季節・風景・植物

2025年6月 6日 (金)

梅雨入り直前の小石川植物園、ハナショウブが見頃


 6月に入り暑い日が続いていますが、そろそろ梅雨入りです。小石川植物園では日本庭園の一角にある菖蒲田のハナショウブ(花菖蒲)が見頃になっていました。また、梅雨空に似合うとされるアジサイ(紫陽花)の花や高木の上方にタイサンボク(泰山木)の特大の花などが咲き出しています。


 ちょうど満開になった菖蒲田のハナショウブ(花菖蒲;アヤメ科アヤメ属)です。江戸系を中心とする約70種類の花菖蒲が植栽されています。普段は静かな雰囲気ですが、この時期だけは華やかな景観に多くの人が見入っています。


 花菖蒲の系統研究は小石川植物園を中心として進められてきました。花菖蒲には地域ごとに独自の発展を遂げてきた3つの系統(江戸系、伊勢系、肥後系)があります。現在、園内の温室前の所で古典的な花菖蒲が展示中です。


 江戸系の「五湖の遊」。江戸系は江戸時代に変異個体を元に改良されてきた品種群で、群生美を鑑賞します。


 伊勢系の「朝日空」。伊勢系は伊勢松阪地方で発達した品種群で、垂れ咲きの三英花とか花弁の縮緬地が特徴。


 梅雨空にはアジサイ(紫陽花;アジサイ科アジサイ属)がよく似合うとされています。この時期、園内各所ではいろいろなアジサイの花が咲いていますが、多くはわが国固有種のガクアジサイです。


 ガクアジサイ(額紫陽花;アジサイ科アジサイ属)は日本固有種で房総半島、伊豆半島、三浦半島などの海岸地に自生します。花序を見ると、中心部の多数の両性花の周りに装飾花が額縁のように縁取っています。


 北米原産の常緑高木タイサンボク(泰山木;モクレン科モクレン属)。大木の樹上に威風堂々の白い大きな花が上向きに咲き並んでいます。木の下からはよく見えませんが、花の中心部に黄色の雄しべが密生します。高所に神々しく咲くタイサンボクの花は神々しい風格を感じさせます。


 この季節、いろんな草本の花々も見かけます。熱帯アメリカ原産の一年草シロアザミゲシ(白薊芥子;ケシ科アザミゲシ属)。透き通ったような白い色で妖美な感じがします。茎や葉にアザミのような鋭いトゲがあって、間違って触るとピリッとした痛みを感じます。


 ドクダミ(毒溜、十薬;ドクダミ科ドクダミ属)が草むらに群生しています。ドクダミは道ばたや草むらの半日陰地に分布する多年草。葉茎に独特の強い匂いがあるが、様々な薬効があり、腫れ物、皮膚病などに利用されます。また、北米東部に分布する多年草のオオムラサキツユクサ(大紫露草;ツユクサ科ムラサキツユクサ属)もポツポツと交じっています。


 近所の白山神社を回ってきました。神社へは石段を上って境内に入ります。あじさい祭りが開催される直前でしたので、まだ静かでした。この白山神社は、江戸時代に小石川植物園内にありましたが、5代将軍綱吉の屋敷造営のため、現在地に移ったとのこと。白山神社はこの縁で、綱吉と生母桂昌院の厚い帰依を受けたと言われています。


 この時期、白山神社の境内から隣接する白山公園にかけて、約3,000株のアジサイが咲き誇ります。ガクアジサイホンアジサイカシワバアジサイなど多様な紫陽花を楽しむことができます。ユリの花も交じっています。


 境内に中国革命の父といわれる孫文の座石の碑が建っています。かつて孫文はこの石に腰掛けながら、たまたま夜空に流星を見て、祖国の革命を心に誓ったとされています。

  詳しくは
  → 季節のスケッチ(2025年6月) Archive

| | コメント (0)

2025年5月 4日 (日)

GW後半の小石川植物園、初夏の花々と緑の世界



 GW後半のみどりの日、小石川植物園を訪れたところ、この日は植物園の日ということで入園料無料となっていて、大勢の人で賑わっていました。園内は新緑から万緑へと移りつつある緑の世界の中で、落ちついた感じのいろんな初夏の花々を見かけました。


 スズカケノキユリノキケヤキなどの巨木が数多く立ち並ぶ巨木並木の初夏の風景です。つい先日までの新緑が日に日に色濃くなってきました。散策の人たちが樹下のベンチでゆったりと寛いでいます。


 巨木並木の一角に生えるユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)の大樹に花が咲いていました。チューリップに似た形をしたクリーム色の可愛らしい花でオレンジ色の横縞が入っています。


 ユリノキ以外にも、園内では初夏のいろんな花々が咲いていました。これは北海道から九州にかけての山野に自生する落葉低木ノイバラ(野茨;バラ科バラ属)が盛んに咲いていました。ノイバラはいわゆるトゲが多い野バラのことで、我が国のバラの代表的な原種。


 サクラバラ(桜薔薇、カイドウバラ、サクライバラ;バラ科バラ属)。コウシンバラとノイバラとの自然交雑種で日本に自生する落葉低木。サクラの花に似た薄紅色の大きめの花から甘い香りが漂ってきます。原種バラの一つ。


 関東以西と九州南部に分布する常緑低木サツキ(皐月;ツツジ科ツツジ属ツツジ亜属ヤマツツジ節サツキ列)。本来は渓流沿いの岩の上に生育する渓流植物。古典園芸植物の一つで盆栽などにも多く使われる。


 ミヤマキリシマ(深山霧島;ツツジ亜属ヤマツツジ節ヤマツツジ列)。霧島山・えびの高原をはじめ、九州各地の高山に自生する半落葉低木のツツジ。5月下旬~6月中旬に開花し、満開時には山の斜面いっぱいに埋め尽くすように咲き広がります。


 ヒッコリー(オーバータヒッコリー;クルミ科ペカン属)。北米に広く分布する落葉広葉樹。雌雄異花で小さな雌花は枝先に数個つき、雄花は枝先の葉腋から穂状に垂れ下ります。


 カマヤマショウブ(蒲山菖蒲;アヤメ科アヤメ属)。朝鮮半島、中国東北部が原産の多年草。濃い紫色の花で外側の大きい花びら(外花被)の中央に網目模様があります。韓国の釜山から和名が由来。


 多年草ムラサキカタバミ(紫傍食;カタバミ科カタバミ属)。園内の草むらに静かに咲いています。南米原産で観賞用として渡来。今では庭、畑、空き地など至るところに広く分布しています。


 詳しくは
  → 季節のスケッチ(2025年5月) Archive

| | コメント (0)

2025年5月 1日 (木)

初夏の新宿御苑、ユリノキやハクウンボクの大樹が満開



 やはりGW前半(4/30)に都内の新宿駅や千駄ヶ谷駅に隣接して展開する国民公園の新宿御苑を訪れてきました。この日は青空が広がり、苑内の樹木たちの生き生きとした初夏の営みを楽しむことができました。


 新宿御苑の入口は新宿門、千駄ヶ谷門、大木戸門の3ヶ所。車で来たときは大木戸門が便利。新宿御苑は明治39年に皇室の庭園となりましたが、戦後の昭和24年に国民公園として一般に公開されました。苑内には風景式庭園、整形式庭園、日本庭園の異なる3つの庭園が巧みに配置されています。


 ユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属)のチューリップに似た花を見つけました。北米中部原産の落葉高木で初夏の頃にクリーム色の花が咲き出します。樹木の緑と色合いが似ているため、うっかりすると見過ごしてしまいます。


 このユリノキ(百合の木)は温室近くの散策路脇に生えている大樹です。木枝をよく見てみると、なんと満開になった花が樹木全体を覆っているかのようで、圧巻の景観です。これまでユリノキの花は何度も見たことがありますが、これほど多くの花が一斉に咲き出している場面は初めてで、感動しました。


 ハクウンボク(白雲木;エゴノキ科エゴノキ属)の樹木も白い花が満開になっていました。北海道から九州に分布し、山地の落葉樹林に生育する落葉小高木。遠方からみると白雲が覆っているかのようです。


 初夏のこの時期、ハクウンボク(白雲木)は枝先に垂れ下がった総状花序に白い花を20個ほど下向きに付けます。エゴノキと似ていて葉が丸いのが特徴。庭木や公園木として用いられます。


 北海道から九州までの各地に広く分布する落葉高木のミズキ(水木;ミズキ科ミズキ属)も花が満開になっていました。春の新緑の後、初夏の新しい枝先に白い細かい花が盛んに咲き出し、高木が粉雪に覆われているかのように見えます。


 千駄ヶ谷門の近くに、見頃になった3種類のトチノキが隣接して生えています。これは日本原産のトチノキ(栃の木;ムクロジ科トチノキ属)です。総状のクリーム色がかった花がたくさん咲いています。葉がやや下向きにつく。


 次はマロニエという別名のほうが有名なセイヨウトチノキ(西洋栃の木;ムクロジ科トチノキ属)です。緑葉が茂る枝先にトチノキによく似た大きい円錐状の白い花序が多数直立します。葉は多くの小葉をつけ、小葉の形はトチノキと比べてややふっくらとした感じで先端がツンと尖っています。


 最後はベニバナトチノキ(紅花栃;ムクロジ科トチノキ属)。紅色の花が遠くからでもよく目立ちます。北米原産のアカバナトチノキと欧州原産のセイヨウトチノキ(マロニエ)との交配種の落葉高木。わが国では街路樹や庭園木などに用いられる。


 詳しくは
  → 季節のスケッチ(2025年5月) Archive

| | コメント (0)

国営ひたち海浜公園に広がる青の絶景



 今年のGWの前半(4/28)に国営ひたち海浜公園に出かけてきました。毎年この時期になると必ずTVで放映されるネモフィラの青の絶景はあまりに有名で、そのうちにと思っていたのですが、今回ようやく実現しました。自宅からのドライブであれば2時間程度で到着する距離ですが、年齢のことを考え、今回はバス旅にしました。自分で運転せずに往復時は座席で寝ているだけといった楽々旅でした。たまにはいいものですね。


 国営ひたち海浜公園は、茨城県ひたちなか市の太平洋岸にあり、春のネモフィラ、秋にはコキアが広大なみはらしの丘に一面咲き広がります。公園入口から見晴らしの丘までは徒歩で15分程かかるので、小さなトレインバスで移動できるようにもなっています。


 ネモフィラが広がる青い絨毯の中を、みはらしの丘の頂上をめざして大勢の観光客が大行列です。外国からのインバウンドの人々も数多く見受けました。


 みはらしの丘のふもとには、黄色の菜の花畑が広がっていました。青と黄のコラボの風景です。


 咲き広がる可憐なネモフィラ(瑠璃唐草;ムラサキ科ネモフィラ属)の花。北アメリカ原産の一年草。澄んだ青色が初夏の季節にマッチします。分岐しながら匍匐して成長し、横に広がる性質から公園などでも利用され、この時期各地でネモフィラの花畑が見られます。


 詳しくは
 → 季節のスケッチ(2025年5月) Archive

| | コメント (0)

2025年4月 4日 (金)

サクラ満開の中、新緑の世界が広がる



 3月下旬に満開となったソメイヨシノですが、その後寒い日が続いたせいで満開の状態が続いています。朝方わが家のテラスから小石川植物園サクラ並木が一望できますが、手前のイロハモミジの新緑も鮮やかになってきました。この日はこのアト植物園を訪れ、園内の桜と新緑を楽しんできました。

(樹木の花)

 ソメイヨシノ(染井吉野;バラ科サクラ属エドヒガン群)のサクラ並木。寒い日が続いて、満開の桜が長持ちしています。


 浪速桜(なにわざくら)@ソメイヨシノ。伊豆大島の実生から作出されたソメイヨシノの品種。サクラ並木のすぐ近くに生えています。


 温室、冷温室ではツバキ属の花がいくつか見つけました。これはサキシマツツジ(先島躑躅;ツツジ亜属モチツツジ節モチツツジ列)。石垣島、西表島に分布する固有種。山地の渓流沿いなどに自生する。


 中国雲南省西部・北西部原産の常緑低木で高山に自生するマツゲガクツツジ(睫毛萼杜鵑;ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属)。広い漏斗状~鐘形の白くふんわりとした大きな花が咲いていました。若葉の葉縁が睫毛状の剛毛で覆われていることから和名が由来。


 日本固有種の落葉低木コブシモドキ(辛夷擬、這辛夷;モクレン科モクレン属シモクレン節)。コブシの品種とされるコブシモドキは形状がコブシに似る。4月頃、葉の展開に先立って大きめの白い花を咲かせます。コブシが2倍体であるのに対し、コブシモドキは3倍体で結実しない。

(新緑の広がり)

 新緑がまぶしいイロハモミジの小径。サクラ並木に並行して温室側にイロハモミジが立ち並ぶ小径です。この並木がアーチ状に連なっていてモミジのトンネルのようになっています。


 東アジアに自生し、わが国では本州以南に分布する落葉高木イロハモミジ(ムクロジ科カエデ属)。4月~5月、新緑に覆われた木枝をよく見ると、暗紫色の小さな花が咲いています


北米中部原産の落葉高木のユリノキ(百合の木;モクレン科ユリノキ属。春に新緑が芽吹き、その後初夏になって、大樹のかなりの高所の枝中に形がチューリップに似たクリーム色の花が咲き出す。大樹の姿形が美しく、全国に街路樹や公園樹として利用される。


 ヒメグルミ(姫胡桃;クルミ科クルミ属)。わが国の山地に自生し、川沿いによく生える落葉高木。オニグルミの変種で本州中部以北でよく植栽されている。新葉の展開が始まりました。


 シダレカツラ(枝垂桂;カツラ科カツラ属)。カツラの変種で多数の細い枝が枝垂れています。数百年前に岩手県の早池峰山山麓で発見され、その後各地に広まったとのこと。春の新緑が美しい。

 詳しくは
 → 季節のスケッチ(2025年4月) Archive

| | コメント (0)

2025年4月 2日 (水)

3月末、サクラの花が満開の小石川植物園



 東京のサクラの花は3月下旬に満開宣言が出ましたが、ちょうど末日(3/31)に小石川植物園では恒例の花見の特別招待会が開かれました。あいにくの寒い日でしたが、多くの招待客が集まり、川北小石川植物園長や種子田日光分園長から植物の面白い話を教えていただきながら、サクラが満開になった園内で花見を楽しんでいました。以下、この3月末の小石川植物園の様子を紹介します。


 植物園入口から真っ直ぐ坂道を上り左に曲がると満開になったソメイヨシノ(染井吉野;バラ科サクラ属エドヒガン群)のサクラ並木が広がっています。ここが特別招待会の集合場所になっていました。ソメイヨシノはオオシマザクラエドヒガンとの交雑種。江戸時代の染井村(現在の豊島区駒込付近)の植木屋さんが作り出したもの。


 園内ではソメイヨシノの他にもいろんなサクラが楽しめます。サクラ並木のすぐ近くに生えているベニシダレ(紅枝垂れ;バラ科サクラ属エドヒガン群)も見頃になっていました。確か10数年前に植えられたと記憶しています。


 伊豆大島などに多く自生するオオシマザクラ(大島桜;バラ科サクラ属ヤマザクラ群)。基本野生種のサクラの一つ。春に緑色の若葉と同時に白色の花を多数つけます。また、この時期の和菓子の桜餅にはオオシマザクラの若葉を塩漬けにしたものを使用します。


 ヤマザクラ(山桜;バラ科サクラ属ヤマザクラ群)。日本のサクラの基本野生種の一つで和歌にも数多く詠まれている。サクラの仲間では長寿で大木も多い。開花のときは、花が先行するソメイヨシノと異なり、ヤマザクラは葉と花が同時に展開します。


 サクラ以外にも多くの木々の花を見かけました。これは日本庭園近くのハナズオウ(花蘇芳;マメ科ジャケツイバラ亜科ハナズオウ属)。小径を挟んで白いサクラの花と赤紫色のハナズオウの花がコラボする美しい構図です。


 コブシ(辛夷;モクレン科モクレン属 )も見頃になっています。北海道から九州まで広く分布する落葉高木。早春に白い花が咲き出し、春の訪れを謳歌するかのように大空の中で花が乱舞します。花はひらひらの白い6枚の花弁をもつ。開花の後、新緑が芽吹きます。


 本州の関東地方南部、東海地方、伊豆諸島に分布し、八丈島などの伊豆七島の山中に多く自生する落葉低木ハチジョウキブシ(八丈木五倍子)。木枝から花茎が垂れ下がり、一面に黄緑色の小さな花が房状になって咲いています。日本固有種のキブシ(木五倍子)の変種。


 春の野の花も盛んに咲き出してきています。これはツクシスミレ(筑紫菫;スミレ科スミレ属)。花の中央部が黄色で周りがうす紫色の珍しい色調の花です。元々九州地方に分布するスミレですが、園の研究用のものが野生化したようです。花が非常に小さく、うっかり見過ごしてしまいそうです。


 ヤブニンジン(藪人参;セリ科ヤブニンジン属)。北海道~九州に分布し、山野の日陰になる草むら、藪地などに生育する多年草。直立する茎は白いせん毛に覆われる。茎先に複散形の花序を形成し、ごく小さな白い5弁花を何個かつける。葉はニンジン葉に似る。


 詳しくは
 → 季節のスケッチ(2025年4月) Archive

| | コメント (0)

2025年3月18日 (火)

中国地方の小旅行(倉敷、足立美術館、出雲大社、宮島)



 3月中旬、久しぶりに夫婦旅行に出かけてきました。羽田空港から岡山空港に飛び、倉敷の大原美術館、島根の足立美術館、出雲大社、安芸の宮島の厳島神社をバスで周遊。中国山地を越えて山陽地方と山陰地方の間を往復縦断する大移動となりました。そのアト岡山空港から羽田空港へ戻る2泊3日の旅でした。天気は、低気圧のせいであいにくの雨模様でしたが、宮島の厳島神社の時だけは雨が上がりホッとしました(上の写真は厳島神社の大鳥居)


 倉敷の大原美術館は、1930年に大原孫三郎(倉敷紡績などの経営する地元出身の実業家)によって創立。美術館の正面入口はギリシャ神殿の ような外観で、
創立当時の姿をとど めています。美術館ではクロード・モネやアンリ・マテイスなどの作品をはじめとして多数の西洋の近代美術品を収集し、公開しています。


 美術館を含む区域は倉敷美観地区と呼ばれ、観光客が自由に周遊・散策できるエリアになっています。エリア内の倉敷川両岸には、旧大原家住宅、料理旅館、民芸館などが立ち並んでいます。


 地元出身の実業家足立全康によって島根の安来市に、1970年に建てられた足立美術館。広大な庭園を風景絵画に見立て、館内の日本画と相まって来館者の心を静かに癒してくれます。米国の専門誌による日本庭園ランキングでは、初回の2003年から連続して日本一に選出されています。


「庭園もまた一幅の絵画である」との考えに基づき、50,000坪の日本庭園の枯山水庭、苔庭、池庭、白砂青松庭を風景絵画に見立て、四季折々に楽しむことができるようになっています。また館内には、横山大観をはじめ、竹内栖鳳、川合玉堂、上村松園、
橋本関雪、榊原紫峰など、近代日本画壇の巨匠たちの日本画作品を 中心に、総数約2,000点が所蔵され、適宜特別展示が行われています。
 → 風景絵画
(絵葉書セットより
) 


 出雲大社は島根県出雲市にある神社。因幡の白うさぎの昔話で知られる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を祭神としています。今では縁結びの神社として有名で、一大観光スポットになっています。


 特大のしめ縄を張ったこの建物は拝殿です。よくメディアなどに露出していますので、本殿と間違える人が多いそうです。本殿はこの拝殿の後方にあります。
 → 出雲大社境内図


 東日本の参道には杉並木が多いが、西日本では松の並木が目立ちます。これは出雲大社境内から神門通りへと続くクロマツの松の参道。2列の並木の両脇と中央部に3本の小径を歩行できるようになっていますが、中央の小径は松の根の部分を保護するため通行禁止になっています。松並木の散策も心地良いものです。


 厳島神社が建つ安芸の宮島へは本土からフェリーで渡ります。所要時間は約20分。宮島に近づくと朱色の大鳥居がうっすらと見えてきます。後方の厳島神社と前面の海および背後の瀰山原始林が1996年12月に世界文化遺産に登録されています。


 厳島神社の拝殿。奥が本殿になる。1168年頃、平清盛が現在と同程度の大規模な社殿を造営し、平家一門の隆盛とともに厳島神社も栄えて平家の氏神となった。平家滅亡後も源氏をはじめとして時の権力者の崇敬を受けてきました。
 → 厳島神社の案内図


 神社付近の海岸にはやはり松並木が植えられています。これらの松も多くはクロマツとのこと。また、山中には紅葉の名所もあって、お土産物として紅葉まんじゅうが有名。近くの商店街では製造直売しています。


 詳しくは
 → 季節のスケッチ 中国地方(2025年3月) Archive

| | コメント (0)

2025年3月14日 (金)

3月中旬の小石川植物園、サクラやツツジ、春の野の花で賑やかに



 啓蟄が過ぎた3月中旬の小石川植物園。サクラやツツジなどの樹木の花などで少しづつ賑やかになってきました。また、今年も期間限定開放のロックガーデンを歩いてみると、アマナ、セリバオウレンなどの春の野の花もボチボチ地表に顔をのぞかせていました。

(樹木の花)

 ツツジ園や精子発見の銀杏の木近くの芝生の中に生えるオカメザクラ(阿亀桜;バラ科サクラ属カンヒザクラ群)。早々とあざやかなピンク色の小さな花を一斉に低木全体に下向きに咲かせ、華やいだ雰囲気を醸し出しています。


 伊豆大島などに多く自生するオオシマザクラ(大島桜;バラ科サクラ属ヤマザクラ群)。基本野生種のサクラの一つ。オカメザクラに隣接して生えています。春に緑色の若葉と同時に白色の花を多数つけます。


 ツツジ園でいち早く咲き出したハヤトミツバツツジ(隼人三葉躑躅;ツツジ科ツツジ属)。鹿児島県原産で低山地の岩場に多く見られる落葉低木。2月下旬から3月に葉のない枝先に淡い赤紫色の花が元気に咲き出します。別名はイワツツジ(岩躑躅)。


 温室の中ではセンカクツツジ(尖閣躑躅;ツツジ亜属ツツジ節サツキ列)が咲いていました。センカクツツジはその名の通りわが国の尖閣諸島魚釣島の固有種で山頂付近の岩地に生育します。ただ、同島に生息するヤギの食害により絶滅が危惧されているとのこと(絶滅危惧IA類)。


 わが国のツバキの原種であり、単にツバキともいうヤブツバキ(藪椿;ツバキ科ツバキ属)がまだ園内各所で咲き続けています。本州、四国、九州、南西諸島に分布・自生する常緑高木。様々な園芸品種「カメリア・ジャポニカ」を作出してきています。

(春の野の花)

 2月中頃にひっそりと咲き出していたユキワリイチゲ(雪割一華;キンポウゲ科イチリンソウ属)。今日は多くの花を見かけました。本州中部以西の暖かい地域の林内に生える多年草でスプリング・エフェメラル(春の妖精)の仲間。


 南米原産の多年草ハナニラ(花韮、西洋甘菜;ヒガンバナ科ハナニラ属)の清楚な白い花が咲き出しました。これから植物園内の各所に咲き広がります。花の形はアマナに似ることから、セイヨウアマナ(西洋甘菜)とも呼ばれます。


 本州東北地方南部以南、四国、九州、奄美大島に分布する多年草のアマナ(甘菜;ユリ科アマナ属)。まるで小さなチューリップのように可憐に咲いていました。スプリング・エフェメラル(春の妖精)の一つ。


 常緑多年草のセリバオウレン(芹葉黄蓮;キンポウゲ科オウレン属)が盛んに咲き出していました。日本固有種で本州、四国に分布し、山地の樹下に自生する山野草。根茎は乾燥して生薬(黄連)に用いられる。また小葉がセリ(芹)の葉に似ることから和名が由来。


  詳しくは
  → 季節のスケッチ(2025年3月) Archive

| | コメント (0)

2025年2月 7日 (金)

2月上旬の青空下、寒桜や梅の花が咲き出す


 晴れ上がった2月上旬、小石川植物園の散策を楽しんできました。梅園では、紅梅・白梅の花が少しずつ咲き出してきました。梅の花以外にも古井戸近くのカンザクラ、ツバキ園のツバキ等の木々の花も見かけました。また、大樹の冬木立が見事に青空に映えていました。

(寒桜、梅の花など)

 園内の古井戸(小石川養生所の井戸)の近くに生えるカンザクラ(寒桜)。オオシマザクラカンヒザクラの自然交配種でカンヒザクラ系の品種。早春の頃に咲くのであまり人が集まりませんが、濃い目のしっかりとした花を咲かせ、青空によく映える。バラ科サクラ属カンヒザクラ群。


 梅園では色んな品種のウメ(梅;バラ科スモモ属スモモ亜属)の花が、1月から3月にかけて次々に咲き出してきます(→ 梅百科)。この白梅の品種名は長寿(ちょうじゅ)。野梅系八重。白い小さめの花が元気に咲きます。長い寿命で知られる。


 今年は新年から寒い日が多かったせいか、ウメ(梅)の花の咲き具合はやや遅め感じがします。この桃色の梅の品種名は扇流し(おうぎながし)。野梅系一重。扇流しとは、美しい扇を川に流して興じる遊びのこと。室町時代に始まる。


 この紅梅の品種名は緋梅(ひばい)。緋梅系。緋梅系の梅の代表品種。小輪の濃紅色の花をつける。


 中国、ベトナム原産のツバキのトンキンユチャ(中国名:越南油茶)。カメリア・ドルピヘラともいう。常緑低木。園内のツバキ園にて白い花が盛んに咲き出しています。種子から油が採れ、化粧品などに用いられる。ツバキ科ツバキ属ツバキ亜属サザンカ節。

(大樹の冬木立など)

 イチョウ&ニレの大樹の風景です。古井戸(小石川養生所の井戸)近くのツツジ園から精子発見の大イチョウウルムス・プロセア(ニレ科)などの冬木立の雄姿が青空に映えています。


 オーストラリア原産の常緑樹ユーカリ(フトモモ科ユーカリ属)の大木。植物園入口から坂道を登り切った所に生えています。葉から取れる精油は殺菌作用や抗炎症作用、鎮痛・鎮静作用があるとされ、医薬品やアロマテラピーなどに用いられる。


 詳しくは
  → 季節のスケッチ(2025年2月) Archive

 

| | コメント (0)

2024年12月 6日 (金)

年末の急速な冷え込み、木々の紅葉が本格化



 12月に入り各地から大雪のニュースが流れるようになりました。東京の平地でも、年末の急速な冷え込みで周りの木々の紅葉も本格化してきました。11月末から12月上旬にかけて小石川植物園を回ってきましたが、イチョウ、イロハモミジ、メグスリノキなど大樹たちが思い思いに赤や黄に衣替えを楽しんでいるようです。


 植物園入口から真っ直ぐ坂道を上り左に曲がったところに、春の満開時には大勢の人出で賑わうソメイヨシノサクラ並木が立ち並んでいます。この時期はかなり落葉が進み、褐色の黄葉がポツポツと残っている景観になりました。


 裸子植物のイチョウ(銀杏;イチョウ科イチョウ属)の黄葉が進んでいます。このイチョウは精子発見の大イチョウの木です。1894年に植物学者の平瀬作五郎が精子を発見したことで有名。日本人による植物学への輝かしい貢献になりました。


 メグスリノキ(目薬の木;ムクロジ科カエデ属 )。日本固有種で東北地方中部以南に自生する落葉高木。晩秋の真赤に燃えるような紅葉は実に見事です。昔から樹皮を煎じて眼病に効く目薬として使用していたことから和名が由来。


 カジカエデ(梶楓;ムクロジ科カエデ属)の鮮やかな黄葉。日本固有種で本州の宮城県以南、四国および九州の山地に分布する落葉高木。掌のように大きい木の葉を付け、オニモミジとも呼ばれる。


 ケヤキ(欅;ニレ科ケヤキ属)。北海道~九州の山地や丘陵に自生する落葉高木。4月~5月頃、芽出しとともに小さな黄緑色の花がつき、秋には褐色に紅葉する。ケヤキの紅葉をじっくり観ると美しい形状です。


 香港の九竜半島が原産のグランサムツバキ(グランサム椿;ツバキ科ツバキ属)。11月~2月に大輪の白い花がおおらかな感じで咲く。風流な感じに咲く日本のツバキとはかなり趣が異なります。

(以下、11月末日の風景です)


 秋の代表的な紅葉樹のイロハモミジ(いろは紅葉;ムクロジ科カエデ属 )。東アジアに自生し、わが国では本州以南に分布する落葉高木。植物園内の各所に生えていて、この時期大いに目を楽しませてくれます。


 北海道から九州まで広く分布する落葉高木のコブシ(辛夷;モクレン科モクレン属シモクレン節)。早春に春の訪れを謳歌するかのように白い花が咲き出すことで有名ですが、この時期は鮮やかに黄葉します。


 川、沼、沢の岸辺などに自生するスイショウ(水松;ヒノキ科スギ亜科スイショウ属)が褐色に染まってきました。中国南部原産の落葉高木の針葉樹。スイショウは、水辺を好み、葉がマツに似ることから和名が由来します。


 福島県以南の本州、四国及び九州に分布する常緑小高木のヒイラギ(柊木;モクセイ科モクセイ属)。晩秋の11月~12月頃、葉腋に白色の小花が密生して咲きます。ヒイラギというと、葉の縁の鋭いトゲを連想しますが、老樹になると縁は丸くなってしまいます。


 メタセコイア林の林下の薄暗いところにツワブキ(石蕗、艶蕗;キク科ツワブキ属)の鮮やかな黄色の花が咲いていてよく目立ちます。ツワブキはツヤツヤとした葉が特徴で、形状は蕗(ふき)の葉に似ています。


  詳しくは
  → 季節のスケッチ(2024年12月) Archive






 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧