物栽培場)がたまたま期間限定の公開中になっていてラッキーでした。ロックガーデンの公開はおそらく今回が初めてだろうと思います。この日はフクジュソウ、セリバオウレン、キクザキイチゲなどが開花していました。また、園内の他の区域ではカンヒザクラ、シナミザクラ、サンシュユなども木々の花々も咲き出していました。


 ロックガーデンの様子です。これは北海道から九州にかけて分布し山林に生育する球根植物のフクジュソウ(福寿草;キンポウゲ科フクジュソウ属)。早春に忘れずに咲き出し、まぶしいような黄金色を放ちます。寄せ合って咲くので、ほのぼのとした家族のようにも見えます。春の妖精の仲間。


 セリバオウレン(芹葉黄蓮;キンポウゲ科オウレン属)。日本固有種で本州、四国に分布し、山地の樹下に自生する山野草。早春に8~10個の花弁をもつ小さな白い花が咲きます。小葉がセリ(芹)の葉に似ることから和名が由来。


 本州近畿地方以北から北海道に分布し、落葉広葉樹林の林床などに生育するキクザキイチゲ(菊咲一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)。葉が元気に上向いている感じで、ちょうど菊の葉のように切れ込みが鋭いのが特徴。キクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)とも呼ばれる。春の妖精の仲間。


 ロックガーデン以外の草むらでも多くの春の野の花を見かけるようになってきました。アマナ(甘菜;ユリ科アマナ属)が咲き出してきました。個体数は多くないのですが、園内散策路の道ばたで花を見かけました。まるで小さなチューリップのように可憐な花です。本州東北地方南部以南、四国、九州、奄美大島に分布する球根植物。春の妖精の仲間。


 ハナニラ(花韮、西洋甘菜;ヒガンバナ科イフェイオン属 or ハナニラ属)。南米原産、明治時代に観賞用として帰化した球根植物。ハナニラの清楚な白い花が咲き出してきました。これから植物園内の各所に咲き広がります。花の形がアマナに似ることから、セイヨウアマナ(西洋甘菜)とも呼ばれます。


 中国原産の一年草オオアラセイトウ(諸葛菜、紫花菜;アブラナ科オオアラセイトウ属)の紫色も花を数輪見かけました。4月頃には紫色の菜の花のような花が草むらを覆うようになります。わが国へは江戸時代に栽培用として導入されたが、繁殖力が強く野生化しています。


 木々の花もにぎやかになってきました。これはカンヒザクラ(寒緋桜;バラ科サクラ属サクラ亜属カンヒザクラ群)です。盛んに咲き出していました。沖縄に自生し、日本のサクラの基本野生種の一つ。満開になった濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与えます。


 中国原産のシナミザクラ(支那実桜;バラ科サクラ属サクラ亜属シナミザクラ群)。関東以南の暖地に分布する落葉商工ボク。カラミザクラ(唐実桜)ともいう。3月頃にひそやかな落ち着いた感じのウメに似た花が咲き、普通のサクラとは少し趣が異なる。薬草園の近くで見られる。


 サンシュユ(山茱萸;ミズキ科ミズキ属)の黄色の花を林の中で見つけました。中国及び朝鮮半島を原産とする落葉小高木。新葉の展開前、3月に無数の黄金色の花が大空に吹き出すように広がり、ハルコガネバナとも呼ばれます。観賞用として庭木などに利用される。


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2023年2月21日 (火)

大樹の見事な冬木立やウメ、ツバキなどの早春の花々



 2月も後半になり、久しぶりに小石川植物園を回ってきました。春のような日差しでしたが、風が冷たい一日でした。園内では大樹の見事な冬木立や梅、椿、マンサクなどの木々の花が目に入ってきます。また、ユキワリイチゲやアマナなどの早春の野の花も枯葉の中から顔を覗かせていました。


 小石川植物園には大木・巨樹が沢山生えていて、2月のこの時期になってもその見事な冬木立の姿を楽しむことができます。上図のイチョウ(銀杏;イチョウ科イチョウ属)の大木は園入口付近ところにあります。手前は精子発見で有名なソテツ(蘇鉄; ソテツ科ソテツ属 )です。


 植物園入口から真っ直ぐ坂道を上り左に曲がるとソメイヨシノ(染井吉野;バラ科サクラ属エドヒガン群)のサクラ並木が広がっています。来月末の満開時には大勢の人出で賑わいますが、今は冬木立で開花準備中です。 → サクラ並木の風景


 サクラ並木をそのまま進んでいくと、スズカケノキユリノキケヤキなどの巨木並木の空間が広がっています。林立する巨木たちの冬木立を見上げとその神々しさに圧倒されます。まさにパワースポットです。 → 巨木並木の風景


 園入口から左方に曲がって少し進むと、天空に向かって直伸するメタセコイア(曙杉;ヒノキ科セコイア亜科メタセコイア属)が林立しています。四季折々に表情を変え来園者を迎えてくれます。スギの先祖と言われるメタセコイアは、現在全国各地の公園木、並木などに使用されています。 → メタセコイア林の風景


 梅林では紅白のウメ(梅;バラ科サクラ属スモモ亜属)の花が咲き出してきました。色々な品種のウメが生えていますが、上図の白梅の品種名は長寿です。長寿は毎年元気な花を咲かせます。高齢になりつつある団塊人の私たちにも元気を与えてくれます。 → 梅百科


 この紅梅の品種名は八重松島(やえまつしま)です。紅梅といっても黒雲(くろくも)や鹿児島紅(かごしまこう)のように真紅色の品種からこの八重松島(やえまつしま)や未開紅(みかいこう)のような桃色系の品種もあります。 → 梅百科


 この時期、園内ではツバキ園やそのほか随所でツバキ(椿; ツバキ科ツバキ属 )の花を見かけます。上図は古典椿の代表的な品種の太郎冠者(たろうかじゃ)です。精子発見で有名な大イチョウの樹下で華やかな花色の花を密に咲かせています。 → ツバキの仲間


 マンサクの仲間の花々も咲き出しています。左は中国原産の落葉小高木シナマンサク(支那満作;マンサク科マンサク属)です。早春に満開になった無数のふわふわした黄色のリボン状の4弁花が周りの空間に広がります。


 この時期、草むらは枯葉に覆われていますが、よく見ると早春の野の花がポツポツと咲き始めています。上図はユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科 イチリンソウ属)。本州中部以西の暖かい地域の林内に生える多年草です。夏まで葉をつけると、残りは地下で過ごすスプリング・エフェメラル(春の妖精)の仲間です。


 本州東北地方南部以南、四国、九州、奄美大島に分布する多年草のアマナ(甘菜;ユリ科アマナ属)です。まるで小さなチューリップのような可憐な花を咲かせます。この日は寒風の中、そろりそろりと地表に顔を出していました。スプリング・エフェメラル(春の妖精)の仲間。


 ヨーロッパ原産の多年草のオオイヌノフグリ(オオバコ科クワガタソウ属)。日本に帰化し全国に分布します。春先から星くずのように可憐な青い小さな花が咲き広がり、春の終わりには枯れてしまいます。


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2023年2月 1日 (水)

2月の小石川植物園、もうすぐ紅梅・白梅が賑わう



   (次々と咲き出す紅梅・白梅 2003.2)

 小石川植物園では2月に入ると、梅林が賑やかになってきます。紅梅、白梅の花が咲き始め、メジロなどの小鳥も誘われるかのように集まってきます。ウメの花以外にも、カンザクラ、ツバキ等の木々の花や、春の妖精といわれるユキワリイチゲ、アマナ、フクジュソウなどの春の野の花も咲き出し、園内の散策も楽しみが増えてきます。

(2月の風景)
  2月セレクション 梅百科 ツバキの仲間
  春の妖精たち

(フォトギャラリー)
  2月の風景 梅林の風景
  春の野の花 春の妖精たち


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2022年12月 2日 (金)

年末の小石川植物園の紅葉風景



 12月に入ってようやく冬本番の寒さがやってきました。わが家のテラスに出てみると、目の前に小石川植物園の紅葉・黄葉風景が広がっています。真赤なイロハモミジの紅葉、褐色のサクラの紅葉、ケヤキの黄葉など年末の木々の鮮やかな輝きが見られます。

(これまでの小石川植物園の12月の風景)

 日本庭園の12月風景。2012.12


 晩秋の陽光にメタセコイア(アケボノスギ;ヒノキ科メタセコイア属)が褐色に輝いています。2013.12


 温室の近くで真紅のトンネルのようにアーチ状に連なるイロハモミジ並木の風景。2015.12


 真っ赤に輝くメグスリノキ(ムクロジ科カエデ属)。葉を煎じて服用したり、洗眼すると目の病気に良いとのこと。2013.12


 落葉小高木チドリノキ(千鳥の木;ムクロジ科カエデ属)の見事な黄葉。2020.12


 日本庭園の手前の池の風景。水面が赤や黄に染まっています。2016.12


 黄葉が進むイチョウ(銀杏;イチョウ科イチョウ属)の木々。園内には多くのイチョウの大樹が生えています。 2018.12


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2022年11月25日 (金)

11月下旬の小石川植物園の紅葉・黄葉風景


 青空が広がった11月下旬(11/25)、小石川植物園を散歩してきました。そして、園内のラクウショウ、シナユリノキ、ベニコブシ、ハリギリなどの木々の進みゆく紅葉・黄葉を楽しんできました。


 11月下旬の小石川植物園の風景です。木々の紅葉・黄葉がだいぶ進んできました。秋晴れ下の日本庭園の赤い建物(旧東京医学校)ですが、右上のコナラの大樹は褐色に紅葉しています。


 園内の古井戸(小石川養生所の井戸)近くのツツジ園から精子発見の大イチョウウルムス・プロセア(ニレ科)などの高木・大樹の雄姿が眺望できます。イチョウはすっかり黄葉しています。


 褐色に紅葉したラクウショウ(落羽松;ヒノキ科スギ亜科ヌマスギ属)の大樹。北米原産の落葉針葉樹ラクウショウは湿地に生育し、木元が少し水につかった状態で自生することが多く、ヌマスギ(沼杉)とも呼ばれる。


 園入口に立つ一本のメタセコイア(曙杉;ヒノキ科セコイア亜科メタセコイア属)の高木。高度の低い太陽が樹木の陰に入っています。メタセコイアはスギの先祖の落葉針葉樹。絶滅したとされていたが、戦後中国四川省で生息が確認され、その後わが国に伝来。


 黄葉のシナユリノキ(支那百合の木;モクレン科ユリノキ属)。中国中南部からベトナム高地に自生する落葉高木。ユリノキ属はユリノキとシナユリノキの2種のみで北アメリカと中国に隔離分布する。


 ベニコブシ(紅辛夷;モクレン科モクレン属 Yulania亜属)の晩秋の黄葉です。ベニコブシは本州中部の東海地方などに分布する落葉小高木。日本に自生するシデコブシの変種。3月~4月、葉の展開に先立って淡紅色の花が咲く。


 鮮やかに紅葉したヤマハゼ(山櫨;ウルシ科ウルシ属)。関東地方以西~沖縄の山地に自生する落葉小高木。樹姿などがハゼノキによく似ていて、山地に生えるハゼノキということから和名が由来。


 中国、台湾及び東南アジアを原産とし、東アジアの温暖な地域に自生する落葉高木のカイノキ(楷樹;ウルシ科カイノキ属)。枝ぶりが整っていることから、楷書にちなんで名がついたとされる。秋には美しく紅葉します。


 北海道を中心としたわが国全域の山地に分布する落葉高木のハリギリ(針桐;ウコギ科ハリギリ属)。かつては下駄材として北海道から本州に出荷されてきた。カエデ状の葉が黄葉していました。


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2022年11月11日 (金)

11月の小石川植物園、徐々に紅葉・黄葉始まる

 11月に入って朝晩は冷え込みを感じるようになってきましたが、日中は比較的暖かめの天気が続いています。11/10に小石川植物園を回ってきました。木々の紅葉・黄葉は例年に比べ、やや遅めの感じでしたが、それでも、アメリカスズカケノキ、ナンキンハゼ、カツラなど徐々に紅葉・黄葉が始まっていました。


 植物園入口から真っ直ぐ坂道を上り左に曲がるとソメイヨシノの桜並木が広がっています。春の満開時には大勢の人出で賑わいますが、晩秋の紅葉も見応えがあります。


 ヨーロッパ原産の落葉高木イタリアヤマナラシ(ヤナギ科ヤマナラシ属)の黄葉。わが国では北海道~九州に分布する。 セイヨウハコヤナギ(西洋箱柳)やポプラとも呼ばれる。美しい箒状の樹形が特徴的で、街路樹、庭園木、防風林などに多く用いられる。晩秋の植物園では、ポプラの黄葉と樹木に絡むナツヅタの紅葉のコラボが見られる。


 北米東部原産の落葉高木のアメリカスズカケノキ(スズカケノキ科スズカケノキ属)。わが国へは明治時代に渡来し、巨木が多い。花期は4月~5月で球形の花序がぶら下がる。互生する広卵形で掌状の大きな葉は切れ込みが浅い。晩秋の褐色の紅葉の景観は迫力があります。


 中国・台湾原産の落葉高木ナンキンハゼ(南京櫨;トウダイグサ科ナンキンハゼ属)の紅葉。夏にあまり目立たないの花序がツンツンと木枝から飛び出し、晩秋に美しく紅葉します。庭木、街路樹、公園樹に用いられる。木の実は種皮が蝋状の物質で覆われ、ハゼノキと同じようにロウを採取します。


 北米原産の落葉高木ハナミズキ(花水木;ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属)。初夏には紅白の花、秋には紅葉を楽しむことが出来ます。庭木や街路樹として利用されている。北米原産でわが国のヤマボウシに似ることからアメリカヤマボウシともいう。


 ハゼノキ(櫨の木;ウルシ科ウルシ属)の紅葉。ハゼノキは関東以西の本州、四国、九州・沖縄、小笠原諸島に自生する落葉小高木。木枝から垂れ下がる房状の黒い実から木蝋を採り、それまで木蝋の主原料であったウルシの果実に取って代わるようになった。


 中国原産の落葉中高木サルスベリ(百日紅;ミソハギ科サルスベリ属)。代表的な夏の花木で花期が長く、炎暑下の強い日差しの下であざやかな深紅の花が咲き続けます。花の後に実が付き、秋には黄葉が見られる。


 日本各地に分布する落葉高木カツラ(桂;カツラ科カツラ属)。開花期は3月~5月で雌雄異株。葉は対生でハート形の円い形状が特徴的。秋には美しく黄葉し、落葉になると甘い香りを呈する。少し離れた所からでもカツラの存在に気がつきます。街路樹や公園樹に利用される。


 氷河期生き残りの樹木といわれるハナノキ(花の木;ムクロジ科カエデ属)。日本固有種で雌雄異株の落葉高木。3月下旬~4月初旬にかけて葉の展開に先立って開花し、紅色の雌雄の花が早春の里山を美しく彩る。秋に美しい黄葉が見られる。


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2022年10月 1日 (土)

10月の街中は金木犀のいい香りが漂う


 凶弾に倒れた安倍元総理の国葬、英国エリザベス女王の逝去、ロシアによるウクライナ領土の略奪といった大きな出来事が相次いだ9月が過ぎ、10月に入りました。
 このところ厳しい残暑も収まって快適な日々が多くなってきました。この季節の花々の代表格は金木犀です。東京の街中を散策しているとどこからともなく金木犀のいい香りが漂ってきます。


 中国南部原産の常緑小高木キンモクセイ(金木犀;モクセイ科モクセイ属)。わが国には江戸時代に渡来し、本州から九州にかけて栽培が広がった。公園木や庭木などに多く利用される。 新春のロウバイ、春のジンチョウゲウメ、夏のクチナシなどとともに代表的な芳香花木。2012.10


 この時期、橙黄色の花が満開になったキンモクセイの周りには甘くいい香りが漂い広がります。街中を歩いていても、この香りを感じて振り返るとそこには橙黄色のキンモクセイといったことがままあります。まさに秋の香りです。2014.10@隅田川テラス


 この季節、シュウメイギク(秋明菊;キンポウゲ科イチリンソウ属)の花が群生して可憐に咲き出します。秋の風情を感じさせる優雅な花です。シュウメイギクの名前からキク科のようですが、実はキンポウゲ科の植物です。中国から古い時代に渡来し、京都の貴船地方に野生化したものが見られる。2019.10


 シュウメイギク(秋明菊)には、よく見かける白花以外に勲章のように立派な形をした赤い花もあります。貴船菊や秋牡丹の別名があります。2009.10


 日本固有種で北海道~九州に分布する多年草ホトトギス(杜鵑草;ユリ科ホトトギス属)。山地の半日陰地に生育する。8月~10月頃、葉腋に数個の花を上向きにつける。漏斗状鐘形の花の紫色の斑点のようすが鳥のホトトギス(杜鵑)の胸にある斑点に似ることから和名が由来。2021.10


 ホトトギスの近縁種もよく見かけます。これは、タイワンホトトギス(台湾杜鵑;ユリ科ホトトギス属)。小さな紫色の花が咲いています。やはり、花に鳥のホトトギスの胸模様に似た紫色の斑点がありまる。沖縄県、台湾に分布する壮健な多年草。2007.10


 紀伊半島に自生するキイジョウロウホトトギス(紀伊上臈杜鵑;ユリ科ホトトギス属)。植物園のシダ園の石垣の上部から垂れ下がり黄色い花を下向きにつけています。同属のホトトギスタイワンホトトギスとは花の形状が少し違いますが、花の内側に斑点がついています。2019.10


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2022年9月16日 (金)

9月中旬の小石川植物園、ヒガンバナや八重咲サルスベリが見頃


 9月中旬になって暑さが一服したので、久しぶりに小石川植物園を回ってきました。園内では真赤なヒガンバナの花や珍しい八重咲サルスベリの花が見頃になっていました。また、温室では1回繁殖型の植物サイクルをもつ小笠原固有種のオオハマギキョウがちょうど花をつけていました。


 植物園に入って直ぐ左方に進むと奥の方に日本庭園が見えてきます。庭園に立つ旧東京医学校本館(国の重要文化財に指定)の赤い建物の前方には季節ごとに楽しめるようにいろんな植物が植えられています。この日は、落葉中高木の八重咲サルスベリが見頃になっていました。


 この八重咲サルスベリ(ミソハギ科サルスベリ属)は通常のサルスベリのC遺伝子が欠損する変異種で、サルスベリの花の雄しべが付く部分が花弁となり、2次花から5次花まで形成され八重咲の形状になる珍しい種です。八重咲サルスベリの開花時期は9月~10月と通常のサルスベリよりも遅く、9月中旬頃に咲き始めます。


 ちょうど秋の彼岸の時期が近づき、植物園の随所で燃える炎のように美しいヒガンバナ(彼岸花;ヒガンバナ科ヒガンバナ属)の花を見かけました。珍しい白花も咲いていました。全草有毒で、特に鱗茎にアルカロイドを多く含む有毒植物。球根植物。


 妖美な感じの花を咲かせるヒガンバナは、わが国では墓地などにも植えられ、ちょうど秋の彼岸の時期に咲くことから、死人花、幽霊花などの異名が付いています。後方に小さなお地蔵さんのようなものが立ち並んでいますが、これはメキシコラクウショウ(ヒノキ科スギ亜科ヌマスギ属)の気根になります。


 トウゴマ(唐胡麻;トウダイグサ科トウゴマ属)。小さな花穂が付いていて、上部の赤色の雌花、下部の黄緑色の雄花に分かれています。トウゴマの種子から得られる油はひまし油(蓖麻子油)として広く使われています。東アフリカ原産の多年草(熱帯)、一年草(日本などの温帯)。


(温室・冷温室)

 小笠原固有植物のオオハマギキョウ(キキョウ科ミゾカクシ属)。高さ2~3mにもなる多年生草本。草本ながら見かけは木本のような太い茎がある。花をつけていますが、発芽してから数年間は成長を続け、花を咲かせて実を付けると枯れていく1回繁殖型の植物サイクルをもちます。茎の上部に細長い披針形の葉が何枚も輪生状に集まり、島では千枚葉と呼ばれる。


 フジアザミ(富士薊;キク科アザミ属)。直径が10センチ位の大きなアザミの花が盛んに下向きに咲いています。日本産のアザミの中では最も大きな花を咲かせる種類で、富士山の周辺に多く生育します。


 ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻;サトイモ科コンニャク属)。草丈が数メートルで悠然とそびえ、緑葉が生い茂っています。スマトラ島固有種の草本で、その巨大さからタイタンの学名が付いています。かつて1991年、2010年に小石川植物園で開花しています。


 2010年の開花時の写真です。この時は夏の猛暑にもかかわらず連日多数の入園者が押しかけていました。真ん中の太い軸のまわりに小さな雄花と雌花が集まっていて、その花を取り囲むようにして、上向きに開いた仏炎苞がとり囲んでいます。花序の形がロウソクを立てた燭台のように見えることがショクダイオオコンニャクの和名が由来。2010.7


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