懐かしい沖縄の樹木・花々
相変わらず梅雨空が続き、夏空が待ち遠しいこの頃ですが、夏空といえば、やはり南国沖縄を思い浮かべます。かつて昭和から平成へ元号が代わる時期、沖縄に約2年間赴任していたことがあり、沖縄と聞くと懐かしさがこみ上げてきます。当時はデジカメやPCが普及してなかったので、沖縄の風景写真を殆ど撮ってなかったことが悔やまれます。
しかし、その後小石川植物園をはじめ、新宿御苑、神代植物公園などの都内の植物園をめぐって、懐かしい沖縄の樹木、花々を見かけるようになり、その都度写真を撮っては楽しんでいます。さらに沖縄出張時の写真も加えて、沖縄の樹木、花々を取りまとめてみました。
カンヒザクラ(寒緋桜)
沖縄に自生するカンヒザクラ(寒緋桜;バラ科サクラ属サクラ亜属カンヒザクラ群)。日本のサクラの基本野生種の一つ。満開になった濃い紅色の鐘状の花が強烈な印象を与える。カンヒザクラを片親とする多くの栽培品種が作り出されている。2017.3@小石川植物園
沖縄でサクラといえばこのカンヒザクラのことをいい、新年早々から咲き始めます。本部町、名護市などの地域で多く見られ、花見客で賑わいます。
トックリキワタ(南洋ザクラ)
南米原産の落葉高木トックリキワタ(アオイ科セイバ属)。沖縄にはボリビア移住地から1964年に琉球政府農業技術者の天野鉄夫氏によって種子が持ち込まれた。10月~12月にかけて鮮やかなピンク色の花が咲き、自動車道沿いや街道沿いなどに立ち並ぶトックリキワタの高木は壮観な眺めとなる。南洋ザクラとも呼ばれ、観賞用花木として親しまれている。2016.10@神代植物公園
ブーゲンビリア(Bougainvillea)
沖縄の青空によく似合うブーゲンビリア(Bougainvillea;オシロイバナ科ブーゲンビリア属)。赤色、赤紫色などの鮮やかな原色の花を付けるが、この部分は葉が変形した苞。その中心部に白色の小さな筒状の花が咲く。育てやすく色彩が鮮やかなことから庭木によく用いられる。2008.10@沖縄宜野湾海浜公園
ブッソウゲ(アカバナー)
常緑小低木ブッソウゲ(扶桑花;アオイ科フヨウ属)。長い柄をもつ赤い大きな5弁の花が開き、管状に癒合した雄しべと雌しべとが突き出す。沖縄ではアカバナーとも呼ばれる。観賞用に温室で栽培されるが、夏季は戸外でもよく育つ。わが国では、フヨウ属の中で南国のイメージをもつ熱帯/亜熱帯性のいくつかの種がハイビスカスと呼ばれるが、本種はその代表的な植物。2013.1@新宿御苑
サキシマフヨウ(先島芙蓉)
南西諸島(鹿児島県西部の島~沖縄)に分布する半落葉低木のサキシマフヨウ(先島芙蓉;アオイ科フヨウ属)。全体的に夏の代表的な花木のフヨウと似ているが、開花時期は遅れ、10月~11月頃に白色から淡紅色の花が咲く。庭園、公園などで用いられる。沖縄県先島地方(宮古島、八重山諸島)に多く自生しているため和名が付く。2021.6@小石川植物園
キョウチクトウ(夾竹桃)
沖縄でよく見かける常緑低木キョウチクトウ(夾竹桃;キョウチクトウ科キョウチクトウ亜科キョウチクトウ属)。炎暑の夏を延々と咲き続ける夏の花木で赤花と白花がある。葉の形状が竹に似て狭く、花が桃に似ていることから和名が由来。乾燥や大気汚染に強いため、街路樹などに利用される。木枝に強い毒性を有するので要注意。生木を燃やした煙も有毒。2004.7@小石川植物園
デイゴ(梯梧)
沖縄民謡などにも出てくる落葉高木デイゴ(梯梧;マメ科マメ亜科デイゴ属)。沖縄が北限の南国に生息し、わが国では沖縄以外には奄美群島、小笠原諸島に自生する。いかにも南国のイメージに合う原色の燃えるような真赤な色の花が枝先に咲く。沖縄では県花として親しまれている。公園や街路樹などによく用いられている。また、材が柔らかく加工しやすいため、漆器の材料に利用される。2021.2@小石川植物園
コバノセンナ
コバノセンナ(マメ科ジャケツイバラ亜科センナ属)。鹿児島県南部、奄美、沖縄に分布する耐寒性常緑低木。10月~12月頃、枝先に多くの鮮やかな黄色の花がまとまって咲き、青空とのコントラストが美しい。小さな丸い葉が互生する。同属のハブソウやエビスグサと花が似る。沖縄では公園等でよく見かけます。2008.10@沖縄宜野湾海浜公園
ソシンカ(蘇芯花)
落葉高木ソシンカ(蘇芯花;マメ科ジャケツイバラ亜科ハカマカズラ属)。わが国では奄美大島、沖縄で広く栽培されている。3月~4月に赤紫色の5弁の大きな花が咲く。沖縄では街路樹や公園木に用いられる。2021.3@小石川植物園
サンタンカ(山丹花、三段花)
常緑低木サンタンカ(山丹花;アカネ科サンタンカ属)。沖縄と九州の一部で野生化している。茎の先に美しい紅色の集散花序がつき、多くの小さな花が咲く。沖縄ではディゴ、オオゴチョウとともに沖縄の三大名花とされる。サンダンカ(三段花)とも呼ばれ、公園木や庭木などによく用いられる。2019.11@小石川植物園
ギョクシンカ(玉心花)
九州南部から沖縄に分布する常緑低木ギョクシンカ(玉心花;アカネ科 ギョクシンカ属)。山地の林内に生息する。散房形の花序に、ひらひらした形状の花弁をもつ純白の花がつき、近づくとほのかにいい香りがする。葉に共生する葉粒バクテリアにより菌粒を作り、空気中の窒素を固定する。2021.4@小石川植物園
コウシュンカズラ(恒春葛)
沖縄、台湾、東南アジアなどに分布するつる性常緑低木コウシュンカズラ(恒春葛;キントラノオ科コウシュンカズラ属)。枝先に総状花序を出し、黄色の5弁花が密に咲く。マングローブ林や海岸に生える。丈夫に育つので沖縄では生け垣にも用いられる。準絶滅危惧種(NT) 。2020.9@小石川植物園
ノボタン(野牡丹)
沖縄に生える常緑高木ノボタン(野牡丹;ノボタン科ノボタン属)。枝先に赤紫色の5弁の大きな花を咲かせる。花の中で黄色の雄しべがよく見える。 ノボタン科の植物は主に熱帯・亜熱帯地方に分布するが、日本ではノボタンを含む4属7種が南西諸島や小笠原諸島などに分布する。 2021.4@小石川植物園
シマサルスベリ(島百日紅)
沖縄、奄美諸島などの亜熱帯地方に分布する落葉高木シマサルスベリ(島百日紅;ミソハギ科サルスベリ属)。初夏に白い滑らかな木肌の幹の上方に若葉が生い茂る。夏には高木の木頂付近に白い花が咲く。サルスベリの花と比べると質素な感じです。晩秋の紅葉は美しい。2019.9@小石川植物園
イヌビワの仲間
奄美大島~沖縄地方に広く分布するハマイヌビワ(浜犬枇杷;クワ科イチジク属)。沖縄では海岸近くの石灰岩地に多く見られる。雌雄異株の常緑中高木。ハマイヌビワは、本州のホソバイヌビワなどと似ているが、左右非対称(主脈の部分で折り返すと左右が重ならない)の葉の形状が特徴的。5月頃に球形の花嚢が葉腋から直につき、秋に熟す。花嚢の中に外から見えない花が咲き、授粉を媒介する寄生蜂との共生関係を有する。2021.4@小石川植物園
ハマイヌビワ以外にも、アカメイヌビワ、オオバイヌビワ、ホソバムクイヌビワなどの多くのイヌビワの仲間が沖縄に生育する。
ガジュマル(榕樹)
主に南西諸島(沖縄、奄美大島など)に分布する常緑高木ガジュマル(榕樹;クワ科イチジク属)。幹や枝から垂れ下がる気根が複雑に絡み合って独特の樹形をなす。雌雄同株で、5月~8月頃に葉腋につく球形の花嚢の中に、他のイチジク属の仲間と同じように外から見えない花を咲かせ、授粉を媒介する寄生蜂と共生関係を有する。厚く小さな葉にはつやがある。2021.4@小石川植物園
沖縄コンベンションセンターの緑地に生えるガジュマルの木。沖縄では精霊キジムナーが宿る木として神聖視されてきた。ガジュマルの大木を裂けるように道路が曲がっている光景も目にする。2011.6@沖縄コンベンションセンター
コバテイシ(モモタマナ)
沖縄各島と小笠原に分布する半落葉高木コバテイシ(モモタマナ;シクンシ科モモタマナ属)。花期は5月~7月で穂状花序が葉腋につく。樹木の上方が横に広がり、葉が大きい。沖縄では貴重な木陰を提供し、街路樹、緑陰樹として多用される。果実は食用にもなる。2011.6@沖縄コンベンションセンター
リュウキュウアセビ(琉球馬酔木)
沖縄に分布する常緑低木リュウキュウアセビ(琉球馬酔木;ツツジ科アセビ属)。沖縄本島固有種で古世層地帯の日当りの良い川辺に生える。開花時期は2月~3月。葉や花は同属のアセビよりも厚みと光沢がある。乱獲で個体数が減少し、絶滅危惧IA類(CR)に登録されている。 2021.3@小石川植物園
セイシカ(聖紫花、八重山聖紫花)
沖縄の八重山地方(石垣島や西表島)に自生する常緑小高木セイシカ(聖紫花;ツツジ科ツツジ属セイシカ亜属)。八重山聖紫花ともいう。川沿いの林内や林縁の岩上に生育する。神秘的な語感の和名は、山奥の渓流沿いという秘境に咲く花のイメージに似合う。2008.5@小石川植物園
センカクツツジ(尖閣躑躅)
わが国の尖閣諸島魚釣島の固有種で山頂付近の岩地に生育するセンカクツツジ(尖閣躑躅;ツツジ亜属ツツジ節サツキ列)。3月~4月頃に赤紫色の花が咲き、葉の両面に白い毛が付く。ただ、同島に生息するヤギの食害により絶滅が危惧されている(絶滅危惧IA類)。 2021.3@小石川植物園
センカクツツジは戦後、琉球政府(沖縄返還前の統治機構)の数次の調査団により採取されたものです。この事実からも尖閣諸島がわが国の固有の領土であることは明らかです。
センカクオトギリ(尖閣弟切)
日本固有種で沖縄県尖閣諸島の魚釣島のみに分布するセンカクオトギリ(尖閣弟切;オトギリソウ科オトギリソウ属)。断崖の風衝地に生育する常緑低木。1970~1971年の琉球大学の学術調査により、魚釣島の山頂付近で発見された。夏に咲く雄しべが長い5弁の黄色の花は、他のオトギリソウ属の植物の花によく似る。園芸用の採取やヤギによる食害等により自生地及び個体数が減らしている。絶滅危惧IA類。2021.4@小石川植物園
ハナコミカンボク(花小蜜柑木)
ハナコミカンボク(花小蜜柑木;コミカンソウ科コミカンソウ属)。わが国では沖縄中部の万座毛近辺のみに見られ、海岸の石灰岩の岩場に生える落葉小低木。自生地は「万座毛石灰岩植物群落」として沖縄県指定天然記念物となっています。幹のつけ根の部分からよく分枝し、小枝に多数の楕円形の葉が互生する。開花時期は周年で、葉の葉腋からごく小さな紅紫色の6弁の花が下垂する。絶滅危惧IB類(EN)に登録されている。2021.3@小石川植物園
ソテツ(蘇鉄)
裸子植物の常緑低木ソテツ(蘇鉄;ソテツ科ソテツ属)。日本固有種で、九州南部~南西諸島に分布。海岸近くの岩場に生育する。茎の先端に丸くドーム状に膨らんだ雄花を付けています。2016.7@小石川植物園
ソテツの木の根元に赤色の実が付いています。この赤い実には多量のでんぷんと同時に有毒物質を含むので、十分に毒抜きすれば食用になる。原産地の沖縄や奄美諸島では、かつて食料がないときの非常食として食べられていた。2010.12@小石川植物園
アダン(阿檀)
南西諸島、大東諸島に分布する常緑小高木アダン(阿檀;タコノキ科タコノキ属)。海岸近くに生育し、密集した群落を作る。夏季に花序をつくり、その後パイナップルと同様の集合果の果実ができる。実は繊維分が多いため、食用には向かない。葉はパナマ帽等の細工物としたり、筵やカゴを編む素材として利用される。2008.10@沖縄宜野湾海浜公園
ショウキズイセン(鍾馗水仙)
黄色の花を付けたショウキズイセン(鍾馗水仙)。形状はヒガンバナとそっくりで、黄花彼岸花とも言われる。ヒガンバナより遅れて10月頃に咲き出します。中国からの帰化植物。九州、四国、沖縄などで自生。ヒガンバナ科ヒガンバナ属の球根植物。2016.10@小石川植物園
マツムラソウ(松村草)
沖縄県の西表島と石垣島に分布する常緑多年草マツムラソウ(松村草;イワタバコ科マツムラソウ属)。湿った崖面に生育する。花期は7月~10月頃で茎先に長い総状花序を形成し、漏斗形の黄色の花が多数並んで咲く。対生する葉は大きめで鋸歯がある。1属1種。現在、採集などにより自生する個体数が減少している(絶滅危惧IA類)。2021.4@小石川植物園
ナガエササガニユリ(スパイダーリリー)
沖縄の公園でよく見られる多年草ナガエササガニユリ(ヒガンバナ科ヒメノカリス属)。6月~8月に白い花を咲かせる。細長い6枚の花弁は放射状に伸びる。花の姿がクモが脚を広げたようにも見えるユニークな形状をしていて、スパイダーリリーとも呼ばれる。葉はつやがある緑色で、細長い剣のような形をしている。球根植物。2011.6@沖縄コンベンションセンター
これ以外にも、小石川植物園などで色々な沖縄の植物に出会うことができます。詳しくは
…> 季節のスケッチ(2021年7月 沖縄の植物)
最近のコメント