箱根湿生花園

2019年3月14日 (木)

久々の箱根湿生花園、ミズバショウ、ミスミソウなどの春植物が出迎え



 伊豆高原のジオサイトを楽しんだ後、北上して箱根へ。久しぶりに仙石原の湿原に広がる箱根湿生花園を訪れてきました。今年は例年より少し早く3月1日に開園になっていました。箱根湿生花園は、湿原をはじめとして川や湖沼などの水湿地に生育している植物を中心にした植物園です。広大な園内には低地から高山まで日本の各地に点在している湿地帯の植物(200種)のほか、草原や林、高山の植物(700種)などが集まっています。


 園内の水湿地では純白の苞をまとったミズバショウ(水芭蕉;サトイモ科ミズバショウ属)の花がが咲き広がっていました。まさに美しい箱根の春到来といった感じでした。


 前回の湿生花園でミズバショウに出会ったのは4月上旬でしたので、3月中旬のこの時期はどうかなと案じていたのですが、その心配は無用でした。


 ミズバショウの白い花のように見える部分は、実は花ではなく仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ぶ葉が変形した苞です。そして真ん中の緑の部分に粒々のような小さな花が結集しています。園内にはキバナミズバショウやザセンソウなども生えているのですが、この日は見つけることが出来ませんでした。


 セツブンソウ(節分草;キンポウゲ科セツブンソウ属)の可憐な花が咲いていました。石灰岩地に分布するスプリング・エフェメラルの仲間です。園の方の話によると、この早春に咲くセツブンソウを公開するために開園日を早めたとのこと。


 フクジュソウ(福寿草;キンポウゲ科フクジュソウ属)の黄金色の花も咲き出していました。フクジュソウは北海道から九州にかけて分布し山林に生育するスプリング・エフェメラルの仲間です。


 ミスミソウ(三角草;キンポウゲ科ミスミソウ属)の小さく可愛らしい花が園内の各所に咲いていました。三角形状の葉が三つに分かれているのが特徴です。


 ミスミソウの花の色は白色、薄紅色、青色など様々です。本州の中部以西の山間地に多く生育する常緑の多年草です。


 カタクリ(片栗;ユリ科カタクリ属)の赤紫色の花がひそやかに何輪か咲き出していました。陽光差す落葉広葉樹林の林床などに生育するスプリング・エフェメラルの代表格の春の花です。カタクリの花は6枚の花びらが反り返っていて、まるで森の妖精が背中の羽根を羽ばたきながら遊んでいるようです。


 バイカオウレン(梅花黄蓮;キンポウゲ科オウレン属、別名はゴカヨウオウレン)の白い花を見つけました。小葉は5枚。日本固有種で、本州の福島県以南と四国に分布し、山地帯から亜高山帯の針葉樹林の林床や林縁に生育する常緑の多年草です。


 すぐ隣にミツバノバイカオウレン三葉の梅花黄蓮;キンポウゲ科オウレン属)。小葉は3枚。本州中部以北の日本海側の亜高山帯から高山帯に自生します。


 本州、北海道の山地に分布する落葉小低木のナニワズ(ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属)。黄色の花を枝先に束生状に多数付けます。


 アセビ(馬酔木;ツツジ科アセビ属)の木々が白色や赤紫色の細かい花を鈴なり状に連なって枝に付けていきました。アセビは呼吸中枢を麻痺させる毒性を有しており、家畜は食べないとのこと。アセビは途中の箱根の山地の所々でも見かけました。


 ネコヤナギ(猫柳;ヤナギ科ヤナギ属)のふっくらとした銀白色の毛で目立つ花穂を水辺で多く目にしました。よく観察すると黄色のオシベが見えます。


 林の中に一羽のキジ(雉)を見つけました。盛んに地上のエサを啄んでいました。


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2014年4月 6日 (日)

箱根湿生花園で新たなスプリング・エフェメラルと出会う


 4月5日~6日の週末、箱根に出かけた折りに仙石原にある箱根湿生花園を訪れてきました。これまで湿生花園は何回か訪れていますが、この時期は2度目で4年ぶりになります。園内は群生するミズバショウをはじめ色んな山野草が咲いていましたが、前回見過ごしてしまった幾つかのスプリング・エフェメラルと出会うことが出来たのは大きな収穫でした。また、箱根からの帰途は小田原に立ち寄り、サクラが満開の小田原城を眺め、そして本場の蒲鉾や干物をお土産に買い求め帰路に着きました。

【箱根湿生花園】



 湿生花園内は季節毎に色んな山野草が咲き、いつもでも楽しめるようになっています。4月上旬のこの時期は湿地に群生するミズバショウ(水芭蕉;サトイモ科ミズバショウ属)が見頃になっています。ミズバショウは雪の多い日本海側や高山に分布し、雪の少ない箱根には自生しません。ミズバショウの近縁種のザゼンソウ(座禅草;サトイモ科ザゼンソウ属)も何株か見かけました。


 ミズバショウの群生地で、所々に鮮やかな黄金色のエゾノリュウキンカ(蝦夷立金花;キンポウゲ科リュウキンカ属)を見かけました。本州北部や北海道などに分布する多年草で、茎は直立しやや大きめの花を多数咲かせます。また、谷川に群生し春の柔らかい葉を食するのでヤチブキとも呼ばれます。


 園内では山野草だけでなく、樹木の花々も咲いています。これは玄界灘近くの山地に多い落葉低木のゲンカイツツジ(玄海躑躅;ツツジ科ツツジ属)。園内で最初に咲くツツジです。この日はゲンカイツツジ以外にも、シデコブシマメザクラミツマタなどが開花していました。


 いつ来ても湿生花園は山野草の宝庫になっていますが、特に春のこの時期は一斉に花が咲き始め、生命の息吹を感じることができます。これはカタクリ(片栗;ユリ科カタクリ属)の花。6枚の花びらが反り返っていて、まるで春の陽光の下で森の妖精たちが背中の羽根を羽ばたきながら遊んでいるように見えます。

 春先に開花し夏まで葉をつけると、あとは落葉広葉樹林の林床などの地中で過ごす一連の野の花を総称してスプリング・エフェメラル Spring Ephemeral と呼びますが、カタクリは典型的なスプリング・エフェメラルです。春先に花を咲かせた後、夏までの間に光合成を行って地下の鱗茎や種子に栄養分を蓄え、その後は春まで地中の地下茎や球根の姿で過ごすというライフサイクルを持ちます。


 白色や薄紫色の一輪の花はキクザキイチゲ(菊咲一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)です。キクに似た花を一輪つけることからこの名が由来し、キクザキイチリンソウとも呼ばれます。本州近畿地方以北から北海道に分布し、落葉広葉樹林の林床などに生育します。キクザキイチゲもスプリング・エフェメラルの一種。


 ミスミソウ(三角草;キンポウゲ科ミスミソウ属)。雪の下でも常緑であることからユキワリソウ(雪割草)とも呼ばれます。本州の中部以西の山間地に多く生育し、葉は常緑で三角形に近く三つに分かれています。


 珍しいヒトリシズカ(一人静;センリョウ科チャラン属)の花を見つけました。茎の先に1本の穂状花序を出し、ブラシ状の小さな白い花をつけて群生していました。花穂を2本以上出すのが近縁種のフタリシズカになります。ヒトリシズカは北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の林内、林縁に自生します。静御前の舞う姿を彷彿させることからこの名が付いています。


 ショウジョウバカマ(猩々袴;ユリ科ショウジョウバカマ属)。北海道から九州までの、やや湿った場所に分布します。面白い名前が付いていますが、赤い花が中国の伝説上の動物のこ猩々(ショウジョウ)になぞらえ、根生葉の重なりが袴(ハカマ)に似ていることから由来するそうです。ショウジョウバカマもスプリング・エフェメラルの一種とされています。


 イワウチワ(岩団扇;イワウメ科イワウチワ属)が岩場に密生していました。日本の固有種で、本州の中国地方以北の山地帯の林内や林縁に分布します。岩場に生え、葉の形状が団扇(ウチワ)に似ていることから和名が由来。


 エゾエンゴサク(蝦夷延胡索;ケシ科キケマン属)を初めて観察しました。近縁種のムラサキケマン(紫華鬘)よりやや小振りです。エゾエンゴサクは北海道、本州北部の山地に分布する多年草で、ムラサキケマンと同様にスプリング・エフェメラルの一種。蝦夷に生え、地中の塊茎が漢方薬の「延胡索」に似ていることから和名が由来。


 コシノコバイモ(越の小貝母;ユリ科コバイモ属)の可憐な花を見つけました。コバイモの仲間は生息地の名前が付くことが多く、コシノは越後地方の意味。コバイモの仲間は、草むらに普段に見かけるバイモよりもずっと小柄でスプリング・エフェメラルの一種です。コバイモには今回初めて出会いました。


 やはりスプリング・エフェメラルの一種の多年草キバナノアマナ(黄花の甘菜;ユリ科キバナノアマナ属)が黄色の花を咲かせていました。地下に鱗茎(球根)があり、早春に葉と同時に花茎を出します。国内では北海道、本州中部以北に分布し、日のあたる草むらや田畑の土手、林の縁などに生育します。キバナノアマナも初めての出会いです。


 シラネアオイ(白根葵;キンポウゲ科シラネアオイ属)。日本固有種の1属1種で、深山に生育する山野草です。和名は、日光白根山に多く、花がタチアオイに似ることから付きました。山芙蓉(やまふよう)や春芙蓉(はるふよう)の別名があります。花の正面から撮った写真がピンぼけで横からの写真になってしまいました。


 北米原産のトキワナズナ(常盤薺;アカネ科フーストニア属)の小さな4弁花が密生して咲いていました。わが国には明治時代に渡来し、野生化しているものもあるようです。名前は常緑のナズナということになりますが、花の形状はナズナとは全然異なります。


 湿地帯の畔でスギナ(杉菜;トクサ科トクサ属)の胞子体であるツクシ(土筆)を見つけました。よく見ると園内の随所にニョキニョキと立ち並んでいるのですが、周りの土や枯れ草と色が似ているので注意しないと見過ごしてしまいます。

 これ以外にも、園内には色んな春の山野草が咲いており、この日は時間を忘れて歩き回りました。


【小田原城】


  翌日は箱根から東京へ戻るわけですが、小田原城がサクラで満開なことを聞きつけ、途中小田原に立ち寄ってきました。あいにくと雨模様でしたが、それでも花見客で賑わっていました。小田原城は昨年末に訪れたばかりですが、今回は年末とは違った素晴らしい春爛漫の趣を楽しんできました。

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2011年9月13日 (火)

箱根湿生花園:仲秋の風景


 仲秋の9月11日、仙石原の箱根湿生花園を訪れてきました。高校の同窓会行事でしたので、仲間と一緒に園内を散策してきました。前回の訪問の時(→22年4月箱根)は、一面に群生する真っ白なミズバショウに出会うことができ、大感激でした。今回はどうかなと思っていたのですが、期待に違わず秋の山野草が随所に咲き競っていて、存分に季節の野趣を満喫してきました。
 


 園内の草原は秋の山野草の宝庫です。タムラソウ(田村草)やワレモコウ(吾亦紅)の花も咲いていました。いかにも秋の野趣たっぷりの風情です。
 


 キキョウ科の多年草のサワギキョウ(沢桔梗)が湿原の所々に咲いていました。小さな青紫色の花が枝先に連なっています。サワギキョウはロベリンという成分を含む毒草ですが、アゲハチョウにとっては何の問題もなさそうです。
 


 アブが戯れているのは、全国の山地の草原に分布するマツムシソウ(松虫草;マツムシソウ科)です。面白い名前ですが、松虫の鳴く頃にこの花が咲くことがこの名の由来。
 


 秋の七草の一つオミナエシ(女郎花;オミナエシ科)の花も園内の広大な草原に咲いていました。すぐ近くにヤマハギやワレモコウの花も見えます。
 

 これ以外にも多くの種類の山野草も見つけましたので、「季節のスケッチ 23年9月箱根」のコンテンツにまとめておきました。箱根湿生花園は、時期をずらして何度も訪れてみたいスポットです。


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2011年4月 3日 (日)

ソメイヨシノはまだ3分咲き、サトイモ科3兄弟のウラシマソウを見つけました

 4月に入って初めての日曜日を迎えました。ソメイヨシノが開花したこともあり、例年であれば花見客で賑わう小石川植物園ですが、今年は大震災の影響もあって少なめの人出でした。


 ソメイヨシノはまだ2~3分咲きといったところでした。気温も低めに推移していますので満開までまだ日数がかかりそうです。次の週末の頃に満開でしょうか。年末から、ヒマヤラザクラ(12月)、カンザクラ(1月~2月)、カンヒザクラ(3月)、早春桜(3月)、サトザクラ(3月)といろんな桜の花が園内で咲き出してきましたが、やはり真打ちはソメイヨシノです。もう少し待ちましょう。


 その代わりと言うわけではないのですが、今日は幸運にも、珍しい山野草のウラシマソウ(浦島草;サトイモ科)が開花しているのを見つけました。開花したウラシマソウの形を見ると、まるで浦島太郎が釣り糸を垂らしているかのようです。地味な花ですので、今まではその前を素通りしていて気がつきませんでした。

 サトイモ科には強烈な印象を受けるユニークな野草が多いのですが、私はこの浦島草と水芭蕉、座禅草を自分勝手にサトイモ科3兄弟と呼んでいます。


 ミズバショウ(水芭蕉)は、昨年4月に箱根湿生花園で初めて出会いました。水辺の林地に点々と無数のミズバショウの白い花々が生息する風景を目の前にして、息が詰まるほどの感動を覚えたのを記憶しています。湿生花園内は木で作った回廊が遊歩道になっていますが、遊歩道からもしっかりと見ることができます。


 このザゼンソウ(座禅草)は2007年4月に山形野草園で見つけました。ちょうど黒頭巾をかぶったお坊さんが座禅を組んでいるような姿からこの名が由来。山形野草園は西蔵王の山麓に在って、ミズバショウ、ザゼンソウ、ミツガシワ、アケボノソウなど四季折々の野草が群生します。

 本当は、この浦島草、水芭蕉、座禅草以外にも見つけたいサトイモ科兄弟があるのですが……。

   …> 季節のスケッチ(23年4月)

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2010年4月11日 (日)

箱根に群生するミズバショウ


 週末に箱根の仙石原にある箱根湿生花園を訪れてきました。東京からは、東名高速の御殿場インターを降りて15分程で到着します。箱根町立の植物園で仙石原の広大なスペースの原野に湿生の野草をはじめとして、コブシ、ツツジ、レンギョウ、アジサイなどの数多くの樹木なども生育して、野趣あふれるスポットです。


 箱根湿生花園に入って、一面に群生するミズバショウ(水芭蕉;サトイモ科)を見つけました。そもそもミズバショウに出会ったのは初めてですが、水辺の林地に点々と無数のミズバショウの白い花々が生息する風景を目の前にして、息が詰まるほどの感動を覚えました。
 

 ミズバショウは尾瀬に行って見るものと思っていたのですが、箱根にも群生地があったのですね。ミズバショウの白い花のように見えますが、実はこの純白の部分は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ぶ葉が変形した苞で、真ん中の緑の部分に粒々のような小さな花が結集しているとのことです。


 湿生花園には、ミズバショウの他にも沢山の野草が咲いていました。これはカタクリ(片栗;ユリ科)の花です。時期的にはそろそろ終わりの頃かと思いますが、園内の丘のところに、薄赤紫色の可憐な花がまだ数多く咲いていました。歩道のすぐ近くにも咲いていますので接写ができました。


 野草以外にも、サクラやコブシなどの木々に春の花が青空に舞っていました。これはコブシの仲間のシデコブシです。湿地周辺に生育する種であることもあって、開発なども加わって減少しつつある種として絶滅危急種に指定されています。通常は白い花ですが、このシデコブシは薄紅色をしているので、特にベニコブシと呼ばれます。

  …> 季節のスケッチ (22年4月 箱根)

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