5月上旬の都心の風景、初めてユリノキの大樹に花を見つける
大型連休後の晴れ上がった週末、しばらくぶりに小石川植物園を訪れてきました。サクラ、ツツジと続いた華やかな時節が過ぎ、園内は美しい万緑が広がり、いろんな花々が落ち着いた雰囲気の中に咲いていました。この日の一番の収穫は、ユリノキの花を初めて見つけたことでした。
以下、5月上旬の園内の風景を紹介します。

日本庭園の周りの風景です。カルミアの花が旧東京医学校の赤い建物の前に咲いていました。キリシマツツジ、ヤマツツジなどの普通のツツジの花々は咲き終わり、今は北米・キューバ原産のカルミア(ツツジ科カルミア属)が花盛りで、あちこちで見かけます。カルミアは、コンペイトウのような小さな花が塊集して咲いています。

園内の林間地のユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)の大樹がそびえていて、この時季は美しい緑衣をまとっています。このユリノキは明治の初めの頃に米国からもらい受けた種子を育てたものです。明治23年、大正天皇が皇太子のときに来園した時に、この木を見てユリノキと命名したといわれています。

この木を見上げてみると、何とユリノキの花が咲いていました。嬉しさがこみ上げてきました。長年植物園に通っていますが、ユリノキの花を見たのは初めてです。あまりの巨木で、かなりの高所に咲いているので今まで気がつかずに通り過ぎていたと思います。花の形は、百合の花というよりもチューリップに似ています。ユリノキが冬木立になると、花の残滓が目立つようになります。

ユリノキの近縁で、園内の別の場所に植えられているシナユリノキの高木にも、やはり花が咲いていました。「ユリノキの花の発見」はこの日一番の収穫でした。

ヤマボウシ(山法師;ミズキ科ミズキ属)の樹上に白い花が咲いていました。ヤマボウシはハナミズキとよく似ていますが、ヤマボウシが少し野性的な感じです。

新緑のイロハモミジの枝中をよく見ると、花が終わり、薄紅色のプロペラ型をした翼果(果皮の一部が平らな翼状に発達した果実)が付いていました。

ハグマノキ(白熊の木;ウルシ科ハグマノキ属)。林の中でうす紅く煙っているように、霞がかかっているように見えていました。この「紅煙」の正体は、結実しない花柄が糸状に伸びて、綿菓子のように枝先を被っているものです。
この時期、○○ウツギといったように、「ウツギ」の名前を有する木々の花々が盛んに咲いています(植物の分類の整理は → ブログ記事)。
この日園内では次のような○○ウツギの花を見つけました。

これはシロバナヤエウツギ(白花八重空木;ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木)です。わが国原産のウツギの変種で、山野に自生し、高さは2メートルほどになります。盛んにアブが蜜を吸っていました。

タニウツギ(谷空木;スイカズラ科タニウツギ属)。ピンクの花が密生して咲いていました。タニウツギは山野に自生する落葉低木で、特に谷間に多く生息します。

アマギベニウツギ(天城紅空木; スイカズラ科タニウツギ属)。 ハコネウツギと ニシキウツギの交雑種で、伊豆半島だけに生育します。 タニウツギとは同属でよく似ています。

ニシキウツギ(二色空木)。これもスイカズラ科タニウツギ属の落葉低木です。和名は、花の色が初めの淡黄白色から紅色に変わることに由来。 丹沢や箱根の山地全域に広く分布しています。

コゴメウツギ(小米空木;バラ科コゴメウツギ属)。名前のとおり小さな白い花で、花の形がウツギに似ています。カナウツギが同じコゴメウツギ属の仲間。

ドクウツギ(毒空木;ドクウツギ科ドクウツギ属)。名前から想像できるように有毒で、アルカロイドの痙攣毒を有します。トリカブト、ドクゼリと並んで日本三大有毒植物に挙げられているほど毒性が強い。
これ以外にも、いろんな花々が咲いていました。

これはナツロウバイ(夏蝋梅;ロウバイ科ナツロウバイ属)。初夏に咲く蝋梅の花ということですが、新春に咲くロウバイやソシンロウバイの花とはあまり似ているとは思えません。ナツロウバイの原産地は中国の浙江省で、山岳地帯に生育します。

氷河期の生き残りといわれるハナヒョウタンボク(花瓢箪木;スイカズラ科スイカズラ属)が花を付けていました。秋に透き通ったような二つが繋がった赤い珠玉の実を付けます。

ギョリュウバイ(檉柳梅;フトモモ科ネズモドキ属)。ニュージーランド原産の落葉低木です。小さなピンク色の花を付けています。

ハクチョウゲ(白丁花;アカネ科ハクチョウゲ属)。東南アジア原産の常緑低木で、丁字型の白い花を付けていました。強い刈り込みにも耐えるので生垣によく用いられます。

東日本の山野に生える落葉低木モミジイチゴ(紅葉苺;バラ科キイチゴ属)。3月には白い花を付けていましたが、この日は赤い実を付けていました。モミジイチゴはいわゆる野イチゴの一種で、葉の形がモミジに似ています。

草むらにヘビイチゴ(蛇苺;バラ科キジムシロ属の多年草)の赤い実が点々と見つかりました。春先には黄色の花が咲かせていました。ヘビイチゴの和名は、実が食用にならずヘビが食べるイチゴということが由来。
これ以外にもいろんな写真があります。
…> 季節のスケッチ(27年5月)
| 固定リンク
「季節・風景・植物」カテゴリの記事
- 国営ひたち海浜公園に広がる青の絶景(2025.05.01)
- 秋の彼岸の頃、小石川植物園にもようやく秋の気配(2024.09.23)
- 小石川植物園の平成最後の残紅葉(2018.12.18)
- 4月下旬の青森小旅行(弘前公園、岩木山麓、奥入瀬渓流)(2018.04.27)
- ソメイヨシノの終演とともに新緑の芽吹きが始まる(2015.04.04)
「小石川植物園」カテゴリの記事
- 秋の彼岸の頃、小石川植物園にもようやく秋の気配(2024.09.23)
- 小石川植物園の平成最後の残紅葉(2018.12.18)
- ソメイヨシノの終演とともに新緑の芽吹きが始まる(2015.04.04)
- 植物園に泰山木、花菖蒲などの花々が咲き始めました(2014.06.03)
- 梅雨入り直前の小石川植物園、ハナショウブが見頃(2025.06.06)
コメント