山形野草園

2022年5月 1日 (日)

各所の初夏の風景(季節のスケッチより)


 大型連休に入りました。今年はコロナ感染による外出規制が3年ぶりに解除されたということで、各地で少しづつ賑わいが戻ってきているようです。しかしながら、まだ東京で数千人の感染者が毎日出ており、最後まで油断禁物です
 さらには、2月から続くロシアによるウクライナ侵略戦争、知床半島の観光クルーズ船の沈没など、気が滅入るような出来事が相次ぎ、なかなか気持ちが穏やかになりません。

 さて、5月の初夏の季節は木々の新緑が若葉・万緑へと移り変わり、美しい緑の世界が広がります。そして、ツツジ、ウツギ、トチノキ、アヤメ、シャクヤクなどの花々も落ち着て咲き出します。各所の5月の風景(季節のスケッチ)を以下にまとめてみました。

小石川植物園


 面積は約16万㎡もの広大な緑地が東京中心部(文京区)の一角に広がっています。園内には台地、傾斜地、低地、泉水地などの地形を利用して様々な植物が配置されていて、来園者は野趣に富む山野を自由に歩き回るといった感じで四季折々の自然を楽しむことができます。

 5月セレクション 5月の風景(フォトギャラリー)
 2020.5  2019.5 2018.5


皇居東御苑

 東京丸の内・大手町に隣接する皇居東御苑は旧江戸城本丸・二の丸の跡地に広がり、庭園や芝生、雑木林などが見事に配置されています。そして季節の花木や野草を楽しむことが出来るようになっています。都心のど真ん中にあっても、都会の喧噪は全く感じられず、いつも落ち着いた雰囲気の中で散策を楽しめます。 2017.5  2014.5 2012.5


神代植物公園

 調布市の名刹深大寺のすぐ近くに広がる神代植物公園には約4,500種類、10万株の植物が植えられています。また、武蔵野の面影が残り、四季を通じて草木の姿や花の美しさを味わうことができるようになっています。 2014.5 2013.5


都心の街路樹など

 まちを美しく彩る東京の街路樹・樹木は、木々の新緑や黄葉、春~夏に咲く花々など、季節の移り変わりを知らせてくれる自然のキャンパスです。普段は何気なく見過ごしてしまいがちですが、よく観察すると新鮮な出会いに驚くことがあります。

(この時期の街路樹の花々) 2021.5
  桜田門付近:トチノキ、浅草橋:マロニエ(トチノキ)
  飯田橋:ヤマボウシ、水道橋皀角坂:サイカチ
  銀座並木通り:シナノキ、迎賓館周辺:ユリノキ
  筑波大付高キャンパス:キリ
  サンシャイン公園:タイザンボク ほか


山形の風景

 郷里の山形は風光明媚な自然に恵まれています。山形盆地に立って四方を見渡すと、東には奥羽山脈が南北に走り、船形山、蔵王連峰などの山々が連なり、西方には出羽三山(月山、湯殿山、羽黒山)などの朝日連峰に連なる山々が眺望できます。また、芭蕉の句「五月雨や集めてはやし最上川」で有名な最上川は、吾妻山系を源とし、置賜地方、山形盆地、新庄盆地、最上峡、庄内平野と県内を229km縦走して日本海に注ぐ大河です。ここでは大自然に遊び心身ともにリフレッシュすることができます。 2019.5  2017.5 2015.5


山形野草園

 山形野草園は、西蔵王高原の中に「自然との共生」を図ることをねらいとして1993年に開園され、野草、樹木あわせて約1,000種類のさまざまな植物があり、季節の野草が群生しています。山形市の市政施行100周年の記念事業の一環として整備されたものです。 2018.5


上三依水生植物園

 上三依水生植物園は日光の山地につくられ、男鹿川沿いの敷地面積約2万2千平方メートルの広大な園内に約300種、3万本の高山植物、湿生植物などが季節を彩るように咲き競っています。 2019.5


  詳しくは
  …> 季節のスケッチ(2022年5月)

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2018年5月 6日 (日)

初夏の山形野草園の風景



 連休の合間に西蔵王高原に造られた山形野草園を訪ねてきました。北国のこの時季はちょうど新緑が美しい頃です。園内をゆっくりと散策し、世界で一本しかないというミヤマカスミザクラや今が見頃のアズマシャクナゲ、林間に咲き広がるシラネアオイ、サクラソウなどを楽しんできました。


 山形野草園は、西蔵王高原の中に「自然との共生」を図ることをねらいとして1993年に開園され、野草、樹木あわせて約1,000種類のさまざまな植物があり、四季折々の野草が群生しています。山形市の市政施行100周年の記念事業の一環として整備されたものです。この日はちょうど新緑が美しい時季で、暑くもなく寒くもなく絶好の散策日和でした。


 園内にはいろんな植物が生えていて、花を咲かせていました。これはミヤマザクラとカスミザクラが自然交配した新種のサクラで、世界に1本だけの貴重なサクラとのこと。ミヤマカスミザクラと命名されています。花期は過ぎていたものの、花が少しだけ咲き残っていました。


 日本固有種の一属一種の植物で中部地方以北の多雪地に生える多年草のシラネアオイ(キンポウゲ科シラネアオイ属)の群生が見られました。新緑の林の中で、薄紫色の花がしっくりと落ち着いた感じで咲き広がっていました。日光の白根山に多く生え、花がタチアオイに似ていることが和名の由来。


 山地の湿り気の多い所に生える多年草のサクラソウ(サクラソウ科サクラソウ属)も、シラネアオイの近くで群生していました。サクラソウは地中に根茎があり、高さ15~40cmの花茎を直立させ、5~10個の清楚な美しい花をつけます。花が美しいのでよく栽培され園芸品種も多く流通しています。


 地下茎で繁殖する多年草のクマガイソウ(ラン科アツモリソウ属)が林地で群生していました。袋状の花が源氏の武将熊谷次郎直実が背負った母衣に似ていることから和名が由来。


 トウゴクマムシグサ(サトイモ科)を見かけました。花のように見えるのは仏炎苞です。ウラシマソウミズバショウザゼンソウも同じサトイモ科の仲間。


 薄紅色や白色の数多くのアズマシャクナゲ(東石楠花;ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属)の花が満開になって咲き競っていました。アズマシャクナゲは東北地方(宮城県、山形県以南)、関東地方、中部地方(南部)に分布し、亜高山帯の林内、稜線上などに自生します。


 アズマシャクナゲの周辺の木々にはウワミズザクラ(上溝桜;バラ科サクラ属)の白い花が咲いていました。北海道、本州に自生するウワミズザクラは普通のサクラの花とは違い、ブラシのような白い花序に小さな花が凝集しています。


 ミズバショウとザゼンソウの群生するミズバショウの谷ですが、この時期はもう両者とも花が咲き終わっていて、青々とした大きな葉だけが繁茂していました。


 ミズバショウの谷では、山地の湿地や沼に生える一属一種の多年草のミツガシワ(ミツガシワ科ミツガシワ属)の白い花が群生していました。葉は複葉で3小葉からなります。寒冷地に分布し、氷河期の生き残りと考えられています。


 リュウキンカ(立金花;キンポウゲ科リュウキンカ属)の花もミズバショウの谷で見かけました。本州、九州に分布し、水辺や湿地などに生育します。茎が直立し、黄金色の花をつけます。


 オキナグサ(翁草;キンポウゲ科オキナグサ属)も多く生育していました。山地の日当たりのよい草原や河川の堤防などに生育しますが、草地の開発が進んだことや山野草としても乱獲が進んだことから、各地で個体数が激減しているとのこと。オキナグサは花が終わると雌しべが羽毛状に伸び、老人の白髪のようになります。


 山地の草地に生える多年草のアマドコロ(甘野老;キジカクシ科アマドコロ属)も見かけました。茎に6本の稜があり、触ると角ばった感じがします。茎や根茎には甘みがあり、山菜として食用にされます。


 山形野草園の出入口付近です。山野草祭りが催されていたこともあり、お年寄りのグループも多く見かけました。野草園には珍しい野の花が多く、これからもリピートしたいと思います。


 上記以外にも、いろんな野草園の風景写真をアップしています。
  …> 季節のスケッチ(2018年5月 山形野草園)
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2013年4月14日 (日)

西蔵王高原に咲くミズバショウ、ザゼンソウ、ショウジョウバカマ等の山野草


 4月中旬、用事があって郷里の山形(東根)を訪れてきました。東北自動車道を北上し、山形自動車を経由して郷里に入りますが、ドライブの道すがら北国の春の風景を楽しんできました。太平洋側では、ヤマザクラ、コブシ、ハクモクレンなどの木々の花々が、自動車道から眺望できる山里の所々に咲き出していて春の訪れを実感できました。

   
 一方、日本海側は山々に雪渓が残り、サクラの開花には少し早い時期でした。しかし、西蔵王高原の山麓に広がる山形市野草園でザゼンソウが咲き出したというニュースが聞きつけましたので、それではと車を飛ばして野草園に出かけてきました。


 野草園にミズバショウの谷と呼ばれる湿地帯があって、ワインレッド色のザゼンソウが点在して開花しているのが見受けられました。また、ザゼンソウに混じって、純白色のミズバショウの花が咲き出しています。あいにくと、この日は粉雪が舞う寒い日でしたが、カメラを持つ手がかじかみながらも、張り巡らされている回廊を夢中で走り回りました。


 山地の湿地に生育するザゼンソウ(座禅草;サトイモ科)。ワインレッド色の仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる苞が中心部分に花序を囲っています。この様子が、お坊さんが座禅を組む姿に見えることから、座禅草の名が付いたされています。ダルマソウ(達磨草)とも呼ばれます。開花する際に中心部の花序が発熱して周囲の氷雪を溶かし、早い時期に顔を出すことで、この頃には数の少ない昆虫を独占するとのことです。


 ザゼンソウに交じって純白色のミズバショウ(水芭蕉;サトイモ科ミズバショウ属)も咲き出していました。ミズバショウもザゼンソウと同様、白い花のように見える部分は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ぶ葉が変形した苞で、真ん中の緑の部分に粒々のような小さな花が結集して花序が形成されています。ミズバショウは、小さい頃の「夏の思い出」の歌の印象が強いのですが、実際には4月頃に咲き出します。


 この湿地帯で、珍しい野の花を見つけました。ショウジョウバカマ(猩々袴;ユリ科ショウジョウバカマ属)です。猩々袴の名は、花が赤いのを中国の伝説上の動物の猩々になぞらえ、根生葉の重なりが袴に似ていることから由来するとのこと。
 
 春先に開花し夏まで葉をつけると、あとは広葉樹林の林床などの地中で過ごす一連の野の花を総称してスプリング・エフェメラル(春の妖精) と呼びますが、実はショウジョウバカマはスプリング・エフェメラルの仲間です。私のWebコレクションが増えました。


 ミツガシワ科アサザ属の多年草アサザ(浅沙)も、この近辺で咲いていました。浮葉性植物で、地下茎をのばして生長し、スイレンに似た切れ込みのある浮葉をつけます。アサザは日本では本州や九州などの湖沼や池に生育しますが、近年、水辺の護岸工事や水質汚濁、水位操作に伴い、各地で個体群が消滅、縮小しているそうです。


 フクジュソウ(福寿草;キンポウゲ科フクジュソウ属)もかたまって咲いていました。フクジュソウもスプリング・エフェメラルの仲間です。春の陽光があれば、まぶしいような黄金色を放ちながら輝きます。あいにく陽光のないこの日は、寒さに身を寄せ合っているようでした。フクジュソウの群れの中に、フキノトウ(蕗の薹)が交じっていました。


 やはり寒さに凍えているミスミソウ(三角草;キンポウゲ科ミスミソウ属)を見かけました。ミスミソウは本州から九州にかけて分布する常緑の多年草で、山間部の落葉樹林の林床や傾斜地に自生します。ミスミソウの名は、葉が三角形になる種類があるところから由来。天気が良ければ、花が開いて可憐な姿が見えるのですが、この時は萎んだままで残念でした。

 これ以外にも、開花が始まっているはずのセツブンソウ、アズマイチゲ、キクザキイチゲなどの野の花も日差しがないので出会い叶わず残念でしたが、今後の楽しみにしておきます。


 山形市から北へ約20km、郷里の東根市の風景です。田んぼの雪は消えていますが、出羽山系の山々はまだ雪渓を抱いています。真白で丸い月山の山頂の部分が左方に見えます。


 田んぼのあぜ道には、春の野の花が咲いていました。これは、ミチタネツケバナ(道種漬花;アブラナ科タネツケバナ属)です。空地や道端などによく生えています。よく見ると、ミチタネツケバナの近くにオオイヌノフグリやヒメオドリコソウも咲いています。


 ツクシ(土筆)がニョキニョキと伸びてきているのを見かけました。ツクシの周りにはスギナ(杉菜;トクサ科トクサ属)がツンツンと生えていますが、両者は同一の植物体で、スギナの胞子体がツクシです。


 往路(下り)の東北自動車の安達太良PAからは、高村光太郎の「智恵子抄」で有名な安達太良山が展望できます。かすかに雪が山頂に残っています。智恵子の実家はこの地の酒蔵でした。



 またこのPA内には、ハクモクレンやヤマザクラの花が力強く咲いていました。まさに、春を歓ぶ北国の風景です。

 この他にも、いろんな写真があります。
     …> 季節のスケッチ(25年4月)


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2011年4月 3日 (日)

ソメイヨシノはまだ3分咲き、サトイモ科3兄弟のウラシマソウを見つけました

 4月に入って初めての日曜日を迎えました。ソメイヨシノが開花したこともあり、例年であれば花見客で賑わう小石川植物園ですが、今年は大震災の影響もあって少なめの人出でした。


 ソメイヨシノはまだ2~3分咲きといったところでした。気温も低めに推移していますので満開までまだ日数がかかりそうです。次の週末の頃に満開でしょうか。年末から、ヒマヤラザクラ(12月)、カンザクラ(1月~2月)、カンヒザクラ(3月)、早春桜(3月)、サトザクラ(3月)といろんな桜の花が園内で咲き出してきましたが、やはり真打ちはソメイヨシノです。もう少し待ちましょう。


 その代わりと言うわけではないのですが、今日は幸運にも、珍しい山野草のウラシマソウ(浦島草;サトイモ科)が開花しているのを見つけました。開花したウラシマソウの形を見ると、まるで浦島太郎が釣り糸を垂らしているかのようです。地味な花ですので、今まではその前を素通りしていて気がつきませんでした。

 サトイモ科には強烈な印象を受けるユニークな野草が多いのですが、私はこの浦島草と水芭蕉、座禅草を自分勝手にサトイモ科3兄弟と呼んでいます。


 ミズバショウ(水芭蕉)は、昨年4月に箱根湿生花園で初めて出会いました。水辺の林地に点々と無数のミズバショウの白い花々が生息する風景を目の前にして、息が詰まるほどの感動を覚えたのを記憶しています。湿生花園内は木で作った回廊が遊歩道になっていますが、遊歩道からもしっかりと見ることができます。


 このザゼンソウ(座禅草)は2007年4月に山形野草園で見つけました。ちょうど黒頭巾をかぶったお坊さんが座禅を組んでいるような姿からこの名が由来。山形野草園は西蔵王の山麓に在って、ミズバショウ、ザゼンソウ、ミツガシワ、アケボノソウなど四季折々の野草が群生します。

 本当は、この浦島草、水芭蕉、座禅草以外にも見つけたいサトイモ科兄弟があるのですが……。

   …> 季節のスケッチ(23年4月)

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2007年4月 8日 (日)

4月上旬、山形に春の訪れ



 四月上旬、山形を訪れてきました。郷里の山々にはまだ残雪が多く見られます。田圃はこれから田植えの準備です。


 北国は、ハクモクレンをよく見かけます。ちょうどこの時期、白い花が所狭しと樹上に咲き誇っていました。


 山形の西蔵王の山麓に四季折々の野草が群生する野草園があって、毎年4月に開園します。開園直後の野草園では、湿地にザゼンソウ(座禅草;サトイモ科)がちょうど見頃でした。


 まばゆい黄金色に輝くフクジュソウ(福寿草;キンポウゲ科)が、北国の春陽の日差しの中に咲き始めていました。


 珍しい山野草も咲いていました。これは、落葉樹林の縁や草原、山麓の土手に生える多年草のアズマイチゲ(キンポウゲ科)です。


   …> 季節のスケッチ(19年4月)

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