MEMS・マイクロマシン

2016年12月 2日 (金)

活躍するMEMS(メムス)~身の回りでもSociety5.0でも


 MEMS(メムス)というと聞き慣れない用語かも知れませんが、実はモバイル機器、自動車等の私たちの身の回りの製品の中に数多く組み込まれている必須デバイスです。MEMSとはMicro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略で、半導体製造技術やレーザー加工技術等、各種の微細加工技術を用いて微小な電気要素と機械要素を一つの基板上に組み込んだ米粒や豆粒ほどの大きさのデバイスのことを言います。

 MEMSと半導体デバイス(LSIなど)はどちらも同じような大きさで外見上よく似ていますが、働きが少し違います。すなわち、半導体デバイスは入出力が電気信号で、人間の頭脳のような高速計算や大容量の記憶などの働きに秀れていて、コンピュータの中枢デバイスとなっています。一方、MEMSは入出力が電気信号に限定されず、エネルギーや機械変位、物理量など多岐に亘り、人間の五感器官のようなセンシング(センサ)、筋肉部のような動作(アクチュエータ)などの様々な働きをします。

 (図1)MEMSの概念図


 例えば、モバイル機器のスマホでは高性能化・多機能化を実現するため、モーションセンサ、MEMSマイクロフォン、無線センサ、環境センサなど盛沢山のMEMSがスマホ内の狭小な空間の中にぎっしりと組み込まれていて、MEMSのかたまりのようなものです。また、自動車も同様です。エンジン制御のための圧力センサ、姿勢制御のためのジャイロ、エアバック感知のための加速度センサなど多くのMEMSが使われていますし、今後は自動運転のための各種MEMSセンサが増大していくと予想されます。

 (図2)スマホで使われるMEMS


 さらには、数次のMEMSに係る先端技術開発プロジェクトの研究成果等が基盤技術として蓄積・活用され、スマホ、自動車に限らず多くの製品やシステムへの先進MEMSの応用が広がっています。

 (図3)広がる先進MEMSの応用


一方、政府の第5期科学技術基本計画においてSociety5.0(超スマート社会)の実現に向けた取り組みが提唱されていますが、Society5.0の実現には近年注目を集めるIoT(あらゆるものがインターネットでつながる)システムが欠かせません。このIoTシステムの中でもMEMSが重要な役割を果たしていくことになります。

例えば、工場を対象としたIoTシステムでは、実世界(工場現場)の状況を適確かつ迅速にデータ収集(センシング)し、収集したデータをクラウド上に集め、ビッグデータ技術やAI(人工知能)を用いて設備管理や生産管理に役立つ経営情報に変換する、そして経営情報を実世界(工場管理、経営)にフィードバックする、といった流れになります。この流れの中で実世界とクラウドを結ぶセンシングの局面においてMEMSが主役となります。

 すなわちMEMSを用いた多様な産業用途のセンサ、環境からエネルギーを自力で調達する自立電源、データを無線で飛ばす無線モジュールなどをまとめて搭載した小型センサ端末(これもMEMSのかたまり)が工場の各所に配置され、工場の様々な稼働状況をリアルタイムにモニタリングし、クラウドに収集データを送り出します。

今年度からNEDO委託事業の高効率スマートセンシングシステム(LbSS)の研究開発も始まりました。近い将来Society5.0を支え、元気に活躍するMEMSの姿を見ることができるようになります。乞うご期待。

(図4)Society5.0/IoTシステムで活躍するMEMS


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注)本稿は、JRCMニュース(2016年12月号)への寄稿文に加筆修正を加えたものです。

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2009年2月20日 (金)

細胞操作を自在に実験できる魔法のデバイス

 先日、「細胞機能解析を目的としたMEMSデバイス」というテーマで、早稲田大学の庄子習一教授のお話を聴く機会があった。同教授は、特定の細胞の機能解析を目的して、細胞培養、細胞破砕、生体分子分離・分析を実現するMEMS応用デバイス(いわゆるマイクロTAS)研究の第1人者である。

 マイクロTASは、より少ない試料で、より高速で正確な計測・分析ができるようなMEMSデバイスの一種で、重金属の湿式分析(実際に化学反応を起こさせて行う分析法)が50秒程度でできる環境分析システム、大腸がんの診断が30分程度でできるイムノアッセイ(免疫測定)システムなども含まれます。
 マイクロTASデバイスの概念図
 
 庄子教授によれば、細胞の大きさはナノではなくマイクロオーダーなので、細胞操作はマイクロTASに非常に馴染みやすいとのこと。かつてはシャーレとか試験管を使って行われていた実験が、これからはマイクロTASという魔法のデバイスが実験室に早変わりして、微量の試料でも迅速かつ適確に細胞操作が可能となります。病気診断、新薬開発などの医療面での応用が大いに期待されます。

 ようやく医療の現場でも、マイクロTASの有用性が認識されるようになったとのこと。健康社会実現を目指して、デバイス研究とのコラボが進んで欲しいと思います。

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2009年1月 4日 (日)

温故知新:マイクロマシン技術プロジェクトのアーカイブ

 この正月休みを利用して、かつての「マイクロマシン技術研究開発プロジェクト」に関する資料をとりまとめ、プロジェクトの記録(MMPJアーカイブ)のWebコンテンツを作成しました。

 本プロジェクトは、1991年から10年間、約250億円の予算規模を投入して実施されました。そもそもマイクロマシンとは、数μm - 数mm寸法の部品により構成された微小な機械のことで、このコンセプトは我が国が生み出したものです。本プロジェクトでは、将来いろいろな形でマイクロマシンが実用化されることを期待して、マイクロマシン実現に資する技術的なプラットフォームづくりを目指して、マイクロマシンについての共通基盤技術、機能デバイスの高度化技術、システム化技術を確立するための研究開発が行われました。

 [マイクロマシンプロジェクトの樹木マップ]
   

 ここで培われた技術成果は企業の技術力を高め、関連産業の発展に大いに貢献しました。年々のマイクロマシン・MEMS展も出展者・来場者ともに大いに賑わっています。数年前のNEDOアウトカム調査においても、本プロジェクトは大きな産業・経済効果があったとして高い評価を受けました。

 温故知新ということで、今回作成したマイクロマシン技術プロジェクトのアーカイブ が多方面で利用されることを願っています。

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2008年8月 4日 (月)

本物になってきたMEMS産業発展

 
 先週東京ビッグサイトにてマイクロマシン/MEMS展を開催しました。主催者として来場者の入り具合が大いに気になるところです。特に、猛暑の中で来場者の減少を心配していたのですが、連日多数の方の来場を得て、結果的には3日間で過去最高の1万4千人超の来場者になりホッとしています。

大勢の来場者で賑わう会場

 MEMSは今や自動車、携帯電話、情報機器、ゲーム機などいろんな製品に活用されるようになりました。今回の展示会では、MEMSの製造装置、ファンドリー・加工サービス、計測機器、設計ソフトウェアなどの幅広い分野の企業が出展し、半導体系企業の展示も見られるようになりました。さらには未来MEMS技術の展示も相まって、すっかりビジネスショーらしくなってきました。
 
 いよいよMEMS産業の発展が本物になってきた感が強くあります。(ケイマK 記)イラスト:MEMSデバイス

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