ノーベル賞

2019年10月 9日 (水)

ノーベル化学賞に旭化成名誉フェローの吉野彰氏が受賞決定


 この週末に非常に強い台風19号の襲来するといった重苦しいニュースが流れていた最中、本年のノーベル化学賞に旭化成名誉フェローの吉野彰氏が受賞決定したという大変うれしいニュースが飛び込んできました。


  2019年ノーベル化学賞受賞の3氏(吉野彰氏は右)

 スウェーデン王立科学アカデミーは、本年のノーベル化学賞を、リチウムイオン電池を発明した旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71才)ら3氏に授与すると発表しました。小型で高性能の充電池として携帯型の電子機器を急速に普及させ、IT社会の発展に大きく貢献した功績が評価されたとのことです。

 リチウムイオン電池は、従来充電できる2次電池として使用されていたニッケル・カドミウム電池などの性能を飛躍的に高めたもので、この登場により携帯電話やノートパソコンなどの普及が加速され、現在のIT・モバイル社会の実現に大きな役割を果たしたと言えます。リチウムイオン電池の市場規模は世界で4兆円超に拡大しています。現在、電気自動車、スマートグリッドなどへの実用化も精力的に進められていて、未来社会のエネルギー基幹デバイスとしての活躍が大いに期待されます。

 今回の吉野彰氏の受賞により、日本人のノーベル賞受賞は、昨年の生理学・医学賞を受賞した本庶佑京都大特別教授に続いて27人目になります。また、企業研究者からの受賞は2002年の田中耕一氏(島津製作所)以来2人目です。日本人としては大変誇らしい気持ちです。

 しかしながら、最近は、資金面などでわが国の研究環境が年々厳しくなっていると言われています。わが国が引き続き世界の研究開発を先導していくことが出来るような枠組みを再構築してもらいたいと切望します。

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2018年10月 1日 (月)

ノーベル医学・生理学賞に本庶佑氏が受賞決定


 今年のノーベル医学・生理学賞に本庶佑京都大名誉教授(76才)が選ばれたと発表されました。「PD-1」を発見したことが評価され、これをもとに、がん治療薬「オプジーボ」が開発されています。日本人のノーベル賞受賞は2年ぶりで、米国籍の2人を含めて計26人となります。また、医学・生理学賞の受賞は5人目となります。受賞おめでとうございます。


文化勲章受章に際して
文部科学省より公表された肖像写真

 日本学士院は、本庶佑さんの主要な業績について「リンパ球が抗体遺伝子にクラススイッチ組換えと体細胞突然変異という遺伝子改変を導入し、ウイルスや細菌などの病原体の認識と排除に最も適した抗体を作る仕組みを解明した。」と説明するとともに、「活性化誘導シチジンデアミナーゼを発見し、そのメカニズムの全貌を明らかにしたことは国際的に高く評価されている。」としていました。

 本庶佑さんは、受賞が決まった記者会見において、「この治療法によって重い病気から回復して元気になった、あなたのおかげだと言われるときがあると、本当に私としては自分の研究が本当に意味があったということを実感し、何よりもうれしく思う。」と述べ、さらに「今回の、基礎的な研究から臨床につながるような発展ということで受賞できたことによって、基礎医学分野の発展が一層加速し、基礎研究に関わる多くの研究者を勇気づけるということになれば、私としてはまさに望外の喜びです。」とも述べています。

 本庶佑さんの成果が、今後多くのがん患者の命を救うことになると同時に、この分野の若手研究者にとって大きな励みになるものと期待されます。

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2016年10月 8日 (土)

大隅良典東京工業大栄誉教授がノーベル賞(医学・生理学賞)を受賞


 10月に入って今年のノーベル賞(医学・生理学賞)にオートファジー(自食作用)の仕組みを解明した大隅良典・東京工業大栄誉教授が授与されることに決まったという嬉しいニュースが飛び込んできました。



 〔大隅教授とオートファジー研究〕(東工大HPより)


 日本人の受賞は昨年の医学・生理学賞(大村智氏)、物理学賞(梶田隆章氏)に続き3年連続となります。米国籍を含め、日本人受賞者は25人。単独受賞は1949年の湯川秀樹氏(物理学賞)、1987年の利根川進氏(医学・生理学賞)に次いで29年ぶり3人目となります。

 大隅教授は、27年前に酵母のオートファジーを発見して以来、一貫してその分子機構の解明を目指して研究を進めてきており、世界に先駆けた遺伝学の適用による酵母のオートファジー遺伝子(ATG) の同定は、それまでのオートファジー研究を一変し、今日の爆発的な研究領域の展開の切っ掛けとなっています。今回の受賞は、このオートファジー研究が評価されたもので、医学・生理学賞の選考委員は「生命科学の根源的な発見で、がんやパーキンソン病などの病気の治療研究に貢献する」としています。

 近年多くの日本人研究者がノーベル賞を受賞していて、同じ日本人として誇らしい気持ちになりますが、気になる指摘を紹介しておきます。すなわち、一次選考でノーベル委員会が研究者や過去受賞者に呼びかける推薦状の日本からの返信率が他国と比べて非常に低いとのことで、日本人の受賞確率が低くなる要因として、ノーベル委員会委員がこの点に苦言を呈しているそうです。今後もノーベル賞受賞のため、日本全体としての一層の努力が必要なようです。

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2015年10月10日 (土)

10月は明るい話題(ノーベル賞受賞、TPP大筋合意)に国内が沸き立つ


 10月に入り、ノーベル賞、TPP大筋合意など連日の明るいニュースに国内が沸き立っています。
  • 大村智氏、梶田隆章氏の日本人研究者2名がノーベル賞(医学生理学賞、物理学賞)受賞が決まる        
  • 数年間の交渉を経て、環太平洋12カ国による巨大経済圏を目指すTPPが大筋合意
 これまでの猛暑の8月以降の国内外の出来事を振り返ると、以下に示すように穏やかなならざるニュースが相次ぎ、国内中に暗くてギスギスとした雰囲気が漂っていたような気がします。

(8月の出来事;中国、EU等に世界の耳目が集中)
  • 中国のバブル崩壊が世界経済を揺さぶる。
  • EUに内戦が続くシリアなどからの大量の難民が流入
  • 天津海新区の大爆発を始め各地で工場爆発事故が相次ぐ
  • 北京で抗日戦争勝利記念を謳った軍事パレード
(9月の出来事;国内が騒然)
  • 関東・東北豪雨で茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊
  • 与野党対決の中で安全保障関連法案が参議院で成立
 それが、10月の明るい話題で私たちの周りの空気が一新したように感じます。経済面でも、上海株暴落により日経平均株価が一時17000円を割り込みましたが、現在は18000円台まで回復しています。

 このような明るい話題続出という強運の下、第3次安倍内閣が発足し(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障からなる新たな3本の矢を掲げ、少子高齢化の問題に真正面から挑戦するとしています。わが国社会・経済の本格的な再生を希っています。

 さて、10月の天気は本格的な秋晴れが見られるようになりましたので、これから少し時間を見つけてあちこち回ってみたいと思っています。
                  
            〔ススキの穂が広がる小石川植物園 22.10〕
                  
 季節のスケッチの10月セレクション に小石川植物園のこれまでの10月の植物の様子を紹介されています。ご覧ください。


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2014年10月 8日 (水)

日本人研究者3人(赤崎、本間、中村)がノーベル物理学賞を受賞


 今年のノーベル物理学賞受賞者に青色発光ダイオード(LED)を開発した赤崎勇・名城大教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の3人が選ばれました。


(左から赤崎勇、天野浩、中村修二の各氏)


 今回の受賞理由は青色発光ダイオード(LED)の開発ということですが、約20年前に開発されて以来、応用製品が広く行きわたるようになってきて、現在私たちの身の回りで、信号機、LED電球、ブルーレイDiscなどあまりにも日常的に青色発光ダイオードが使われています。

 こんな状況の中でノーベル賞受賞のニュースを目にした時に、ケチをつける気持ちは毛頭無いのですが、何か今さらといった驚いた感じがありました。しかしながら、最近のノーベル賞は研究成果の実用化面が重視されるようになり、どれだけ人類の福祉向上に寄与したがか勘案されると聞き、それならばぴったりの受賞かと思い直しました。

 いずれにしても大変明るいニュースです。私たち技術開発の世界に身を置くものにとっては、特に朗報です。将来ののノーベル賞を目指す多くの若い研究者・技術者たちの大きな励みになります。受賞の3名の先生方、本当におめでとうございます。

 ところで、日本人のノーベル賞受賞者 はこれで22名となりました(内訳は、物理学賞10名、化学賞7名、医学生理学賞2名、文学賞2名、平和賞1名)。経済発展が著しいお隣の中国は文学賞1名のみ、韓国はいまだ受賞者なしという状況です。わが国はダントツに誇らしい技術力を有しており、この力を有効かつ戦略的に活用して今後のわが国の国際競争力強化、国際貢献の展開に繋げていくようにすることが肝要かと思います。

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2012年10月 8日 (月)

快挙!山中伸弥教授、iPS細胞研究でノーベル医学・生理学賞を受賞


 京都大学教授の山中伸弥iPS細胞研究所長が本年のノーベル生理学・医学賞を受賞することが決まりました。生物のあらゆる細胞に成長できるiPS細胞研究が受賞理由になっています。今後、再生医療の手法を用いて難病治療などに大きな福音をもたらすものとして、大いに期待されています。ここ数年はずっとノーベル賞受賞候補者となっていました。本当におめでとうございます。
     

 日本人のノーベル賞受賞者を以下の表にまとめてみました。

  2012年(医学・生理学賞)山中 伸弥 
 2010年(化学賞)根岸 英一、鈴木 章      
 2008年(物理学賞)南部 陽一郎、小林 誠、益川 敏英
      (化学賞)下村 脩        
 2002年(物理学賞)小柴 昌俊 (化学賞)田中 耕一        
 2001年(化学賞)野依 良治        
 2000年(化学賞)白川 英樹        
 1994年(文学賞)大江 健三郎  
 1987年(医学・生理学賞)利根川 進      
 1981年(化学賞)福井 謙一        
 1974年(平和賞)佐藤 栄作    
 1973年(物理学賞)江崎 玲於奈          
 1968年(文学賞)川端 康成
 1965年(物理学賞)朝永 振一郎        
 1949年(物理学賞)湯川 秀樹    

 今回の山中教授で、日本人のノーベル賞受賞者は19人目になります。このうち化学賞、物理学賞、医学・生理学賞の「理系」の受賞者は16人目になるわけで、わが国研究者の水準の高さを示しています。ちなみに、中国や韓国の理系ノーベル賞受賞者は皆無です(文系でも中国のノーベル平和賞1件のみ)。

 言い換えると、わが国は科学技術分野で多大な国際貢献をしているわけです。最近、不本意ながら領土問題に絡めて隣国から不当な圧力を受け、自信を失いがちになりますが、そのようなことはありません。わが国が科学技術研究や経済活動を通じて、人類社会に広く貢献していることは大いに誇示しうることです。自信をもって未来に進んでいきましょう。


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